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【CHiCO インタビュー】
名刺代わりになる作品をと考えた時、
真っ先に“ポートレート”と浮かんだ

1st EP『PORTRAiT』はロックにバラード、ダークファンタジーと多様すぎるジャンルの楽曲、自身とリンクした詞の世界観、まさしくCHiCOをさまざまな側面から深掘りした一枚に仕上がった。昨年7月のソロ活動開始から半年を迎え、プロフィール写真を想起させるタイトル作が知られざる彼女を明らかにしていく。

第三者から見たCHiCO
というものを書いてほしい

まさしく“PORTRAiT”というタイトルにぴったりな作品だと感じましたが、このタイトルはどのタイミングで決められたのですか?

EPが出ると決まった時ですね。1枚目のEPということで、ソロのCHiCOとしての名刺代わりになるような作品にしたいという話をチームでしている中で、真っ先に“ポートレート”という言葉が浮かんだんです。ポートレートってプロフィール写真として使われることがメインだから、ぴったり合うんじゃないかって。むしろ、“それ以外は嫌!”って思うくらいにしっくりきたんです。

それでご自身のアーティスト人生にとって大切な方々に楽曲提供を受けられているんですね。

そうなんです。例えば、諌山実生さんはNHK『みんなのうた』で流れていた「月のワルツ」を作った方で、子供の頃に毎日テレビで観ていたほどに大好きな曲だったんですよ。車に乗っている時にラジオで流れてきたら“音を上げて!”って両親に言っていたくらい、私の中では歌を歌うにあたっての“憧れのお姉さん”みたいな存在の方なんです。艶っぽいしっとりとした大人の色気がある歌い方に当時からすごく憧れていて。今回、“難しいとは思いますが…”とドキドキしながらお願いさせていただいたんです。福岡晃子さん(ex.チャットモンチー)は、高校生の頃に軽音楽部で初めてギターヴォーカルでカバーした曲がチャットモンチーだったというご縁で依頼させていただきました。もともとは友達がチャットモンチーをやりたいと言い出して、そこで私も聴いて好きになったんです。そういったCHiCOというアーティストを生む大きなきっかけになった方々と、音楽活動をしていく中でのご縁でつながった方々に、今回はオファーさせていただきました。

そうして生まれた5曲を聴かせていただいたところ、あまりにも楽曲のスタイルがバラバラで驚きました。

私たちもびっくりというか(笑)。楽曲制作をオファーするに際して、それぞれのクリエイターの方に大まかなオーダーはしつつも、その上で第三者から見たCHiCOというものを書いてほしいというリクエストもしていたんです。結果的に“ロックでお願いします”とオファーをしたリード曲では予想外の方向性のロックがきたり、BURNOUT SYNDROMESの熊谷和海さんには特にジャンルの指定をせず、“熊谷さんから見たCHiCOを”とお願いしたらものすごい変化球がきたりして。私はもともとミディアム調の楽曲が好きなので、福岡さんには“ライヴでみんながリラックスして聴ける曲がいいです。中盤とか、たまにアンコールで歌えるような”とリクエストの上で、私のパーソナルも含めた日常をちょっと切り取ったようなものにしていただいたら、これも意外な世界観だったりしたんです。そのぶん、いろんな歌い方もできたので、制作中はすごく楽しかったです。

“幅広い音楽性でシンガー「CHiCO」を様々な側面から深掘りする1枚”というキャッチコピーのとおり、CHiCOさんご自身とリンクしているように感じる曲が多かったのも、それをうかがって納得です。CHiCOについて書いてもらうために特に作詞の方々とは緻密な打ち合わせもされたのでは?

そうですね。熊谷さん以外の方は今回が“はじめまして”だったので、最近楽しかったこと、嬉しかったこと、感動したこと、悲しかったこととか、本当にパーソナルな部分をお話ししながら作っていきました。特にリード曲の「エンパシア」を作ってくださった白神真志朗さん、堀江晶太さんとは、たくさんキャッチボールをしたんです。パーソナルな部分を伝えたいというコンセプトをお伝えしたところ、おふたりが“私が感じていないことを歌ってほしくはないから”ということで、ソロの方向性から最近の近況まで、まさしく深掘りしていただいて。ただ、そんなふうに打ち合わせをした上で楽曲のオファーをする機会が今までなかったので、“何を話せば正解なんだろう?”って焦ってしまいました。すっごく汗ダラダラになりながら話していた自分も実は歌詞の中に反映されていたりします(笑)。

2番にある《問いかけに窒息寸前》ですか?

はい。本当に言葉が出てこなくて、顔から血の気が引いていったんですけど、見事に見破られて(笑)。あとは、活動していく中での自分の直したいところとか、うまく伝えきれなかった部分を改めて書き直して、打ち合わせ後に送らせていただいたという流れもあり、とてもパーソナルに寄せた歌詞を書いていただきました。

結果、自分より他人を優先しがちで、自分の本音をなかなか言えない人物像が描写されていますが、つまりはCHiCOさんご自身がそういう方だと?

もう、ほぼ自分…というか、今までの自分の振る舞い方とかが反映されています。なので、これをみんなに見られるのは正直言って恥ずかしいんです! ネガティブ思考だってことは配信とかでも言っていたんですけど、ここまで真っ裸になって音楽として届けるのは初めてですから。でも、きっと私と同じ境遇の人たちもいると思うので、そういった人たちに刺さって共感してもらえたら嬉しいなぁと。

そもそもタイトルの“エンパシア”も“共感”という意味ですよね。

はい。英語の“エンパシー”のもとになっているギリシャ語です。打ち合わせで自分が感動したことや悔しかったこととかを話した時に、結果として自分は今後どうしたいのかというところが私は話せなかったんです。楽曲を作っていくにあたり、“自分はこう思っている。じゃあ、どうするのか?”というのが結果的にまとまらなくて。それこそ、窒息している状態でうまく辿り着けなかったんです。そうしたら、白神さんが《それを優しさと呼ぼう》《それを悔しさと呼ぼう》っていう、まるで背中を支えるようなフレーズをサビに書いてくださって、私自身も救われました。結果を求めがちというか、“早く結論を見出さなきゃ!”って焦っちゃうところも《行先のことは、その後でいい》って続けることで、“焦んなくていいよ”って伝えてくれていることにウルッときたり。逆に“窒息寸前”でクスッと笑ったりとか、いろんな感情がありましたね。

自分の想いをうまくまとめられない、発することができないのって、自分の意志よりも他人の気持ちを思いやってしまうやさしさの副作用かもしれませんよね。そういったCHiCOさんご自身とのシンクロ性は福岡晃子さんがお書きになられた「たがため」でも感じました。

福岡さんには“日常系の曲を”というお願いをしていたので、打ち合わせでも日常にまつわるお話をしたんです。例えば、私が洗濯物を畳めないっていう話だったり、交通費の精算って疲れるとか、ゲームが大好きとか(笑)。そういったエピソードをチョイスして歌詞に使ってくださったんですけど、その中で切り取ってくださったのが日常の中でふっと《誰のための わたしなんだろうな?》って考え込んでしまう瞬間だったんです。寝る前とかお風呂入った時のあの一瞬の無の時間に、この「たがため」って刺さるんじゃないかな?

《誰のための わたしなんだろう》って個人的には“自分のため”以外に答えはないと思うのですが、自分よりも他人の気持ちを優先しがちなCHiCOさんだと、そんなふうに悩んでしまうこともあるんでしょうか?

そうなんです! 考え込んでしまうんです。 日々、人とかかわっていく中で、ちょっとモヤッとする瞬間だとか、自分の中で煮えきらない感じとかがあったりするんですよね。福岡さんにはそこまで深く話せなかったんですけど、会話のやりとりの中で、きっとこんなことを考えているんだろうって、人間としての繊細な部分を見てくださったんだと思います。人生相談したいくらい言葉の先を理解してくださる方で、言葉の裏側に気づいてくださる方なので、この曲でみんなのちょっとしたモヤモヤの裏側を癒すというか、寄り添えたらいいなと思っています。
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EP『PORTRAiT』【完全生産限定盤】(CD+グッズ)
EP『PORTRAiT』【通常盤】(CD)

OKMusic編集部

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