矢田悠祐&山本一慶、8年ぶりの再タ
ッグ! リーディング『銀河鉄道の夜
』インタビュー

2023年11月30日(木)~12月3日(日)、東京芸術劇場 シアターイーストにてリーディング『銀河鉄道の夜』が上演を迎える。
原作は宮沢賢治の同名童話。貧しく孤独な少年ジョバンニは、友人カムパネルラと銀河鉄道に乗って夜空の旅をする。そこで不思議な人たちとの出会いを経てーー。
初演は2016年1月、矢田悠祐・山本一慶のW主演で上演。初演では二人がジョバンニとカムパネルラを交互に演じていたが、今回8年ぶりの共演にあたり、主人公ジョバンニを矢田が、友人カムパネルラを山本が演じる。さらに特別出演に紫吹淳を迎え、上演台本や演出も新たに大きく生まれ変わる『銀河鉄道の夜』。8年ぶりに再タッグを果たす矢田と山本に、本作への想いと公演への意気込みを聞いた。
■大人になった自分が今表現するもの
――お二人のW主演で初演を迎えた本作ですが、当時の想い出で特に記憶に残っていることは? 今回どんな気持ちで作品に取り組んでいますか?
山本:前回は公演ごとに僕らが入れ替わりでジョバンニとカムパネルラを演じたんだよね。
矢田:そうだった、それで大変だったんだ。立ち上がるきっかけのタイミングがそれぞれ違ったりして、入れ替わるとそれがまた変わってくるから。朗読劇といってもすごく動きが多い作品で、ほとんど普通にお芝居していた記憶がある。
山本:どっちの役がやりやすい、やりにくいとかはなかったけれど……ただ今回はキャラクターが固定されるぶん、当時よりはそのキャラクターに対する気持ちが整理しやすくはなるし、もっと役について深掘りできるかもしれない。
矢田:僕は思い悩む役が好きだから、今回ジョバンニ役でよかったかも。
山本:だけど矢田ちゃん、思い悩んでる印象あんまりないけど(笑)。
矢田:あの頃はあまり悩みもなかったから(笑)。
山本:人生について悩むというのはむしろ今の方かもね。この年齢になっていろいろ考え出すタイミングでもあるだろうし。
矢田:そうそう。ジョバンニに惹かれるのも今だからこそ、という感じかな。
山本:カムパネルラはジョバンニと違って、どこか飄々としているイメージがあるんだよね。
矢田:一慶はもともとわりとそういうタイプじゃない?
山本:そうかもね。カムパネルラってどこか掴みどころがなくて、だからこそ導き手としてこの作品に存在しているのかなっていう気がする。どうとでもとれちゃうし、ジョバンニもついて行くしかなかったりする。そこがカムパネルラの魅力でもあるのかなって思う。
矢田:ジョバンニは物語を通して大人になっていくわけだけど、あれから8年経って大人になった自分が、一歩大人になる姿を本当に表現しないといけない。当時と比べて、いろいろ成長していればいいなって思ってて。
山本:20代半ばの一歩と、この年齢になってからの一歩は全然重みが違う。大人になってからの一歩をどう見せるか、今回の再演でまた挑戦できそうです。
ーー8年前と今でお互いの印象に変化はありますか? この8年でご自身の中で一番変わったことは?
山本:矢田ちゃんは全然変わらない。久しぶりに会って、“あれ、変わった?”と一瞬思ったけど、髪が黒くなっただけだった。茶髪とか金髪の印象が強くて、矢田ちゃんの黒髪ってみたことなかったから(笑)。
矢田:一慶も印象はあまり変わらない。
山本:矢田ちゃんと知り合ったのは22,23歳の頃だから、もうかれこれ10年以上の付き合いになるんだよね。なかでも20代半ばからの8年ってすごく大きいと思う。
矢田:そうかもしれない。だから自分の中で変わったことはいっぱいあって。この8年で主演を含めて何本も舞台をやらせてもらってきたけれど、僕の中で一つの転機になったのがミュージカル『アルジャーノンに花束を』。幅のある役で表現しなければいけないことが多過ぎて、演出家の方にすごい叩き込まれて。引き出しに無理やりいっぱい詰め込まれた感覚があったし、あの経験は大きかったよね。そこからその人のメソッドでお芝居作るようになったから、芝居も変わった。若い頃なんて感覚でしかお芝居してなかったから。
山本:お互い人生経験を積んできたってことだよね。僕の中で1番変わったことは、責任を負いたくなったこと。責任を負うことによって発言力を得られるし、また逆もしかりで、発言するからには責任を負わなきゃいけない。若い頃って無鉄砲に言いたいことを言ったり、勝手に責任取ったりできるけど、年齢を重ねて考えが深くなればなるほど、発言力と責任を取る力がイコールになるんじゃないかと思っていて。またそこをイコールにしたいっていう思いが強くなってる気がしてる。
■不確定さに魅力を感じて
ーー前回の公演を経て、改めて感じる『銀河鉄道の夜』の魅力とは何でしょう?
山本:前回はこの物語がよくわからなかったんですよね。それで8年経った今もよくわからない。
矢田:抽象画みたいな作品だよね。
山本:書いた人の中に答えはあるんだろうけど、それがはっきり指定されていないというか。
矢田:装飾的な言葉が多くて、詩的な表現がいっぱい出てくる。わかりやすい文じゃないから、読み手に任せますというところがあって。
山本:今となっては、わからないことも正解というか、ここで演じ手がわかってしまっても面白くないのかなと思う部分がある。わからない美学というのもあって、その不確定さがやっぱり魅力な気がしてる。
矢田:また大人になって読むと思うことも違うだろうし、だから今回はまた違う印象になりそう。
山本:年齢の縛りがないから、子供も読むし、大人も読む。幅広く読まれるってそういうことなのかもしれない。
矢田:朗読劇なので言葉の綺麗さを楽しんでもいいし、内容を自分で深掘りしてこういう意味だったのかなと思うのもいい。いろんな楽しみ方ができる作品だなって感じています。
ーージョバンニの台詞に「ほんとうのさいわいは一体何だろう。」とありますが、お二人が思う「自分にとっての幸福」とは?
矢田:小さな幸せならたくさんある。お風呂に入浴剤入れるときとか。僕、透明の水って嫌なんですよ。
山本:え、なんで?
矢田:何故かわからないけど、透明な水に入るのがちょっと違和感あるというか、それならシャワーでいいやってなる。お風呂は色がついててほしい。もちろん香りで癒やされたりもする。
山本:そういう小さな幸せ、僕はないなぁ。
矢田:そう? 探そうと思えばはいっぱいあると思うけど。家系ラーメンで濃いめって頼むときとか。
山本:小さな幸せを僕は日々感じていないのかもしれない。最近自分の中ですごく欲しているのが、“無”の時間。もう常にいっぱい考えちゃって、寝ててもずっと何か考えてるから、休めないんだよね。一回ブレーク入れて、全て無にしてみたい。そこに「ほんとうのさいわい」がある気がする。修行にでも行ってこようかな(笑)。
矢田:じゃあお寺に行かないと。座禅組んだらいいんじゃない?(笑)。
山本:でもあれ今やったらずっと叩かれてると思う。太鼓の達人並みに連打されるよ、きっと(笑)。
矢田:僕が考える「ほんとうのさいわい」は、人と比べないこと。上を見たらきりがないし、下を見てもきりがない。でも自分は自分だと思ったらそこに幸せがある。
山本:うん、確かにそうだよね。極論は自分を愛するということ。
矢田:幸せって相対的なものではなくて、自分がそういう風に感じたら、そうなんだってこと。だから比べないことが1番なんだろうなとは思うけど……。まぁ現実はなかなかそうもいかないので、そういう風になれたらいいなって思ってます。
■歌に生演奏の上演で新たな作品世界を繰り広げる
ーー今回は台本や演出も変わり、新バージョンでの上演になります。本公演の見所をお聞かせください。
山本:今回はプロジェクションマッピングの演出に加え、僕らの歌もあって、前回とはまた違う世界観になりそうです。
矢田:さらにお箏や笛など和楽器の生演奏が加わるので、かなり贅沢な作品になるんじゃないかなと思ってて。
山本:この『銀河鉄道の夜』という作品はこれまでいろいろな人たちが取り組んできたけれど、和楽器での上演というのはあまりない挑戦だと思う。だからちょっとレアな公演になるだろうし、お客さまにとっても貴重な体験ができる作品になるんじゃないかなと思っています。
矢田:8年前の公演を観に来てくれた方にも、もう一度観てほしい。そこでどう感じてもらえるか……。
山本:初見の方はもちろん、僕らをずっと応援してくれているファンの皆さんをはじめ、多くの方に観てもらえたらうれしいよね。
矢田:当時は純粋で、若い時にしかできなかった表現もあると思うけど、お互いにこの8年間で引き出しも増えたと思う。しゃべり方一つ、仕草一つにしてもそう。それをこの作品でどれだけ使えるか、お見せできるのか。楽しみにしていてくださいというよりも、僕自身すごく楽しみです。
山本:僕らの集大成というか、8年間の成果が見えたらいいなと思っていて、また新たな気持ちで取り組んでいます。
取材・文=小野寺悦子 撮影=山副圭吾 ヘアメイク=太田夢子

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