約6000人がシンガロング、「まだまだ
突っ走っていく!」MONGOL800、25周
年を盛大に祝う『800BEST』レポート

MONGOL800 25th -800BEST at ぴあアリーナMM』2023.10.14(SAT)横浜・ぴあアリーナMM
「まだまだ突っ走っていくモンパチをよろしくお願いします!」
久しぶりにライブで披露する曲も含め、結成から数えてこの25年の間にモンパチことMONGOL800が発表してきた新旧の代表曲の数々もさることながら、この日10月14日(土)、横浜・ぴあアリーナMMに集まった6,000人のファンが一番聴きたかったのは、キヨサク(Vo.Ba)がライブの中盤に言ったこの言葉だったんじゃないかと思う。
「大変だったという自覚もある」とキヨサクが語ったこの5年間を経て、この日、「モンパチの旅はまだまだ続きます!」とファンの前で宣言した意味は大きい。その瞬間、結成25周年をファンとともに盛大に祝うスペシャルライブ『MONGOL800 25th -800BEST at ぴあアリーナMM』は、モンパチの新たな旅の始まりに変わったのだと思う。
「こんばんは。MONGOL800です! ぴあアリーナ、遊びましょう!」(キヨサク)
モンパチのバイオグラフィにおいて、今後、太字で記されるに違いない、ぴあアリーナ公演は、2000年に全国リリースされた1stアルバム『GO ON AS YOU ARE』収録の「PARTY」からスタートした。サポートに迎えたDOBERMANのSeasir(トランペット)、SCAFULL KINGのNARI(サックス)が加えるブラスサウンドが曲のスウィンギーな魅力を際立たせるアレンジは、ライブのオープニングにぴったりだ。
1曲目からアリーナ席はもちろん、すでに総立ちのスタンド席も揺らしていったステージの5人は間髪入れずに「GOOD MORNING OKINAWA」「Cinderella」とパワー・ポップ~ポップ・パンク・ナンバーをたたみかけ、客席をさらに揺らしていく。
温もりあるキヨサクの伸びやかな歌声、エッジをきかせた音色や閃かせるように奏でるソロで存在を印象づけるSCREW WALKERのKuboty(Gt.Vo)のギター・プレイに加え、サッシこと高里悟(Dr, Vo)が加えるハーモニーも大きな聴きどころだ。「最高じゃないですか!」とキヨサクが快哉を叫んだのは、序盤から盛り上がる客席を目の当たりにしたからだ。
「1曲目、2曲目、3曲目といきなり飛ばしてしまいましたけど、まだまだリクエストに応えてもよろしいでしょう!?」(キヨサク)
この日、モンパチがベース、ドラム、ギターという基本編成とホーン隊を迎えた5人編成を使い分けながら披露したのは事前に募ったファンのリクエストを叩き台に選んだ全25曲。その熱演は2時間50分に及んだのだから、観客も大満足だったに違いない。
ポップ・パンクとも青春パンクとも言えるロック・ナンバーを軸にしながら、そこにフォークやスカの要素を取り入れた「夢う」、シャッフルやレゲエの裏打ちのリズムで変化をつける「ガジュマルの木」、そしてレゲエからカリプソに遡りつつ、沖縄民謡風にもなる「OKINAWA CALLING」といった、ある意味ミクスチャー・ロックとも言える曲が入り混じるところがモンパチ流だ。
「この人達がいなかったら、20周年以降、25周年のこのステージはなかったんじゃないかと心から思っております。そして、心からの感謝を込めて」とキヨサクが現在のモンパチに欠かせないサポート・メンバー……Kuboty、Seasir、NARI、そして一身上の都合で横浜に来られなかったため、沖縄からリモート出演した粒さんこと、粒マスタード安次嶺(パーティーダンサー)を改めて紹介してから演奏した「OKINAWA CALLING」では、沖縄でカメラに向かって踊っているはずの粒さんが曲の中盤、奈落からステージ中央にぴょーんと跳び上がってきて、観客に快哉を叫ばせるというアリーナならではのサプライス演出も飛び出した。
「一言いいですか? 粒さんが出てきたとき、泣いている人がいたんですよ。たぶん、それ間違ってると思う(笑)」(キヨサク)
「その涙、大事な人に取っておいて」(粒さん)
「びょーんと跳ぶやつ(装置)、粒さんのために作ったんですよ。(そんな仕掛けを使うの)普通、マイケル・ジャクソンくらいですよ(笑)」(キヨサク)
そんなやり取りが客席を笑わせながら、バンドは、キヨサク曰く「不思議とモンパチの25年を振り返るバランスになった」というセトリに沿って、新旧の曲を繋げていく。
ムーディーな青いライティングとアンビエントな音像が印象的だったトラッド・フォーキーな「rainbow」、ホーンがサザン・ソウル風に鳴ったバラードの「想うた~親を想う」と2曲続けて披露したスロー・ナンバーと、そこから一転、「himeyuri~ひめゆりの詩~」「矛盾の上に咲く花」「神様」「琉球愛歌」という反戦の願いを込めた曲の数々を繋げていった中盤のコントラストもまた、モンパチなのだった。
「沖縄に生まれ育ったがゆえ、普通にいち沖縄県民として、目に映る景色がちょっと違うわけでございまして。そういうのも普通に歌になってしまうんですけど、バンドでは珍しいシニカルな、時事的だったり、風刺的だったり、そういうものを楽曲の中に少しずつ、必ず取り入れてきました。だからってテーマにしていたわけではなく、普通に生活していたら思うことなんですよ。最近も落ち着くどころか、よけいにきな臭い世の中になってしまいましたけど、マスクをしているからって、頭の中まで無口になったらダメなんじゃないかなって個人的には思います。そんなモンパチの一面もライブで、ぜひ体感してもらいたいと思います」
「himeyuri~ひめゆりの詩~」を演奏する前にキヨサクはそんなふうに観客に語りかけたが、そういう曲の数々がファンのリクエストで決めたセトリに入るということは、ファンもパンクをバックボーンに持つバンドならではと言えるソリッドでタフなサウンドとモンパチのメッセージをしっかりと受け止めているということだ。
<素敵な世の中をつくろうか>と歌う「矛盾の上に咲く花」のエモい演奏を聴いた観客が「モンパチ最高です!」と声を上げる。そして、<忘れるな琉球の心 武力使わず 自然を愛する>と歌う「琉球愛歌」の大きなグルーヴを、ラララとシンガロングしながら観客はワイプで受け止めた。
「まだまだモンパチの旅は続きそうです!」(キヨサク)
そんな宣言から始まった終盤戦はエモいメロディをタイトなアンサンブルで聴かせる「pray」「face to face」とたたみかけると、Kubotyがザクザクとコードを刻むイントロのギターが観客に声を上げさせ、キャノン砲の放った無数の金テープとともに2001年の発表以来、歌い継がれてきたモンパチの代表曲中の代表曲「あなたに」になだれこむ。
2ビートの青春パンク・サウンドに加え、キヨサクからサッシに繋ぎ、サビではKubotyも歌う見事なボーカル・アンサンブルに観客の盛り上がりは最高潮に……と思いきや、それを上回る盛り上がりが生まれたのが「あなたに」同様、2001年の発表以来、歌い継がれてきたモンパチのもう1つの代表曲中の代表曲「小さな恋のうた」だった。
「メンバー、スタッフ、お客さんに支えられ、続けてきたからこそ見ることができた景色です。ありがとうございます。いいね。節目に祝ってもらえて幸せです。いつもと変わらずに、ぴあアリーナでも響かせてもらっていいですか?」
キヨサクのリクエストに応え、6,000人がシンガロングの声を上げながら、その「小さな恋のうた」で本編は終了したのだが、「あなたに」「小さな恋のうた」をさらに超える熱狂がアンコールで待っていた。
「アンコールいただきます。まだまだ遊べますでしょうか? リクエストまだまだありました!」(キヨサク)
ミッドテンポの「I’ ll be」を3人だけでじっくりと聴かせると、ホーン隊を迎え、オールディーズ風のバラード「月灯りの下で」とリクエストの第1位だったという青春パンク・ナンバー「Love song」を披露。そして、粒さんを再び呼び込み、「まだまだモンパチの旅は続きますということで、新しい曲でお別れしたいと思います!」と演奏したのが、7月12日にリリースした7年ぶりのアルバム『LAST PARADISE』のタイトルナンバー。
ニューオーリンズ風のホーンが鳴るバラードと思わせ、サッシのカウントからアイリッシュ・フォーキーなダンス・ポップ・ナンバーになる「LAST PARADISE」をメンバー達は演奏せずにーーつまり、音源を流しながら、メンバーそれぞれにスタッフが押すトロッコに乗って、踊ったり、カラーボールをスタンド席に投げたりしつつアリーナを一周するという想像もしていなかった演出で客席を大いに沸かせたのだった。
「おじさん達の壮大な遊びにつきあってくれてありがとう。でも、これで帰れるわけない。もう1曲アンコールいただいてもよろしいでしょうか?」とキヨサクが声を上げ、ステージの6人が演奏したのは『GO ON AS YOU ARE』のオープニング・ナンバー「DON’ T WORRY BE HAPPY」。アリーナを照らす眩いライトの中、ダメ押しするようにスカのリズムで観客を踊らせながら、熱演を締めくくる。しかし、すでに書いたとおり、ここで一区切りではない。
10月25日には9組のアーティストが参加したトリビュート・アルバム『800TRIBUTE -champloo is the BEST!!2-』をリリース。そして、11月2日(木)~4日(土)、地元沖縄で開催する主催フェスティバル『What a Wonderful World!!23』、さらには12月30日(土)の『MONGOL800 25th 800BEST』の沖縄公演とモンパチはまだまだアニバーサリー・イヤーを突っ走っていく予定だ。ファンが見守る中、新たな一歩を踏み出した彼らがこれからどんな旅を続けていくのか興味は尽きないし、何よりも楽しみだ。
取材・文=山口智男

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