「ふたりで観劇に行きたい!」吉高志
音、太田将熙インタビュー/韓国発の
ミュージカル『伝説のリトルバスケッ
トボール団』

韓国発のミュージカル『伝説のリトルバスケットボール団』が2024年2~3月に東京・大阪で上演される。
いじめによる自殺を考えるスヒョン(橋本祥平)が、成仏できない幽霊のダイン(梅津瑞樹)、スンウ(糸川耀士郎)、ジフン(吉高志音)と出会い、バスケットボール部に入部して幽霊たちの願いをえていくというストーリー。同じバスケチームのサンテ(太田将熙)、コーチの・ジョンウ(平野良)の葛藤に触れて、スヒョンが思うこととは――。
日本でも注目を集める韓国ミュージカル、そしてプレビュー公演という仕組み。新しい試みに挑戦する6人のキャストはこの取り組みを非常にポジティブに、そしてクオリティを高めるというやる気に満ち溢れている。
本公演を前に、吉高志音と太田将熙に作品やキャストたちの関係性について深堀りした。彼らがお互いに尊敬し、常に高め合っていく姿をご覧あれ!
ミュージカル『伝説のリトルバスケットボール団』舞台写真

■「休憩時間も稽古後もずっとバスケをしていた」
――まずはじめに、演じられる役柄についてお聞きします。
吉高 ジフンは3人組の幽霊のうちのひとりで、熱血で仲間思い。幽霊という役柄ではありますが、怖いというよりは幽霊3人でわちゃわちゃと楽しんでいるシーンが多いので、学生時代を懐かしく、楽しく思う感覚もありました。
太田 僕が演じるサンテは、橋本くん演じるスヒョン、平野良くん演じるジョンウと同じで生きている人間です。わりと人間関係においてドライですが、実は人一倍強い感情を持っていたりもするので、すごく人間味が溢れるキャラクターなのではないかとも思っています。
――役柄の魅力、または自分の似ているところを教えてください。
吉高 ジフンは演じていて、自分も前向きになれるなぁということを感じました。太陽のような明るく陰りのない存在でもありつつ、3人の中ではムードメーカーだったりするところもあるので、彼から学ぶことも多かったです。
太田 僕はサンテと似ているところはあまり見つけられていませんが、サンテのことはすごく魅力的に感じています。ちょっと不器用だけど、心の奥ではすごく人が好き。学生の時ってサンテのような、ちょっとツンデレっぽいところがある子もいたよなって思い出しました。サンテのそういう部分も好きだなと思います。
ミュージカル『伝説のリトルバスケットボール団』舞台写真
――座組・稽古場の雰囲気は?
吉高 ずっとバスケしてませんでした? 稽古場ではいつもドリブルしてる音が聞こえてたと思う。
太田 確かに! 休憩時間も、稽古終わった後も。自然に誰かから始まって、俺も俺もって徐々にみんな加わっていく感じ。
吉高 本当に学生時代の部活みたいな感じでした。フォームに気を付けたりしながら自然に練習が始まっていったよね。
――キャスト内でバスケが上手いのは?
吉高 スンウ役の(糸川)耀士郎くん。
太田 志音もめっちゃ上手です。
吉高 いやいや、そんなことは!
太田 耀士郎と志音がバスケに関しては引っ張っていってくれました。
――吉高さんのバスケ歴は?
吉高 僕は中学の3年間やっていました。でもバスケ指導をしていただいたときに、パスのフォームなどが昔習ったやり方とは違っていて驚きました。今はパスが片手になっているんですね。そういう小さなフォームにも変化があったので、元々の癖を直したりするのが逆に大変でした。でもみんなの上達がすごく早くて!
――いちばん上達したのは?
太田 えーっ! 誰だろう!? ずっとバスケをやってきた人なんじゃないかと思うくらい、みんなシュートやレイアップの流れがキレイでしたね。
吉高 みんなワンチームでやってたから、特別意識したことはなかったけど……誰だろう? 祥平くんかな。シュートが確実に入るようになったと思う。物語の中でも、彼は徐々に上達していくという役柄。その変化がちゃんと見えてすごいなと感じました。短い稽古期間のなかで目に見えて上達するのはすごく素晴らしいですね。
ミュージカル『伝説のリトルバスケットボール団』舞台写真

■「クールめな人だと思ってました」「えっ、クール!?」
――共演者についてお聞きします。ご本人の印象などをおひとりずつ教えてください。まずはスヒョン役・橋本さん。
吉高 スヒョンという役は、学校でいじめられていて心を閉ざしてしまいます。祥平くんの繊細のお芝居は本当に美しい。命の尊さということを感じさせてくれるんですよね。今回もそれを間近で見れてやっぱり素敵な人だなと思います。座長として頼もしさも感じています。
太田 彼は座長をやることも多いですが、周りの人に対しての気配りが上手い人。「座長」は俺が引っ張っていくぞというタイプと、周りの人に愛されて座組ができていくというような大きく2つのパターンが多いと思いますが、祥平くんは間違いなく後者です。皆の空気感や座組の雰囲気が、祥平くん自身の力になっていくようなタイプ。僕は出会った時から彼のそういう人間性が素敵だと思っているし、うらやましい面でもありますね。今回の現場にでは、顔合わせの時から本当に気合が入っているのだなということがわかりました。稽古中に感情が爆発しすぎて、スヒョンという役からは逸脱してしまうこともありました。演出家さんやプロデューサーさんとも話し合って、ずっと悩んでいましたが、そういう期間を通して彼と一緒に作品作りができたのは僕にとってすごく幸せなことですし、本公演の稽古もとても楽しみにしています。
――ダイン役・梅津瑞樹さん。
吉高 瑞樹くんワールドはとても濃い。お芝居が本当に大好きなんだなと自然に伝わってくる方ですね。一緒に演じていても、彼のシーンを見ていても今日はどんなことをしてくれるんだろうって期待を持ってしまうし、その視点があるんだ! と何度も気付かされます。いろんなお芝居をやる中でたくさんの発想があること自体もすごいなと思いました。僕のジフン役についてすごく悩んでいたときも、相談に乗ってくれて良いアドバイスをもらったりして。幽霊3人としての居方も良い方向に変わっていったので、彼にはすごく助けられたと思います。
太田 瑞樹くんは思い切りが良い人だと思っています。最初の頃の稽古では、初めましての人もいる中で、どうやっていくか皆が様子を探っている時、梅くんがまず自分が思い描いていたキャラクター像を少し誇張してでも出すことによって、リズム感が生まれました。そうして幽霊3人のそれぞれのキャラクター性が一段階早く良い形になり始めたという印象がありました。梅くんの役者としての経験値の表れでもあるだろうし、本当に演劇好きの人なんだなぁとも気付きましたね。
ミュージカル『伝説のリトルバスケットボール団』舞台写真
――スンウ役・糸川耀士郎さん。
吉高 耀士郎くんの歌が大好きです。踊りながら、バスケも激しい動きをしながら歌うというソロナンバーがあったり、二人できれいなハーモニーを重ねて歌うシーンにはほれぼれしました。耀士郎くんの強く、透き通る声は本当に素敵だなと思いました。もちろんお芝居でも魅せてくれます。「生命力」というものをすごく感じさせてくれる役者さんです。
太田 共演は初めてですが、僕も耀士郎くんの歌がすごく好きです。説得力のある気持ちの良い歌い方というか、変なクセもなく、役柄・音楽・心情などその場面に完璧にフィットしている歌い方をされるので、ずっと聞いていられます。現場での居方に関しては、彼はすごく真面目な人なのだなと思いました。バスケ経験者という面もあり、演出に関してアイデアを出している場面もありました。過去には作・演出もされている経験があるので、作っていく側の目線、俯瞰の目線も普段から持っているのかなという印象ですね。
――ジフン役・吉高さんの印象を、太田さんにお願いします。
太田 志音か~! 実は共演前からSNSで名前を見ることが多い人でした。いろんなミュージカルを見たり経験したりしている印象で、いつかグランドミュージカルとかに行くのかなと漠然と思っいて。今回の共演メンバーはみんな舞台好きが集まってはいるけれど、ずば抜けてミュージカルが好きな人だなと思いました。ジフンという役はどんな役柄になるかいろんなパターンが考えられると思うのですが、演出のTETSUHARUさんと思い切りのいい青年という感じに作り上げていった感じがあります。今の志音の持っているもの、真っ直ぐな気質・形成してきたピュアさのようなものが役柄に反映されて共鳴して、ジフンという役ができたのかなと思っています。
人に関しては、もっとクールだと思っていました。宣材写真のようなクールめな人だと思っていたのですが、いざ共演していると、すごく人懐っこいかわいらしい方でした。
吉高 えっ、クール!?
太田 僕は年下で人懐っこい人が話しやすくて大好きなんです! 先輩よりも後輩に接するときの方が緊張するタイプ。年下だけど明るくて、たくさんの人たちに積極的に話しかけに行く志音を見ているのが好きです。俺ともいっぱい話してほしいな!
吉高 あはは(笑)
太田 今回一緒に共演できてよかった。
――どんな話をしたいですか?
太田 僕よりもミュージカルを圧倒的に見てきている人だから、ぜひ一緒にミュージカルを観に行きたい! 共通して観てきた作品の感想も聞いてみたい。韓国行った話とかもしたいな~! 美味しいものの話はどう?
吉高 いつでも大歓迎です!
――それでは今度はサンテ役・太田さんの印象を吉高さんにお聞きします。
吉高 嬉しいな~! 僕も将熙くんとすごくお話したい! ええと、役柄からいくとがっつり絡むシーンがあまりありません。サンテという役を見てて、自分も過去に勉強のことで行き詰って爆発しそうだった時、サンテがソロで歌う曲は僕がすごく共感することが多くて。実際に歌っている将熙くんを見ていると自分の気持ちを代弁してくれているような気持ちがしました。稽古を重ねるごとに将熙くんの歌はどんどん素敵になっていって、日々聞くのが楽しみでした。曲調も然り、リズミカルで繊細で、そしてしっかりと言葉を届けている歌で。お芝居が好きな方の歌なんだなということをすごく感じました。うーん、どう表現したらいいかな……。もっとたくさん将熙くんの良さを伝えたい!
太田 ありがとうございます!
――太田さんと一緒に話したいことや、一緒に出掛けたいところは?
吉高 僕も映画やミュージカルの感想は聞きたいな。どんなことを思ったんだろうとか、どんな発見をしたのかとかは気になる。そういう感想から、その人自身の感性や、どういう視点で生きているかがわかると思うので。……今度一緒に演劇観に行きません?
太田 勉強にもなるから、めっちゃいいね!
――最後にジョンウ役・平野良さん。
吉高 良さんという役者としての安心感は非常に大きいです。良さんのミュージカルの演じ方として、ちゃんと言葉が耳に入ってくる、ちゃんと気持ちが伝わってくる。ジョンウの学生時代の後悔や葛藤も痛いくらい感じるし、特にジョンウが青春を取り戻すクライマックスのシーン……良さんの顔が誰よりもキラキラしてて、誰よりも「学生」だったんです。ジョンウとジフンの関係、役の深いところまでしっかり掘り下げて役作りしているんだなと思いました。
太田 良さんは感性だけではなく、しっかりと確実に技術を磨き上げてこられた方!ということがビシバシ感じ取れる先輩という印象です。そういう先輩が幸いにもこうしてすぐ近くにいてくださるので、積極的に学んでいきたいと思っています。僕はまだあまり得意ではないのですが、役や感情の切り替えを、良さんはすごく器用に瞬時にできるんですよね。改めて尊敬しますし、勉強させてもらっています。楽屋ではぼくと良さんがずっと喋っています(笑)。関係ないことばかり! プレビュー公演の際は、ずっとどんぶりの話をしていました。一番どんぶりにふさわしくないどんぶりって何だと思う? っていうテーマで論争したりとか。
吉高 (笑)。やってましたね~、覚えてます。
太田 作品とは全く関係なくてたわいもない会話ですが、そういう話を先輩がしてくれるのは楽しいし、和みますよね。良さんはそういうところもすごく優しい。一緒に作品を作っていく同性代の仲間! という雰囲気を率先して作ってくださるのもありますし、同時に大人の目で守ってくれるのだなということも伝わってきます。人間として懐の深い方ですね。
――この中で一番にぎやかな方は?
太田 志音じゃないかな!
吉高 僕!? なぜ?
太田 なんとなく?(笑)。
吉高 バスケでフリースロー勝負をして、負けて悔しがってる姿とかが多いからですかね。
太田 今回の座組はもの静かな人が多いから、「にぎやかな人」と言われると志音か良さんの名前が挙がると思うよ。一緒に稽古場にいると楽しくしてくれる人だな。
吉高 じゃあ本公演の稽古はもっとにぎやかにやっていこうかな!
太田 お願いしゃす!
一同 (笑)。
ミュージカル『伝説のリトルバスケットボール団』舞台写真
■吉高が見てほしい「海」、太田が語る「青」
――バスケ・幽霊・青春。この作品のキーワードとなるものの中から、エピソードトークをお願いします。
吉高 では僕は「バスケ」にまつわることで。中学校のバスケ部の引退試合での出来事です。その大事な大事な試合の時に、僕がオウンゴールをしてしまって。勝たなきゃいけないという焦りや緊張から、自分のゴールにシュートを……。すぐにベンチに呼ばれて、コーチに叫ばれて怒鳴られたことが、もう強烈に記憶に残ってますね。思い出すと昨日のことのように感じてしまうくらい。今でもバスケットボールを持つと、「オウンゴールはしてはいけない」という言葉がずっと頭を巡っています。
太田 僕は「幽霊」で。心霊チャンネルを見るのが好きで、結構よく動画を見てます。毎晩毎晩動画を見て、怖いな怖いなァ~と……。
吉高 怖い! しゃべり方からしてもう心霊動画の人のしゃべり方してるじゃん!
太田 実はよく稽古場でも使われる場所の近くに、日本で今一番熱い心霊スポットとも呼ばれる場所があります。多くの動画に登場するくらい話題のスポットなんです。やらせの場合は見ているとなんとなくわかるものなんですが、その場所は本物っぽいなと思って見てたんです。不自然な音が鳴ったりとか、電気が勝手に消えたりして、毎回と言ってもいいくらい心霊現象が起こる。白い手が伸びてくる瞬間もちゃんと動画に撮れてる。小細工が仕掛けられるような場所でもない。今は一般の人は入れなくなっているそうですが、これはマジだろうなと思っていました。去年とある作品の撮影で、なんと! 僕が見てたチャンネルの編集長とご一緒する機会があって。僕が気になったその場所の話ができたことが、あまりにも嬉しくて。どうやらその場所は「本物」だそうです。
――そういう心霊スポットに行ってみたいと思いますか?
太田 行ってみたいですね。編集長と話をしたとき「連れてってあげるよ」と仰っていただいたので、いつか挑戦してみたいと思っています。
吉高 へー、すごいな……!
太田 本当に「居る」なって思う。白い手も見てみたい。ちょっと後で送るから動画も見てみてほしい。
吉高 えー!?
――吉高さんも心霊系はお好きですか?
吉高 いや、お化け屋敷とかでも絶対無理です! 本当に怖くて……廃墟とかも行けない。お風呂タイムが怖くなっちゃうので、ダメかも。でも僕も幽霊の役だし、ちょっと動画見るのは挑戦してみようかな。
ミュージカル『伝説のリトルバスケットボール団』舞台写真
――最後に、この公演の面白いところ、ココを特に見てほしい! という見どころを踏まえて意気込みをお願いします。
吉高 学生時代に感じてきたキラキラをめいっぱい表現しています。韓国ミュージカルならではの楽曲もすごく素敵です。みんなの感情が乗ってジェットコースターのような気持ちの浮き沈み、学生としての葛藤や喜怒哀楽がぎゅっと詰まった作品になっています。観たら明日も頑張ろうと思えるような作品になっていると思うので、ぜひ見ていただきたいです。僕は特に「海に行くシーン」を見てほしい。僕たちの心から「海に行くんだ!」という楽しい気持ちが非常に強く楽曲に表れています。物語では「海」が重要に関わってきます。徐々に物語が進んでいくうちに、気持ちが変化していく面白さを味わってほしいです。
太田 プレビュー公演を経て、本公演という新しい試みにチャレンジしています。プレビュー公演をやった意味合いというものを、自分たちでも感じられるようにしたいし、プレビュー公演・本公演どちらにも来てくださる方にも、そして本公演で初めて見る方にもこのミュージカル『伝説のリトルバスケットボール団』が心に残る作品の一つになったらと思っています。思い返すと、僕はこの作品全体に「青」のイメージを持っています。「青い」春を駆け抜けていく約2時間のお話です。重たく考えすぎず、気軽に足を運んでいただいて、僕らのたくさんの感情を持ち帰ってくださったら幸いです。特に見てほしいのは終盤、サンテとスヒョンの距離が少しずつ近づいていって、不器用ながらも話をするシーン。ふたりの勇気でちょっと一歩進んだ瞬間。彼らの心の動きと表情。そんなところを特に注目してくださると嬉しいです。
――ありがとうございました。
ミュージカル『伝説のリトルバスケットボール団』舞台写真
取材・文:松本 裕美

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