ロザリーナ 心動かす様々なスタイル
で魅せた『ロザパーリーナイト vol.
3』レポート

ロザパーリーナイト vol.3

2024.3.8 WWW X
3月8日、渋谷WWW Xでロザリーナのワンマンライブ『ロザパーリーナイト vol.3』を観た。コロナ禍でライブもままならなかった2年間を経て、昨年6月に『ロザパーリーナイト』をスタートさせてから、『vol.2』『vol.3』と続くペースは快調だ。今回は前2回との差別化を意識したセトリ、新たなライブアレンジも用意したと聞く。1月に出たばかりの新曲「タカラモノ」も聴けるだろう。期待感満載でフロアを埋めたオーディエンスと一緒に作るパーリーナイト、いざ開演。
《始めようか、ロザパーリーナイトvol.3、さぁ目を閉じて――》。「Good Night Mare」の歌い出しを少し変えて、特別な夜に思いを込めて。ドラム、ベース、ギターの骨太なバンドサウンドに支えられ、1曲目からお立ち台に駆け上がり笑顔を見せるロザリーナ。綺麗にカールしたブロンドヘア、白いスウェットにクリームイエローのブルゾン、小柄な体から飛び出す飾らないパワフルなナチュラルボイス。調子は上々だ。
たくさんのペンライトが応援する「にじいろ」、全員参加のコーラスで盛り上がる「ハッピー注意報」から、ぐっとメロウなR&B/ヒップホップ色を増して「Stereo」「君がくれたmelody」へ。こうした曲調の、メロディラップふうの歌い回しはロザリーナによく似合う。洋楽っぽさとJ-POPとのブレンドが、耳に嬉しい独特の心地よいフロウを生む。
「ロザリーナの曲にはいろんなジャンルがあるので、今回はそれをぎゅっと詰め込んだセットリストを組んできました」。
アップテンポで盛り上がるだけがパーリーナイトじゃない。ライブで初めて歌うという「NOAH」から始まるセクションは、ロザリーナの音楽性の深さと広さを聴かせるチャレンジだ。トラックにシンセベースを加えたクールなサウンドがかっこいい「NOAH」から「ネフィル」へ、壮大なスケールの神話めいた世界観を、語り部のように生き生きと歌うロザリーナ。アコースティックギターを弾く「長い夜」、1本のスポットライトでドラマチックに魅せる「I knew」は、ぐっと身近な恋愛感情をエモーションいっぱいの歌に乗せて。深くて暗いが透明な、独特の空気感。
忘れちゃいけない気持ちを歌った、とても大切にしている曲です――。言葉をかみしめて歌う「盾」のメッセージは、彼女の生き方の指針の一つ。人を傷つける剣よりも人を守る盾を選ぶこと。あとでもう一度歌詞を読まなくちゃ。暗さの中に光を感じるサウンドの中で力強く前進する「Dream on」、報われない恋心を切ないメロディに乗せる「0✕98」と、女子のデリケートな心理を歌う時のロザリーナは、きゅっと目をつむって表情を少しゆがませて願いをかけるようにマイクに向かう。表情と感情が直結している。
ライブはこの日の最深部へと入った。激しさと静けさのコントラストが感情を強く揺さぶるスローナンバー「アネモネ」と「タナトス」の、叫ぶように振り絞るボーカルは圧巻だ。ピアノを生かしたドラマチックなトラックとバンドがそれを支え、ライトが激しく明滅する。あまりの迫力にフロアの誰もが微動だにせず聴き入るしかない。明るい曲で盛り上がりたいけどロザリーナさんには明るい曲が少なくてと、最初のMCで笑いながら話していたが、明るく盛り上がるだけがパーリーナイトじゃない。心動かす様々なスタイルがあるのがロザリーナのライブの魅力だ。一転して、目の覚めるようなドラムソロとカラフルに回るライト、強力なロックナンバー「Over me」と踊れるディスコロック調の「I.m.」を分岐点に、ライブはいよいよ終盤へ。
いつか、もっと大きいステージに行きたいと思ってます。みんなと一緒に見るその景色はきっと宝物で、今のこの景色も宝物です――。未来への希望にあふれた応援歌「タカラモノ」の明るいリズムとメロディに込めた、夢と野心がまっすぐに届く。《✕も角度を変えれば+さ》。いいこと言う。“Hey!You!”の掛け声もばっちりハマった。ロザリーナのライブに欠かせない定番曲がまた一つ増えた。
背後のスクリーンに映るサンセットが青い空と白い雲に変わると、フィナーレは間近。明るく盛り上がる「ドレスコード」、あたたかく包みこむ「何になりたくて、」、そして揺れるペンライトの海の中で大きな一体感にひたるラストチューン「通行人B」。ライブには特別なエネルギー注入装置があるのだろう、ここまで100分で20曲を歌い切ってもロザリーナはまだまだ元気いっぱい、そしてオーディエンスもまだまだ聴き足りない。
自然発生した「ロザ!」「リーナ!」のコールに応えるアンコール。この曲を椅子に座って高いところで歌いたいと言ったら脚立を用意されましたと、脚立の上で歌うシュールな光景の面白さはさておき、「諸刃の剣」は「盾」と並んでロザリーナの心の原点にある曲の一つ。可愛らしい童謡風の曲調ながら、込めた思いは深くて強い。そして嬉しいサプライズ、ロザリーナが挿入歌を担当することが発表されていた映画『帰ってきた あぶない刑事』の、その挿入歌「no plan」の初披露だ。心地よく流れるミドルテンポ、明るいメロディ、自然体の歌、幸せを探しに行こうと歌う優しいメッセージ。ロザリーナのほっこり柔らかな癒しソングに欠かせない定番曲がまた一つ増えた。
ラストはやはりこの曲、「See u again」で笑顔のお別れ。お立ち台に上がり、みんなの目を見つめ、笑顔で手を振る。《まだ帰りたくないな》と歌う顔が本当に帰りたくなさそうだが、きっとまたすぐ会えるだろう。過去2回とは異なるテーマで、新たな展開を見せた『ロザパーリーナイト vol.3』はロザリーナが次に進む方向への道しるべ。「タカラモノ」や「no plan」で見せた前向きな希望と自然体の強さが、どんなふうに次のアクションに生かされるか。その未来を一緒に見てみたいと思う素敵な夜だった。

取材・文=宮本英夫 撮影=SHUN ITABA

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