L→R 山葵(Dr)、亜沙(Ba)、蜷川べに(津軽三味線)、神永大輔(尺八)、鈴華ゆう子(Vo)、町屋(Gu&Vo)、いぶくろ聖志(箏)、黒流(和太鼓)

L→R 山葵(Dr)、亜沙(Ba)、蜷川べに(津軽三味線)、神永大輔(尺八)、鈴華ゆう子(Vo)、町屋(Gu&Vo)、いぶくろ聖志(箏)、黒流(和太鼓)

【和楽器バンド インタビュー】
『ボカロ三昧』の続編は、
いつかやりたい企画のひとつだった

近年のトレンドに合わせていかないと、
お客さんに楽しんでもらえない

『ボカロ三昧2』は上質な仕上がりの曲が揃っていますので、一曲一曲じっくりと聴いてほしいと思いますね。続いて、本作のプレイ面について話しましょう。

鈴華
私はいろんな歌を歌ってきましたが今回のラインナップはめちゃくちゃ難しかったので、録るまでの間に今までにないくらい練習しました。それに、ボーカロイドの曲は高音、高速、跳躍というメロディーで出来上がっているので、ヴォーカリストというよりはキーボーディストみたいな感覚で歌いましたね。歌う時は目の前に鍵盤を置いて、毎回メロディーを確認して、全ての音に対して正確な音をハメながら歌っていきました。それに、もともといっぱい使ってきた喉の場所とは違うところの開拓というのも今回はすごくしていて、避けていた音域の声質と向き合いました。基本的に裏声で歌っていた高音域をメインとして使うとなった時に、どうやって表現すると一番素敵に聴こえるかというのをすごく研究しましたね。

そうなると、全体的に限界に近いところで歌われているわけですが、そんなことはまったく感じませんでした。それどころか、色気や華やかさがありますよね。

鈴華
声に色気を感じるということは、たくさんの方がおっしゃってくれています。色気を出そうとしたわけではなくて、年齢を重ねることで大人の女性になっていくし、声質も変わっていくと思うんですね。その中で高音域の声を自分のものにして自分らしく歌うとなった時に、色気を感じていただけるものになっていったという印象です。あとは、それぞれの楽曲の世界観が歌詞も含めてはっきりしていて、そのつどキャラクターを変える必要があるので、演じているような気分になりましたね。

「ベノム」の2番の男性っぽい歌い方や「Fire◎Flower」のローヴォイスなど、本当に表情が豊かです。そして、「ド屑」のキュートさと怖さを見事に表現している歌に圧倒されました。

鈴華
怖さを感じてもらえました?(笑) これは難しかったですね。原曲へのリスペクトがあって、私もすごく好きな曲なので、私が歌うよりももっといい人がいると思わせてはいけないと思って、“どうしよう、どうしよう…”というところから始まりました。原曲を聴いたり、『歌ってみた』動画を聴いたりするとみなさん素晴らしいので、そこをどうしようかと悩んだんですけれども、打ち合わせをした時に和風にしようというアイディアが出て、そこでだいぶイメージが湧いてきまして。“よし、人ができないことをやろう!”と思って、まず若い子になりきって、生涯一度も言ったことがない“従え”という言葉を自分の中に降臨させて、本当にそういう気持ちになって歌ったという(笑)。そうやって、一曲の中で二重人格を表現した感じにしてみました。
聖志
僕は和楽器バンドというバンドで箏が取るべきアプローチは、“いかに余計なことをするか”だと思っているんです。今回も町屋さんがいろいろ箏に役割を振ってくれましたけど、その割振り以上に原曲に入っていたと錯覚するようなフレーズをいかに入れるかということを意識しました。原曲を知っている人が聴いた時に、何の違和感もなく箏のフレーズが流れていくような新しいフレーズを入れるということをいろいろやっています。それプラス、箏の音の響きのよさを出さないほうがいいフレーズと「紅一葉」みたいに箏の響きの良さで勝負しないといけないフレーズの弾き分けを意識しました。「ベノム」はシンセっぽいイメージで弾いているところと、すごく生楽器っぽく弾いているところを一曲の中で分けたりしています。そういう音色の振り幅を活かして楽曲の色を深めるアプローチもしましたね。

あえて箏っぽさを消すという発想はすごいですし、プレイ的にも箏らしからぬプレイが多いですね。さらに、「ベノム」では箏のソロを聴くことができますし。

聖志
このソロも箏っぽくないフレーズなので、どういうニュアンスにしようかと考えました。結構練習しましたね。転調しているセクション…というか、今回は転調している曲が多いんですけど、箏は転調がめっちゃ天敵なんですよ。だから、僕の譜面は転調していない状態になっていて、全部臨時記号で対応しているんです。そうしないと、自分の楽器と書いてある譜面が乖離してしまって読めなくなってしまうので。だから、頭の中では転調していないことにして演奏するという(笑)。僕が演奏する時の唯一絶対のモットーが、“一曲だけなら一面で演奏する”ということなんです。物理的にできないことをやるのは今の時代は簡単だけど、それはカッコ良くないと思っているので、どの曲もひとつの楽器で完結できることしかやらない。例えばライヴで弦が一本切れてしまったとしても、その曲だけは成立するという状態にしています。
町屋
ギターに関しては、基本的に使っているギターもアンプも全曲一緒です。ただ、ちょっと特殊な音の作り方をしていて、まずギターの出力をスプリットさせて、ひとつは普通にアンプに行ってクランチトーンが鳴っているんですね。ただ、立ち上がりの速いクランチにしても、やっぱり音が歪んでいる以上アコースティックギターとかの立ち上がりに比べると遅いし、ローの膨らみも少ないじゃないですか。ピアノの左手みたいな役割をするにはそういう音色が必要だと思って、スプリットさせたもう一本はアコースティックシミュレーターをかまして、その2本をミックスしているんです。なので、クランチっぽい音がありつつもクランチよりも立ち上がりの速いアタックとローのふくよかさがプラスされた音になっています。

なるほど。「フォニィ」のギターソロなどがすごく独特な質感の音になっているのは、それが理由なんですね?

町屋
そうです。あと、僕は普段は爪も使って弾くんですけど、今回はタッピングが多すぎて、最近は久々に爪が短いです(笑)。タッピングする時、右手の2本、3本は当たり前に使うので。近年は歪みの量を減らしてタッピングを多用し、鍵盤のようなフレーズをすごく透明感のある感じで演奏するギタースタイルが主流になっていますよね。僕は80年代、90年代のロックギタリストに憧れて、そういうものをコピーしながら育ってきたのですが、ここ4~5年でギターインストの概念は大きく変わったので、自分のギタースタイルをモダンなものにアップデートしていく必要があると思っているんです。それはバンドサウンドもそうで。古いサウンドを若い人は聴かなくなってしまうと思うんですよ。だから、今回ドラムと太鼓はいつもよりもすごく音をデッドに作っていて、なるべく音程感のない感じで、リズムトラックがダンスミュージックに近いようなテイストに作り込みました。そういうふうに近年のトレンドに合わせていかないと、お客さんに楽しんでもらえないから。

和楽器のいるバンドだから伝統的なサウンドでもいいんだと逃げることなく、時代性を取り入れているのはさすがです。さて、『ボカロ三昧2』はカバーアルバムということに限らず、和楽器バンドの最新の魅力が堪能できる注目の一作になりました。同作を携えて行なう全国ツアーも必見ですね。

鈴華
たぶん私たちが他の方々からすごいと言っていただけるのは、作って終わりではないところだと思うんですよね。ライヴで再現していくところが醍醐味で、今回の『ボカロ三昧2』を聴いてくださった方は“これをライヴで再現するんだ!? できるの?”みたいに感じると思うんですよ。実際のところツアーに向けてリハを始めましたけど、大変な曲が多いです(笑)。それでいて、パフォーマンスも必要になってくるので、動きまで作り込むということで、今までにないくらいメンバーそれぞれが苦労していますね。みんなが妥協せずにツアーに臨もうという意識になっていて、今までとはまた違う楽しみがあるライヴになるので、観ておかないときっと後悔すると思います。なので、ぜひ最新の和楽器バンドを味わいに来てほしいです。
聖志
カバーアルバムという特質上、本当にいろんな人の個性が入っていて、そこに僕たち8人の個性も加わっているので、幕の内弁当を超えるような美味しいところ取りで、なおかつこれだけ超絶テクニカルなライヴというのはもうないと思う。なので、今年はぜひ会場でライヴを観てもらって、いろいろなサウンドや僕らが描き出す情景を生で体感してもらえると嬉しいです。
町屋
聖志が言ったようにものすごくテクニカルで、バリエーションに富んでいるというところで、今回は全メンバーがどの過去曲よりも難しいんですよね。でも、これを寝ていても演奏できるくらいになった時、我々の演奏能力はひと皮もふた皮も剥けて、次の次元に行けると思う。またオリジナルの曲をやるとなった時の引出しの数が、ものすごく増えると思うんですよ。だから、今度のツアーはその先の僕らを左右すると言っても過言ではないくらい意味があり、価値がある。そういう意識で臨みます。あとは、我々はショーのようにライヴ中に和楽器だけのセクションとか、洋楽器だけのセクションとかを入れたりするので、そういうものが今回はどこで出てくるのかなというところも楽しんでいただければと思っています。

取材:村上孝之

アルバム『ボカロ三昧2』2022年8月17日発売 UNIVERSAL SIGMA
    • 【真・⼋重流(FC限定)盤】(CD(全3形態=初回限定∞盤+初回限定ボカロ盤+CD Only盤)+ DVD)
    • PDCS-1929
    • ¥16,500(税込)
    • ※受注生産限定盤
    • 【初回限定∞盤】(CD+Blu-ray)
    • UMCK-7172
    • ¥6,600(税込)
    • 【初回限定ボカロ盤】(CD+DVD)
    • UMCK-7173
    • ¥5,500(税込)
    • 【CD Only盤】(2CD)
    • UMCK-1717〜8
    • ¥3,850 (税込)
    • ※Instrumental収録はCD Only盤のみ

ライヴ情報

『和楽器バンド ボカロ三昧2 大演奏会』
8/27(土) 神奈川・相模女子大学グリーンホール
8/28(日) 千葉・千葉県文化会館 大ホール
9/04(日) 愛媛・松山市民会館
9/10(土) 新潟・新潟県民会館 大ホール
9/11(日) 群馬・伊勢崎市文化会館
9/14(水) 東京・中野サンプラザホール
9/18(日) 島根・島根県民会館
9/19(月) 岡山・倉敷市民会館
9/24(土) 石川・本多の森ホール
9/25(日) 長野・ホクト文化ホール 大ホール
10/02(日) 愛知・名古屋国際会議場 センチュリーホール
10/09(日) 岩手・盛岡市民文化ホール 大ホール
10/13(木) 大阪・オリックス劇場
10/16(日) 北海道・カナモトホール (札幌市民ホール)
10/22(土) 福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
10/23(日) 鹿児島・宝山ホール(鹿児島県文化センター)
10/29(土) 静岡・静岡市民文化会館 大ホール
11/12(土) 山口・山口市民会館 大ホール
11/13(日) 広島・広島文化学園HBGホール
11/17(木) 京都・ロームシアター京都 メインホール
11/18(金) 兵庫・神戸国際会館 こくさいホール
11/20(日) 茨城・ザ・ヒロサワ・シティ会館 大ホール
11/25(金) 宮城・トークネットホール仙台(仙台市民会館)

和楽器バンド プロフィール

ワガッキバンド:詩吟、和楽器とロックバンドを融合させた新感覚ロックエンタテインメントバンド。2014年4月にアルバム『ボカロ三昧』でデビュー。15年に発売した2ndアルバム『八奏絵巻』はオリコン週間ランキング初登場1位を獲得し、翌16年にはデビュー1年9カ月にして初の日本武道館公演、北米単独ツアーを開催し、ワールドワイドに展開。さらに19年にはさいたまスーパーアリーナ2デイズ公演を成功させ、よりワールドワイドな活動を本格的に始動させ、世界最大のレコード会社ユニバーサルミュージックとグローバルパートナーシップ契約を締結。今、日本のみならず世界中から注目を集めるアーティストである。和楽器バンド オフィシャルHP

「フォニイ Cover」MV

「エゴロック」[Cover]

「フォニイ」[Cover]

「ボカロ三昧2」全曲クロスフェード

OKMusic編集部

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