【前Qの「いいアニメを見にいこう」
】第52回 「ぽんのみち」のしめす道
 オリジナルアニメの行方は

(c)IIS-P/ぽんのみち製作委員会 主題歌の歌詞に「一向聴(イーシャンテン)」が出てくるアニメといえば、昔は小学館、ちょっと前はスクウェア・エニックスだったわけですが、最近は講談社になりました。

 ……はて、いったいぜんたい、なんのこっチャイナ。
 というわけで、2024年最初にとりあげるアニメは「ぽんのみち」です。
 講談社初のオリジナルテレビアニメという触れこみ(ちょっとややこしい言い回しですが、特定のクリエイターではなく会社単位で企画を主導している、ということらしい)でスタートした今作。キャラクター原案を担当しているのは、大ヒット作「五等分の花嫁」の春場ねぎさん。大林宣彦監督の「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」の通称「尾道三部作」の舞台としてもおなじみ広島県は尾道市を舞台に、元雀荘だった建物をたまり場にして毎日を楽しく過ごす女子高生たちの明るく楽しい日常が描かれていきます。企画の根幹に美少女×麻雀の要素がありはするものの、あくまで麻雀はコミュニケーションのためのツールというか、大学サークルの部室になぜか雀卓が置いてあったあの感じを狙っているのではないかと。たぶん。3話まで見る限りは、麻雀のルールが軽く覚えられて、さらに雀荘あるある、古今東西の名作麻雀マンガのネタにもパロディで触れられる……くらいの匙加減で調整されているように見えます。
 考えてみれば、これくらいの「ほどよさ」で麻雀を扱ったアニメって珍しいかもしれませんね。切った張ったの挟まらない、ゆるっと楽しい麻雀。そういう場所って部室に限らず、家族麻雀とか、結構世の中にはありますからね。そうした雰囲気に寄りそうように、映像のテイストも実に「ほどよい」です。女の子たちのかわいさを穏やかに描きだすなかに、ほんのりと飽きのこないアクセントがつけられている。先に述べた名作パロディもですが、デフォルメされた鳥の姿をした麻雀の精霊・チョンボの存在がまた大きい。声を演じるのは大塚明夫さん。あの渋く、熱い声でおなじみの大塚さんが、ねずみ男やエクボでの怪演をさらに一歩推し進めつつ毒気を巧みに抜いたかのようなキュートなマスコット芝居で、華やかな女性キャスト陣の会話の味を引き立たせています。
 監督は前クールの「ひきこまり吸血姫の悶々」でもツボを押さえた美少女描写で楽しませてくれた南川達馬さん(テラコマリさま、かわいかったなあ……)。シリーズ構成・脚本も兼任です。アニメーション制作はOLM TEAM INOUE。OLMには深夜アニメらしい深夜アニメを主に手がけている班もありますが、TEAM INOUEは直近で「イジらないで、長瀞さん 2nd Attack」を制作してこそいるものの、基本的には「ダンボール戦機」「妖怪ウォッチ」といったレベルファイブの企画を中心にマーチャンダイジング展開を踏まえた作品を長年手がけてきた印象のある班ではないかと。会社が主導してのオリジナル作品を手がけるノウハウがしっかりとあるチームということで、選ばれた現場なのでしょう。こんなところからも今作の目指すものが見えてくる気がします。深夜アニメの世界に、キッズ向けマーチャンダイジングに近い総合的な方法論を適用すると、どうなるのか。
 作品の内容はもちろんですが(「なしこちゃんはズボラだし、ちょい悪食だし、なかなかのダメ人間っぽいけど、大丈夫か?」とか「他の子も意外と癖強いけど、大丈夫か?」とか……)、周辺展開も実に興味深いタイトルだと感じています。これが跳ねるとオリジナルアニメの企画のつくられ方もまた変わっていきそうな……そこまでいうと大げさかしら。ははは。

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