現役大学生の津軽三味線奏者・中村滉
己、二十歳を迎え新たな世界へ ポッ
プスや現代要素との融合で「津軽三味
線の可能性を感じてもらえたら」

津軽三味線の中村滉己が東京と大阪でリサイタル「風華秋色」を開催する。特に東京の草月ホールでのリサイタルがひらかれる2023年11月17日(金を)は彼の二十歳の誕生日であり、中村滉己の新たな世界が披露される。
――津軽三味線の家系とききました。津軽三味線を始めたのはいつですか?
母方の家系が全員津軽三味線をやっているので、物心つく前から無意識で弾いていました。1歳のとき、歌で初舞台を踏みました。2歳の時には舞台で三味線を弾いていたようです。おもちゃみたいな三味線ですが(笑)。
祖父に手解きを受け、大叔父の息子である2代目中村隆志師匠にしっかりと習いました。小さい頃から祖父や師匠が舞台で輝いている姿を見られる場所にずっといましたね。そして芸への向き合い方を学びました。
――名古屋のご出身ですよね。
祖父は、もともと青森出身なのですが、三重県の長島温泉での公演があまりに好評を博し、名古屋で教室をひらいてほしいという声が殺到して、それで、名古屋に移住したそうです。
――津軽三味線の特徴を教えていただけますか?
竿が長くて太いのが特徴ですね。普通の三味線の皮は猫ですが、津軽三味線は犬です。
撥(ばち)でひくのではなく、スナップを使ってぶっ叩きます。だから、右腕は筋トレしてなくても、これくらい筋肉がつきました。実際、スポーツみたいな楽器です(笑)。かなりアグレッシヴで、下手したらロックと見紛われてもおかしくありません。
――今回のリサイタルはどういうものになりますか?
津軽三味線の伝統的なもの、日本の民謡と今の音楽を掛け合わせたオリジナルの音楽、ポップス的なものの3つの構成になります。つまり、まずは津軽三味線のありのままの音を楽しんでいただき、次に津軽三味線と現代的要素が融合した私のオリジナル曲、そしてポップス的な音楽という構成で、津軽三味線の在り方の多様性を聴いていただきます。津軽三味線でこういうこともできる、こういう融合も面白い、と感じていただければと思います。
――滉己さんの多彩な活動について、まわりの方々はどう考えていますか
師匠は寛容です。民謡を踏襲しているので、邪道とは言われません。
伝統を受け継ぐというところがあってのいろいろな活動だと思っています。帰ってくるところという、軸を持つことを大事にしていかなければならないと思います。
――今回のリサイタルでのおすすめ曲を教えてください。
まずは「津軽じょんから節」。一番オーソドックスな津軽三味線の曲です。そして「南部酒屋酛すり歌」と私のオリジナルの「Labyrinth -迷宮-」。この2曲は、より今の生活に近く、違和感なく入ってくると思います。オリジナル曲を作る時も民謡の何かを踏襲してやるように心がけています。たとえば、「Labyrinth -迷宮-」も「津軽じょんから節」的なフレーズを入れたりしています。
――ポップスではどういう曲を取り上げますか?
「花」です。ピアノ(高橋優介)を入れてやります。まだ19歳なので、自分にどんな音楽がフィットするのか模索中です。ポップスと三味線でどうなるのか、実験的、挑戦的な意味も込めて演奏します。
民謡って少しノドを締める歌い方をしますが、さらっーと歌うポップスの歌い方を勉強したいと思っています。新たな発声方法の獲得という目的もあります。
――リサイタルではどういうところを聴いてほしいですか?
津軽三味線の未来の可能性を感じていただけるコンサートにしたいです。まだまだ進化できるところを聴いてほしいですね。
津軽三味線を古くて敷居が高くて聴きづらいと思っておられる方でも楽しんでいただけると思います。
――現役の大学生だと聞きました。
慶應義塾大学環境情報学部の2年生です。まわりのみんなに、東京藝術大学(注:東京藝大には邦楽科がある)への進学を勧められましたが、違う分野から音楽をとらえて、ある意味、型から外れたいと思いました。
SFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)は、音楽だけでなくいろいろな分野で活躍している人が多く、違う分野の人との出会いや違う分野との融合がしたいと思いました。
まわりがいろんなところにおいてハイスペックで、尖っていて、まだまだ自分はこんなんではダメだと思わせてくれるところです。3年生からは、心理学系と音楽を結びつけた卒論を書きたいと思っています。
――将来の夢を語っていただけますか?
今まで日本国内いろいろなところに行かせていただいたのですが、これからは国境を越えて、自分の音楽をどんどん発信していきたいですね。いずれは海外のどこに行っても自分の音楽が認められるような音楽家になりたいです。
海外のオーケストラとの共演するのも夢ですね。オーケストラとの共演は6年前に名古屋フィルハーモニー交響楽団としています。
私は、芸人としての自分とアーティストとしての自分とのどちらも欠かすことができないと思っています。芸人として紋付き袴で民謡と三味線を演奏し、アーティストとしては多様な衣裳でほかの音楽と合わせたりする。そう使い分けられる人になりたいです。今回のリサイタルでも、第1部の衣裳は紋付き袴にし、第2,3部はアーティストとして別の衣裳を考えています。
――今回のリサイタルへの抱負をお願いします。
実は、草月ホールでのリサイタルの日は、私の二十歳の誕生日なのです。二十歳最初のコンサートが二十歳の良いスタートとなるように新曲を用意したりしています。みなさんに津軽三味線の未来の可能性を感じていただけるような演奏をしたいですね。津軽三味線を知らない方にも、一度、聴きに来ていただければ、幸いです。

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