YouTubeピアニスト界の超新星登場を
目撃! 熱すぎる「クラシック愛」に
溢れたBudoのリサイタルをレポート~
追加公演も先行発売中

2023年6月18日(日)ストリートピアノ系YouTuberのBudoのソロリサイタル『Budo Classic 2023ALL STARS』が東京・武蔵野スイングホールにて行われた。
Budoは、YouTube急上昇クリエイターに選出されるなど、今最も勢いのあるストリートピアノ系YouTuberのひとり。ショパンの「英雄ポロネーズ」やリスト「ラ・カンパネラ」、ドビュッシーの「月の光」など、人生のどこかで一度は聴いたことあるクラシック音楽の名曲が綺羅星のごとく連ねられた今回のリサイタルは、即日完売。それに伴い、9月16日(土)には浜離宮朝日ホールにて追加公演が開催されることが決定している。
この貴重なコンサートチケットを入手して、6月18日(日)の公演を最速レポートする。

2008年にイギリス・バーミンガム市の街中に置かれたピアノを多くの人々が演奏して盛り上がった『Play Me, I’ m Yours』というプロジェクトから始まったとされるストリートピアノ。日本では、2019年頃からハラミちゃんよみぃなどのピアノ系YouTuberが発信したストリートピアノの演奏動画をきっかけに大きな流行が起きた。そんなストリートピアノ界で今新たに人気を博しているのがBudoだ。
長髪にパジャマ姿など、“怪しい風貌の男”が超絶技巧のクラシック音楽を奏でる動画は数ヶ月で100万回再生超え。「ごきげんよう」から始まる独自の世界観、見た目に反して桐朋学園大学卒業という確かなピアノの実力が人気の理由のひとつだろう。
長髪をなびかせながら颯爽と登場すると、リサイタルの冒頭から、ショパンの「革命のエチュード」で聴衆は一気にBudoの音楽世界へと引き込まれる。弾き終えると万雷の拍手の中、一年前のコンサートが満員にできなかったのに、今日が満員になっていることへの感謝の言葉を語った。
この曲実はラブソングなんですよと言いながら、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「月光」を第3楽章からいきなり弾き始める。ベートーヴェンのピアノ音楽の中でももっとも熱量が高い、このソナタの第3楽章だけを取り出して弾くというクラシックの常識を打ち破る「熱い展開」にますます会場のボルテージは高まった。「いいねぇ〜、いい曲ですよね!ポップスに負けてないよね!はぁ〜!いいですね!あぁ〜、いいですよね!」と、今弾いた音楽への愛に溢れた呟きがBudoのMCマイクから聞こえてくる。
YouTube配信で見せるままの、自然体のBudoの姿に親しみが沸くと同時に、その言葉に共感させられる。この曲だけではない、どの曲もひとつひとつ終わるたびに、音楽への愛と共感を滲ませながら、MCの言葉を紡いでいく。そのことが昔の音楽を聴いているという感覚を忘れさせ、いまこの場で作られた新しいポップ・ソングのようにクラシック音楽へと誘ってくれる。ときに尾崎豊のラブソングへの愛を語りながら、そんな気分のままベートーヴェンの「月光」やシューマン=リストの「献呈」といったピアノ音楽がラブソングを聴く気分で聴かせてもらえたのだ。あっという間に前半最後のリスト「超絶技巧練習曲第10番」を聴き終えていた。この曲は体格のいい彼の力強いプレイが活きる楽曲で、他の曲とは違う魅力を見せてもらえた。
後半は、プログラムに書かれた曲順と違う曲でスタート。ショパンの中でももっともよく弾かれる楽曲「幻想即興曲」だ。プログラムにはドビュッシーの「月の光」とある。一瞬間違えて始めたのかな?と思いきや、曲が終わると語り始める。「いやーこれもほんといい曲ですね~なんとなくこの曲から始めたくなったんで」そんな風に場の空気を感じながら、順番を変えて演奏するのもクラシックのピアノリサイタルとしては型破りだ。ロックミュージシャンの空気すら感じさせてくれる。
「ラ・カンパネラ」そしてドビュッシーの「月の光」とピアノ音楽の中でももっとも多くの人に知られる楽曲が立て続けに演奏されていく。このことも型破りだ。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「熱情」も、第3楽章からいきなり弾き始める。ますます会場のボルテージは高まり、ショパンの「英雄ポロネーズ」で頂点に達した。気がつくと、万雷の拍手の中、Budoがステージ袖へ去っていく後姿をぼうっと眺めていた。本当に文字通りあっという間の1時間半であった。
これほどまでにクラシックのピアノ音楽を楽しく聴かせてくれる演奏家が今までいただろうか。YouTubeピアニスト界の超新星が登場する瞬間を目撃したような気持ちにさせてもらえた。熱すぎる「クラシック愛」に溢れたBudoの演奏は、その場に居合わせたすべての聴衆の心を鷲掴みにしたのではないだろうか。曲タイトルについては書くことはしないが、エンターテイナーのBudoは当然のようにアンコールに応えて、ピアノへ向かい続けてくれた。今回決定となったアンコール公演でも、きっと「熱いクラシック」が体験できるはずだ。

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