世田谷アートタウン関連企画 フラン
ス×日本 現代サーカス交流プロジェ
クト『フィアース5』稽古場レポート

何やら長いタイトルだが、東京・三軒茶屋の秋の風物詩となっている「世田谷アートタウン『三茶de大道芸』」という大道芸フェスティバルの関連企画として毎年サーカス公演が行われていて、今年は日仏の国際共同制作からうまれた『フィアース5』が上演される。
【動画】『フィアース5』トレーラー

「サーカス」と言っても、いわゆる大きなテントに像やクラウンが登場する伝統的なものではなく、サーカスのテクニックを用いながら、ダンスや演劇などを織り交ぜて創作される「アートなサーカス」である。
明確なストーリーや台詞はないが、サーカスの世界に生きる若いアーティスト達が、失敗を繰り返しながらも成長し、最後には舞台に立つまでを描いた、いわゆる「バックステージもの」であることが明かされている。そんな『フィアース5』のメインキャスト5名が揃うリハーサル初日の稽古場に潜入した。
『フィアース5』過去公演舞台写真(2021)  (撮影:片岡陽太)

■稽古場内は既に準備万端
出演者は全員で7名だが、役割に合わせて段階的に合流することになっており、本作は2021年に初演されているが、メインキャストから2名が入れ替わっている。(初演についての詳細は、世田谷パブリックシアターのHPをご覧ください)
この日に集合したキャストとそれぞれの役割は以下の通り。
アクロバット・ダンス=浅沼圭
エアリアル・リング=長谷川愛
エアリアル・ストラップ=アンブローズ・フー(胡嘉豪)
ジャグリング=目黒陽介
タイトロープ=吉川健斗
また、この日は不在のセカンダリーキャスト(スタッフ役)は、山本浩伸と安本亜佐美が務める。
長谷川、目黒、吉川が初演から続投。浅沼とフーが新メンバーとなる。
コンテンポラリー・ダンサーとして知られる浅沼だが、長谷川やリハーサル・アシスタントの吉田と共演経験があり、初日からチームにも打ち解けている。
また、唯一台湾からの参加となったエアリアルアーティストのフーは、不安よりも一緒にサーカスを創る仲間がいることの喜びの方が大きそうな様子だ。
初演の過酷さを知る長谷川、目黒、吉川は、更に1週間前から稽古場に来て調整を行っていたらしく、稽古場内は既に準備万端の状態だ。
リハーサル初日と言っても、構成・演出のラファエル・ボワテルと技術監督のトリスタン・ボドワンは、2018年に世田谷パブリックシアターでも上演した『When Angels Fall/地上の天使たち』のリヨン公演のため、まだフランスにいる。そのため、リハーサル・アシスタントの吉田亜希が事前にボワテルと打合せを行い、1~2週目のリハーサルメニューを作成・進行していく。
稽古場

■あちらこちらから「頭がパンクする」という声が
まずは振付や段取りの確認、新メンバーへの引継ぎなどを中心に行い、数日おきにボワテルにリハーサル映像を送り、フィードバックをもらいながら進めていく。
この日はメインキャスト5名が揃う初日ということで、ウォームアップも兼ねて吉田によるワークショップから始まった。簡単なゲームを通してお互いのキャラクターを知り、信頼関係を構築していく。
身体と心が温まったところで、リハーサル開始。
初日は、細かい振付や段取りが多い2シーンが行われた。
5人(+本来はセカンダリーキャストの2名も)で行う複雑な動きを、初演の映像を観ながら一つ一つ確認していく。
とはいえ、新メンバーも含め各自が、合流前に自主稽古を行ってきており、進行は非常にスムーズだ。
大まかな動きを全員が把握したうえで、映像で確認できない細かい動きや、その動きが発生する理由などを初演からの続投メンバーが説明して補っていく。
道具の転換も全て演技中にキャストの手によって行われ、シーンによっては動線や順番を間違えると大事故になりかねないため、映像で確認→声を掛け合いながらゆっくり動く→音楽に合わせて動く、という作業を不安がなくなるまで繰り返す。
腑に落ちないところがあれば、話し合いをして動きを変えることもあるらしい。
個々の超人的な動きばかりに目を奪われがちだが、あちらこちらから「頭がパンクする」という声が聞こえてくるとおり、これはなかなか頭をつかう作業も多そうだ。
実際にはセカンダリーキャストが動かす器具や小道具、照明などもあるため、手が足りないところは舞台監督や吉田がカバーする。
稽古場

■作品のテーマは「粘り強さ」
リハーサル終了後には、フランスにいるボワテル、セカンダリーキャストの山本、安本とZoomを繋ぎ、顔合わせおよび打ち合わせを行った。
ボワテルからは、
・作品のテーマは「粘り強さ」であり、失敗しても根気よく続けることで成功にたどり着く姿を描いていること。また、それは、日本のことわざ「七転び八起き」からきていること。
・自分が合流するまでに、振付と全体の流れを全員が覚えること。そのうえで、ボワテルが合流したあとに演出をつけていくこと。しかし、なぜ、その動きが発生するのか、各自シチュエーションを想像しながら取り組むこと。
・自身が持つテクニックに合わせて、振付を変化させても良いこと。
・伝統的なサーカスをオマージュした現代サーカス作品であり、作品の最後に着るサーカスの衣裳は、女性初のクラウン、アニー・フラテリーニから譲り受けた大切なものであること。
などが熱い口調で伝えられた。
ボワテルは「早く日本に行きたい」と何度も口にしていたが、今や、2024年のパリ五輪・パラリンピックに向けた大規模文化プログラム「カルチュラル・オリンピアード(Cultural Olympiad)」をも任されるようになった彼女の忙しさが、それを許さなかった。
とは言え、ボワテルが来日したあとは、2週間みっちり劇場の舞台を使って稽古をするという。
今日のリハーサルを1日覗いただけでも初演からの成長や変化が見て取れるこの作品が、本番までの1か月でどれだけ進化するのか楽しみだ
稽古場

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