「知ればファンになってしまう」大見
拓土がお墨付きーー神戸セーラーボー
イズ、塚木芭琉の卒業公演で見せた十
人十色の個性と友情

神戸セーラーボーイズ SF(セミフィクション)「Boys✕Voice 403」 2024.3.15(Fri)〜17(SUN) AiiA 2.5 Theater Kobe
3月15日(金)〜17日(日)まで、AiiA 2.5 Theater Kobeにて神戸セーラーボーイズ(以下、神戸セラボ)のセミフィクション(以下、SF)公演『神戸セーラーボーイズ SF「Boys✕Voice 403」』が上演中だ。本公演をもって塚木芭琉がグループを卒業するため、初代・神戸セラボとしては最後の公演であり、結成からの1年間で重ねてきた全てを詰め込んだ、集大成とも言える公演となった。昨年11月の定期公演のアフタートークにも出演し、今回はゲストとして共演する大見拓土も、彼らの成長と実力、ポテンシャル、絆に大きく感銘を受けた様子。これまで以上に「十人十色の彼ら自身」が表現されたステージを、ぜひ味わってほしい。
1年間ともに過ごしてきた10人の関係性が、劇に昇華された
塚本晴人(塚木芭琉)
神戸の街を模したセットに波の音が流れる。やがて暗転し、ステージのセンターに立つ​塚本晴人(演:塚木芭琉)にピンスポが当たる。役者になる夢をえるためにグループを卒業することを、力強い声と眼差しで語る塚本。その様子からは、夢に対する思いの強さと覚悟が痛いほど伝わってきた。
そんな塚本の決断を応援する中城碧月(中川月碧)、崎フランツ(崎元リスト)、明石田侑(明石侑成)、石川幸斗(石原月斗)、奥田頼(奥村頼斗)、中田颯真(田中幸真)、摂津士郎(津山晄士朗)、細貝奏(細見奏仁)。ただひとり、大橋虎ノ介(髙橋龍ノ介)を除いては。
今から1年前の春、オーディションに合格して集まった10人。ここで歌われたのは、初めてのSF公演『306』でメンバーが練習していた合唱曲「マイバラード」だ。当初はメンバーのスキルとやる気の差でいざこざが起き、グループが分裂。しかしお互いに歩み寄り、最後には団結する。皆が思い出話に花を咲かせる中、塚本の卒業を受け止めきれない大橋は、「なぜ皆引き留めないんだ」と怒って静かに外へ飛び出してしまう。
左から大橋虎ノ介(髙橋龍ノ介)、細貝奏(細見奏仁)
やがて大橋がいないことに気付いた細貝が大橋を探しに行く。大橋を見つけた細貝は「一緒にハルくんを引き留めよう」という誘いに「それはできない。寂しいけど笑って送り出してあげるのがハルくんのため」だと説得するも、大橋は聞く耳を持たない。
左から石川幸斗(石原月斗)、中田颯真(田中幸真)
上:奥田頼(奥村頼斗)
一方、『308』の思い出話に花を咲かせる稽古場のメンバーたち。自分の魅力がわからず迷走していた塚本だが、今は立派に役者という夢を目指し、新たな道を進むことを決めた。結成当初よりもキャラが立ってきた奥田や明石田、石川ものびのびと演技する。塚本との思い出の楽曲「自分らしく」で安心して目を合わせ、肩を組みながら歌う様子からはメンバー同士のリアルな信頼感が垣間見えて、思わず胸が熱くなった。
小見海土(大見拓土)
塚本の卒業に対して気持ちの整理がついている年長組と、心の底に湧き出す複雑な感情に各々の方法で向き合おうとする年少組。崎、摂津、中田の3人は、大橋と細貝の元へ。大橋と摂津は、それぞれが塚本を思うあまりぶつかり合ってしまう。そこにゲストの小見海土(大見拓土)が颯爽と登場。メンバーの成長ぶりに驚きつつも、先輩として大橋を説得し、自分の思いを素直にぶつけることを決めた大橋の背中を押すのだった。
塚本と対峙し、まっすぐに思いを伝えた大橋。そんな彼を優しく受け止めつつ、自分の決意をしっかりと口にする塚本。全編通して、夢を語る場面の塚本はとても力強く、揺るがぬ決意を感じさせてくれた。そして塚本も、メンバーに対して言いたいことがあると、思いを打ち明ける。1部のラストシーンで披露された合唱曲「変わらないもの」のハーモニーは本当に美しく、10人の友情を感じさせるもので、涙なくしては見られなかった。
左から大橋虎ノ介(髙橋龍ノ介)、塚本晴人(塚木芭琉)
実際の神戸セラボのメンバー自身もインタビューで語っていたが、今回の物語はセミフィクションでありながら、限りなく実話に近いのだという。塚本の卒業をめぐって、それぞれの胸中に芽生えた感情はきっとリアルなもの。だからこそステージから伝わる熱量とチーム感は実感を伴っていて、客席の心も動かした。
もちろん、スキル面でも前回公演をさらに更新していた。テンポ良く進む会話、感情の乗った演技、舞台で輝く個性とギャップ、間合い、空気感。それはこれまでのSF公演と定期公演で培った実力と、日々の稽古で重ねた努力が結実していることを示していた。そして何よりも、1年間過ごしてきたこの10人での関係性が、見事に劇として昇華されていた。
細貝作曲の新曲「セイル・オン」も披露。新メンバーの挨拶も。
小見のMCを経て、2部のライブパートへ。オープニングは全員でのダンスからスタート! ダンスが得意な中城を筆頭に、これまでにない激しい振付とフォーメーション、しっかり揃ったキメ。ぐんとレベルアップしたダンススキルで、迫力のステージを繰り広げる。摂津と細貝によるタップダンスも鮮やか。映像と音楽も相まって、またひとつ神戸セラボの新たな一面を見ることができた。
左から明石田侑(明石侑成)、石川幸斗(石原月斗)
自己紹介の後に披露された​スペシャルメドレーは、プリンセス プリンセスの「Diamonds」〜チームブラウン(年長組)によるキャンディーズ「年下の男の子」〜チームブルー(年少組)による松任谷由実「やさしさに包まれたなら」〜盛り上がり必至のフィンガー5「学園天国」の4曲。ここでも細かな表情や振付などから、メンバーそれぞれの表現力が増していることを感じさせられた。また、どっしりとした歌声の中に響く大橋のソプラノボイスは本当に美しかった。
左から摂津士郎(津山晄士朗)、大橋虎ノ介(髙橋龍ノ介)
オリジナルソング「365日のバースデイ」では、お互いを見合わせながら歌う表情と、<仲間が側にいること 思いが繋がっていくこと>という歌詞が実感をもってこちらに伝わってくる。この10人だからこその空気感が、楽曲の意味合いと存在感を押し広げる。
左から細貝奏(細見奏仁)、塚本晴人(塚木芭琉)
新曲の「セイル・オン」は、12月公演『312』で披露された「Special Holiday」に続く、細貝の作曲によるもの。歌詞は「出会いと旅立ち」をテーマにメンバーから集めた言葉を、作詞家の三ツ矢雄二が取りまとめた。細貝はグランドピアノに座り、美しい旋律を奏で始める。塚本のソロパートから順に歌われていくメロディーラインは、細貝がメンバーを思って書いた思いが滲み出るようだ。これまでの成長、気持ちの変化、「離れていても繋がっている」という願い。本当に今の10人の気持ちをそのまま表したような歌詞で、感謝を伝え合える関係が育まれてきた環境とメンバーの努力を感じ、ぎゅっと胸が締め付けられる。しっかり前を向いて<船出だ>と堂々と歌う塚本の姿は頼もしく、顔つきは穏やかで、決断の深さを感じることができた。そして<再会の日を楽しみに>というフレーズから、未来でも繋がっていくという彼らの前向きな関係性がうかがえた。
着替えのために一度ステージを去るメンバーに代わり、小見がさすがのトーク力でフリートークを展開。「セイル・オン」を聴いて感極まった様子の小見は「神戸セラボの欠点は知られてないことだけ! 知って、実際に観ていただいたらファンになっちゃう。大好きなメンバー。(メンバーは)宝だから!」と、神戸セラボへの愛を口にする。次曲「キヅナ=ツナグ」の紹介では「僕から見てもメンバーは本当に強い絆で繋がっている」とあたたかい言葉を贈っていた。
高野遥(髙山晴澄)
左から中城碧月(中川月碧)、高野遥(髙山晴澄)
いつもの制服に着替えた10人に加え、もう1人制服姿のメンバーが登場する。4月から神戸セラボに新加入する、高野遥(たかのはるか/髙山晴澄(たかやまはると))だ。大阪出身で2009年9月27日生まれの14歳。新旧の神戸セラボが一体となったハーモニーは、フレッシュな空気を纏っていた。
再び10人に戻り、「ボクラカラー」を合唱バージョンで歌い上げた後、卒業する塚本が挨拶。涙ぐみながらも「初日から全力で頑張っていくので、よろしくお願いします!」と力強く言葉を放ち、お辞儀した塚本にあたたい拍手が贈られた。
左から奥田頼(奥村頼斗)、小見海土(大見拓土)、崎フランツ(崎元リスト)
最後は原曲の「ボクラカラー」を披露。小見もステージに登場して一緒に歌い踊る。お馴染みとなった客席降りもあり、明るくステージを締め括った。神戸セラボの歴史を築き上げてきた初代メンバーによる最後のセミフィクション公演には、10人の成長と友情が詰まっていた。
取材・文=久保田瑛理 撮影=高村直希

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