【保志総一朗 インタビュー】
ミニアルバムだけど、
ある意味で今の自分の集大成感も出た
30年を凝縮しているところもあるし、
未来を感じさせるところもある
1曲目の「Star journey」は岡島さんの作曲・編曲で、ある種のファンに向けた決意表明のようにも感じました。
ファンの方に向けた曲ですね。他の曲は僕が旅をしているイメージが強くて、「Star journey」も広い意味ではそうですけど、もっとファンのみなさんと一緒に旅したいという意味合いを込めています。
星を引き連れて旅するみたいな?
はい。タイトルが“星の旅”ですからね。僕はどうしても“Star”を使いがちで、“Star journey”というタイトル自体、僕がつけたものなんです。それをもとにしてミニアルバムのタイトルを“Restart journey”にしました。
俊龍さんが作詞・作曲した「戦う者たち」は歌詞がすごいですね。
こういう方向のストレートさでくるとは思っていなかったので驚きました。楽曲は王道の俊龍節でカッコ良いのですが、歌詞で声優活動30周年に寄せて、結構ストレートに入れ込んできたところが面白くて。曲と歌詞にギャップがありますよね。
歌詞に《「お前の喉はそんなもんじゃない!」》と出てきて、ちょっと笑いました。
笑っていただいて大丈夫です。自分も最初に聴いた時、すごく面白かったので(笑)。個人的には1曲目との対比が面白くて、どちらも王道の曲ではあるけど、今と過去と未来が融合した2曲という感じがして。それが面白くて、あえてこの並び順にしました。
酒井ミキオさん作詞・作曲・編曲の「Beautiful Life」はスパニッシュで民族的なサウンドで、砂漠とかを旅していそうなイメージでした。
そうですね。そのあたりの物語性も感じていただけたら嬉しいです。何かの作品の劇中歌っぽい雰囲気もありますし。コーラスはミキオさんで、そのコーラスが入ることで、一気にミキオワールドになって。僕はもともとミキオさんの作る、こういう世界観が好きなんです。
台詞パートもありますが、最初から声優という部分を活かしたパートを作りたいと思っていたのですか?
ミキオさんから“間奏で何かもうひとつ欲しいから、ここに何か入れてほしい”と漠然とした注文があって、それでレコーディングの現場で“どうする?”“何をしゃべろう?”みたいな感じで相談して、その場で決めたんです。台詞は歌詞をオマージュしたものなので、最初はどうしようかすごく迷っていたんですけど、結果的にうまくハマったと思います。
台詞は“新しい世界へ、切り開け、美しい人生を”と。保志さんの想いを吐露するみたいな感じですね。
キャラクターではないので、自ずと僕ということになりますね。でも、ラストの「うたうたうたびびと」にも台詞があるんですけど、それともまた全然違っていて。“その時の僕”という意味合いが強いかなと思います。
ゲーム『BLADE ARCUS Rebellion from Shining』主題歌「Soul of Rebellion」に続く「KOHAKU」はまったりとした雰囲気で、歌詞に“モルト”など出てきますし、ウィスキーがテーマですね。
歌詞に出てきますけど、保志さんご自身も夜にレコードを聴きながら、ウィスキーのグラスを傾けたりしているのですか?
僕の日常とはちょっと違いますけど、“まぁ、そういう夜もあるよね”という感じです。おっしゃっていただいたようなイメージを作詞のRUCCAくんが書いてくれたのですが、彼とは呑む時にしか会わないので、それでこういうイメージの歌詞になったんだと思います。でも、こういう曲調は僕の個人名義では歌ったことがないし、僕が個人では作らないであろう新たな世界観を岩橋星実(Elements Garden)さんが持って来てくれて、また新しい世界が開けた感じがしました。たぶんファンのみなさんも、僕のこういう感じは初めて聴くだろうし、そういう意味ではお互いに嬉しい曲になりました。
他のお酒ではなく、ウィスキーというのがいいですね。いろいろ経験して、酸いも甘いもかみ分けた上で嗜むイメージがあります。それが声優活動30年とも重なるし。
そういう感じがしますよね。僕もいろいろ呑んで、ウィスキーに行き着いた感じがあるので。
「風の旋律にのって」はIsla・laの楽曲ですが、ユニットの曲も最初から入れようと?
それはありました。Isla・laは今年始めたばかりのユニットで、ちょうど僕の声優活動30周年の年と重なったので、ミニアルバムを作るなら入れようと。保志総一朗としての個人名義での音楽活動は、いつでも好きな時にやれるわけではありません。だから、自分の好きなタイミングで活動するために、こういうユニットを結成して活動を始めたんです。タイミング的にもいい機会だし、ぜひユニットのことも知ってほしいと思ってIsla・laの楽曲を収録しました。
どこかゲームのファンタジー世界のような音楽性はIsla・laの特徴ですね。
現状はそうですね。今後もずっとそうだというわけではありませんけど、Isla・laの第一章としてはそういった方面の楽曲を中心にやっています。
《たとえ喉が千切れても忘られぬ想い》という歌詞がすごくアツいですね。ファンへの誓いのメッセージというか。
はい。ファンのみんなと旅に行こうといった意味合いもあります。
そして、ラストの「うたうたうたびびと」ですが、ちょっとタイトルが読みづらい(笑)。
近藤ナツコさんの作詞ですけど、言いにくいですよね。一瞬、目がおかしくなります(笑)。
楽曲としてはスケールの大きなバラードですね。
作曲・編曲がたかはしごうさんで、デモを聴いた時からこのアルバムのエンディングにしたいと思いました。ナツコさんとごうさんのコンビは、今までも僕の節目のたびに素晴らしい楽曲を作ってくださっているので信頼感がすごくあって。“旅”と“30周年”ということ以外は伝えず、お任せして作っていただきました。
《歌唄う旅人》は保志さんご自身のことですよね?
はい。僕は最後にこの曲に背中を押されて、旅に送り出されるようなイメージを持ちました。決して終わりの旅ではないですけど、このミニアルバムを締め括るという意味で、いいエンディングになったと思います。そこからまた1曲目の「Star journey」につながっていけばいいなって。
作家のみなさんから楽曲が上がってきた時、どんな印象でしたか?
シンセメロだけだったり、ごうさんの曲は♪ラララ〜で歌っていたり、ミキオさんは全部入っていたりとか、人それぞれで面白かったですね。どの段階のデモなのかでも変わってくるし。どの曲も最初から“これだ!”みたいな感じがありましたね。
曲調もバランスがいいですね。
結果的にですが。それにゆったり旅がしたいと言っているわりには、前半は攻めて畳みかけていますけど(笑)。ミニアルバムだけど、ある意味で今の自分の集大成感も出たと思います。声優としての30年を凝縮しているところもあるし、未来を感じさせるところもあるし、すごくバラエティー豊かな感じになって、すごく贅沢な作品になった気がします。
これまでに周年のタイミングで出された作品とは、違った感慨深さがあったりしますか?
10周年の時は“10年経ったんだ〜”という感動があって、25周年の時は集大成的なイメージで新曲とベスト盤の2枚組アルバム『Voice and Harmony』(2018年5⽉発表)をリリースしたり、ライヴを開催するなど大々的にお祝いしました。今回の30周年は…まだ“途中感”があって。こういう職業だと特に、ゴールが見えない感じがありますから。来年は『機動戦士ガンダムSEED』の劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』がありますし、長く携わらせていただいている作品やキャラクターも多いので、実は毎年のようにどこかで何かしらの周年があるという感じなんです。でも、そこで意識するのは、作品もキャラクターもこの先ずっとあるわけだから自分がそこから途中離脱しないように頑張らないといけないなって。そのために健康にも注意しないといけないし。そういう意味で目的地のない旅は、まだまだ続きます!
取材:榑林史章
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ミニアルバム『Restart journey』2023年10月4日発売
KING RECORDS
- KICS-4120
- ¥3,190(税込)
- ※初回製造分のみスペシャルBOX仕様
『ミニアルバム「Restart journey」発売記念イベント』
11月11日(土) 大阪・アニメイト大阪日本橋 イベントスペース
【1回目】12:45開場 13:30開演
【2回目】15:15開場 16:00開演
イベント内容:トーク&ポスターお渡し会
11月12日(日) 東京・animate hall BLACK (アニメイト池袋本店 9F)
【1回目】12:00開場 13:00開演
【2回目】15:00開場 16:00開演
イベント内容:トーク&ポスターお渡し会
ホシソウイチロウ:『最遊記』孫悟空、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』キラ・ヤマト、『戦国BASARA』真田幸村といった数々の人気キャラクターを演じ、ベテランとしてのキャリアを持ちながら今なお熱狂的なファンを持つ声優。2023 年に声優活動30年目を迎え、10 月にミニアルバム『Restart journey』をリリース。保志総一朗 オフィシャルHP
『Restart journey』
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