UVERworld　バンドだけの力ではなく
CREWとともに作り上げた熱狂、『TAK
UYA∞ 生誕祭』を振り返る

ENIGMASIS TOUR ～TAKUYA∞ 生誕祭～

2023.12.21(木)横浜アリーナ

「誰一人置いていかねえから！ 全員でヤバい、（記憶から）消えない、消せない、ハンパない夜にするぞ！」（TAKUYA∞／Vo）

DJ誠果（Sax）がアリーナを揺らしたあと、たった一人ステージに出てきた真太郎（Dr）がドラムを打ち鳴らしていると、突然、TAKUYA（Vo）とサオ隊の3人がステージの下からポップアップするという演出で観客の度肝を抜きながら、1曲目の「Don’ t Think.Feel」になだれこむオープニングからバンドの演奏はフルスロットルだ。

UVERworldが最新アルバム『ENIGMASIS』のリリースツアーの最中、12月21日に横浜アリーナで開催した『TAKUYA∞生誕祭』。UVERworldのファン＝CREWにとってはお馴染みの毎年恒例のスペシャルイベントではあるけれど、コロナ禍を経て、4年ぶりとなる横浜アリーナオールスタンディング公演だったからなのか、今年、バンドが例年以上の気迫とともにライブに臨んでいることは、TAKUYA∞が1曲目から客席に飛び込み、暴走とも言える熱いパフォーマンスを序盤から繰り広げたことからも明らかだった。

そんなTAKUYA∞を煽るように誠果、サオ隊の3人も太鼓を打ち鳴らしながら2曲目の「VICTOSPIN」になだれこむ。TAKUYA∞の歌の裏で信人（Ba）がダイナミックなグリッサンドを交えながら加えるリフが前のめりのグルーブを作り出す。

TAKUYA∞のラップと掛け合うようにアリーナを埋め尽くした大観衆がシンガロング。

バンドの演奏は、もう止まらない。「Don’ t Think.Sing」「畢生皐月プロローグ」「BABY BORN&GO」とたたみかけるように繋げる一方で、TAKUYA∞は歌いながらアリーナ席の真ん中を突き進んでいく。そんなTAKUYA∞に近づこうと、血気盛んなCREWがダイブを始め、TAKUYA∞の進路を阻むが、TAKUYA∞は怯むことなく、セキュリティスタッフとともに押し寄せるCREWをかきわけ、かきわけ、進んでいき、アリーナ最後列のブロックまで辿りついたところで、快哉を叫ぶように言ったのが冒頭に記した言葉だった。

そして、そこに繋げたダンサブルでアンセミックな「UNKNOWN ORCHESTRA」が早くもアリーナを一つにしながら、大きな熱狂を作り上げたのだった。

しかし、ライブはまだ始まったばかりだ。

「今日はTAKUYA∞君が全部セトリを組んでます。懐かしい曲も出てきます。ホント、マジでヤバいよ」（真太郎）
「（誕生日のお祝いに）欲しいのは、みんなの声だけ。楽しんでる姿だけ。それだけで幸せになる。歌えって言っちゃったけど、歌いたい奴だけでいいよ。（全員が）声を出したくなるようなライブをやってやる。最高の景色を迎えましょう！」（TAKUYA∞）

その言葉通り、いきなりCREWにシンガロングの声を上げさせた「RANGE」から音源通りラッパーのANARCHYをゲストに迎えたラップナンバー「FINALIST」、アップテンポの演奏の中でタイトなバンドアンサンブルがバンドの一体感を印象づけたファンクロック・ナンバー「パニックワールド」、そして再び全員で太鼓を打ち鳴らした「DEJAVU」と繋げたところで、「懐かしいの聴かせるよ」（TAKUYA∞）と彰（Gt）が奏でるサステインを効果的に使ったリードフレーズに導かれるように披露したのがバラードの「SORA」だ。

06年のシングル「Colors of the heart」のカップリング曲ながら、18年のベストアルバム『ALL TIME BEST』にファンの投票によって収録されたというエピソードを知らなくても、耳をそばだてる観客の姿を見れば、密かな人気曲だということは誰にでもわかるだろう。

そしてこの日、バンドはもう1曲、バラードを披露した。それが「大切な曲。ゆっくりした曲も歌わせてよ。ライブでは滅多に歌わない曲ではあるんだけど」とTAKUYA∞が語ってから演奏した「THE OVER」。前述の『ALL TIME BEST』のファン投票で1位を獲得したことに加え、TAKUYA∞曰く「ライブでは滅多に歌わない曲」であることを考えると、「THE OVER」もまた、間違いなくこの日のライブの見どころの一つだったと思う。

しかし、真の意味の見どころはここからだ。

「ぶちかまそうぜ！ 行けるか!?」とTAKUYA∞が声を上げ、克哉（Gt）がデジタルギターを不穏に唸らせながらインストの「別世界」からなだれこんだ後半戦。彰によるフュージョン風のギターソロから信人のウッドベースソロ、そして誠果のサックスソロと繋げ、一気に白熱していったバンドが繰り出していったのは、「NO.1」以下、ロックナンバーの数々だ。

客席に再び飛び降りたTAKUYA∞はまた、アリーナの真ん中を突き進んでいく。

「ビタースウィート」から繋げた「Touch off」ではステージに上がる火柱とともにタテノリのビートにスタンドが揺れ、アリーナ席のダイブも怒涛という言葉がふさわしいものになる。すごい、すごい。そこだけ見ていると、ライブハウスの熱狂と何一つ変わらない。

「目指そうよ！ 今まで感じたことがない一体感を！」（TAKUYA∞）

そして、“オーオーオー”というシンガロングとともになだれこんだアンセミックなダンスナンバー「IMPACT」を歌う頃にはアリーナ最後列のブロックまで辿りついていたTAKUYA∞がPA卓を囲んでいる柵の上で言った「横浜アリーナ！ 全員で揺らすぞ！」。その言葉を合図に力強い4つ打ちのビートに合わせ、観客全員がジャンプ。アリーナをグラグラと揺らした直後にTAKUYA∞が快哉を叫ぶ。

「こんなライブ、他のどこで見られるんだよ!? ここでしか見られないから何年もUVERworldを追っかけてんだろ！」

その瞬間、冒頭に記した宣言は見事、成就したのだった。

続けて、あの曲が聴きたいとか、この曲やらなかったとか、セトリに対してあれこれ言うCREWに対して、文句言ってんじゃねえと思いながら、今回、セトリを組む上でそんな声にも耳を傾けてみたと明かしたTAKUYA∞は「その結果、想像よりもすごいライブになったことを感じてる！」と言って、CREWに歓喜の声を上げさせた。

バンドだけの力ではなく、CREWとともに作り上げた熱狂であることが重要だ。

そんな両者の関係を祝福するようにキャノン砲が金テープを放ったアンセミックなロックナンバー「THEORY」、おまえの人生はおまえのものだと聴く者を鼓舞する力強い「EN」と繋げ、最後を飾ったのは、「Ø choir」。TAKUYA∞は「これが始まりの曲だ」とこの曲を紹介したが、なぜ始まりの曲なのか、その理由はCREWならすでにご存じ通り。しかし、この日のラストナンバーという意味では、それよりもダメ押しでアリーナを揺らすダンサブルなポップロックナンバーということが重要だったんじゃないかと思う。

そんな想いに応え、最後の最後までアリーナを揺らしたCREWにTAKUYA∞は最後の最後に最大級の賛辞を贈ったのだった。

「やったな！ やったな！ 完璧な夜だったと思うよ。音楽の力だけでどれだけ楽しめるか、俺たちこの3年間でしっかり掴んできたでしょ？ でも年に1回ぐらい、これくらいぐちゃぐちゃに暴れる日があってもいいよね？ またやろうぜ！」

取材・文＝山口智男 撮影＝Shinsuke Tanoguchi