【北園涼 インタビュー】
打ち出したいものだったり、
伝えたいことは変わっていない
乗り越えるべき壁なんて
現れないほうがいい
その中でも特に想い入れのある曲を挙げるとすると?
うーん…難しいですね。でも、やっぱり11曲目の「keep it 100」(2023年4月発表の配信シングル)が一番好きかもしれない。一番新しい曲を一番愛したい気持ちもあるので。サウンド的には今までに出した曲と全然違いますけど、それこそ音楽って自由だからひとつのものにとらわれないで、いろんなことに挑戦したかったんです。だから、自然と今までとは違うスタイルの曲を選んだのかもしれないですね。
これまで貫いてきたロックサウンドとは趣の異なる、打ち込み要素の強い曲ですもんね。おまけに、ご自身で書かれた歌詞が本当にリアルで! 《思ってたよりずっと辛いこと 平気で何度も起こるなんて》という歌い出しから迫るものがあって、架空の物語ではなく、本当にご自身の経験や心の内から生まれた言葉を綴られているんだなと感じました。
そうですね。作詞する際は、それがメロディーになるかどうかは別として、ひたすら心のままに、その時にあふれ出るものを書くんですよ。この歌い出しにしても、みんなもそうじゃないですか。自分の理想だったり求めるものがあるからつらいと感じるわけで、それは悪いことじゃないと思っているんです。僕だって、例えば怪我とか事故とかで“なんでこんな目に遭うんだ”って嘆くこともあるし、そういう時って周りの人たちが支えてくれて、やさしさから“これを乗り越えれば大きくなれる”とかって言葉をかけてくれるんですけど…“いやいや、こんなことはないほうが良くない?”って(笑)。“乗り越えるべき壁なんて、現れないほうがいいじゃん!”っていうリアルな想いから、“ならば神は時として悪魔だな”と思って書いたんです。
だから、綺麗事じゃないんですよね。単にがむしゃらに突き進むのではなく、つらいことも諦めそうなこともあるけど《こんな人生でも まだ終わらせてはいけない》と踏ん張っている歌だからこそ、多くの人の共感を得られると思うんです。そのへんの多面性は3rdアルバムのリード曲でもある「Ignition」ともしっかりつながっているなと。
ありがとうございます。「Ignition」もひとつのストーリーがある曲で、自分の中では特殊な歌詞の書き方をした曲だったから、歌うのには苦労しました。一度諦めた人がもう一度頑張ってみようとするっていう、ポジティブにもネガティブにも取れる曲で、言ってみれば僕の人生ですね。もちろん綺麗事だけの歌もいいし、“歌の世界くらいきれいなだけでいいじゃないか”と言う人もいるだろうけれど、やっぱり良いことばかりじゃないですから。みんな幸せなだけじゃないし、裏を返すと自分だけがつらいわけじゃないから…って寄り添える歌が、僕の伝えたいものなんです。僕自身、輝いている世界にいるように見えて、悩み苦しむこともあるし、ライヴに来てくれるファンのみんなも、それぞれに悩みはあるだろうから、“同じように生きているよ”っていう想いは込めているかな? 聴いて元気になってほしいので、応援歌みたいな曲を作りたいってことは、いつも念頭に置いているかもしれないです。
《君は自分を愛してあげてよ》という最後のフレーズも素敵ですし、続く12曲目の「ヒカリアレ」にも《自分を認めてけば 見える景色変わるだろう》と、同じようなメッセージを伝える歌詞もあって。最新曲で歌われた想いが、1stアルバムの収録曲にも入っているというのも、この5年で大事にしていたものが変わっていない証拠ですよね。
それは…偶然ですね(笑)。ただ、「ヒカリアレ」は自分が書いた歌ではないのに、すごく僕自身に刺さった曲なんですよ。とてもシンプルで、ライヴでも歌わない時はないんじゃないかってくらい好きな曲だから、ベスト盤が出ると決まった時、この曲と「keep it 100」は真っ先に入れようと決めたんです。この2曲でこのアルバムの伝えたいことはしっかり伝わるんじゃないかなって。
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