【ulma sound junction
インタビュー】
10年後に演奏しても
楽しいと思える曲が理想
ulma sound junctionが
プログレの入門になってくれると嬉しい
ulma sound junctionの展開はメリハリが効いていますし、“カッコ良い!”と感じる瞬間の連続で惹き込まれます。今回の収録曲の中でも長尺で、さらに最後にサビやイントロに戻らない構成の「Idea」には圧倒されました。
田村
“一方通行パターン”ですよね(笑)。インダストリアルとは違う、いわゆる雰囲気モノを目指していた時期もあって、「Idea」はその頃の代表的な曲です。当時、特に構成に関してはちょっと天邪鬼というか、本当に一方通行のものを作ろうと考えていたと思うんですよね。そういう中でできた曲で、今回のEPの中でもサビがどこなのか分かりづらいし、メリハリをつけた展開ではあるけど、サウンド面の構成はわりと平たいという。再録するにあたってサウンド面を変えることもできたけど、そこはあえて平たく仕上げました。
確かに他曲よりもソリッドですが、途中にヴォーカルの独唱パートがありますよね。そういう異質なものを入れ込む辺りにセンスの良さを感じました。
田村
この曲はテンポチェンジとかもあるんですけど、ざっくりと4セクションくらいに分けたイメージがあるんですよ。曲が始まって4~5分くらいでちょっと速くなって、そのあと落ちて、独唱からエモーショナルなパートにつながって、また変わっていくという。一曲の中で世界観がまったく変わってもいいんじゃないかって感覚で作っていたんだと思います、当時は。
山里
独唱になっているところは、その次のフレーズにつなげるための苦肉の策だったと思う。独唱のあとに暗いアルペジオから始まって、階段を上がっていくように明るくなっていくパートがあるじゃないですか。そこにバスッと急につなげるのは不自然なのでいろんなアプローチを考えて、最終的に独唱ということになったと思うんですよね。今となっては大胆だと思いますけど。
苦肉の策とはいえ、ハッとする瞬間になっていて正解だったと思います。もうひとつ、ulma sound junctionはヘヴィネスを基調としつつメロディーが良質ですし、繊細だったり、夢幻的なシーンなどを織り交ぜるうまさも光っています。
田村
歌の話に特化させていただくと、10年以上前の曲もあったりするので、“今の自分だったらこういうメロディーにしたよな”というような曲は、今回あえて入れなかったんですよ。“もうこの選択肢以外はあり得ない!”という曲だけをリテイクしたから、今回の曲のメロディーは普遍的な良さを持っているんじゃないかと思います。あとは、新曲の「Modern Bleed」は音符を飛ばしたというか。僕の場合、最初に歌ってみたメロディーを鍵盤とかでなぞってみると、意外と小さい範囲の動きのことが多いんですよ。最近は使う鍵盤を広げるイメージでメロディーを構築していて、「Modern Bleed」にもそれが活かされていると思います。そういう意味では、やっぱり昔とは違ってきている感じはありますね。
加勢本
うちのバンドは激しいものとエモいものの両方が好きなメンバーが揃っているから、繊細なパートとかも自然と入ってくるんだと思いますね。あとは、ライヴのMCの時に後ろが無音だと寂しいじゃないですか。それで、山里と福里がギターで雰囲気を作るような音を鳴らしてくれたりしていて、その感じを曲に持っていくこともあるんですよ。「Idea」は、まさにそうだった気がしますね。ドラマー的な観点で言うと、繊細なパートがあるとドラムはよりレンジの広いプレイを求められるけど、それを苦に感じることはないです。曲がいい感じになればと思うし、“いい感じだなぁ”と思いながら叩いています(笑)。
山里
僕はエモーショナルなギターを弾くのが好きで、むしろ速弾きとかは大嫌いなんです。疲れちゃうから(笑)。テクニックを見せつけるよりも世界を作ったり、情景をイメージさせるようなギターでありたいと思っていて、それもうちのバンドのエモさにつながっている気はしますね。
福里
なんて言うんだろう? “ダサカッコ良い”ってあるじゃないですか。うちのバンドはそういうあえてベタな瞬間がわりとあって、僕はそういう時にエモさを感じます(笑)。
いえいえ。ダサさは感じませんし、ベタなものは魅力があるから残っていますよね。さて、“プログレッシブロック”というと難解な音楽をイメージする方もいるかと思いますが、『Reignition』を聴くとulma sound junctionはカッコ良くて、ドラマチックで、かつ抒情的なバンドだということが分かりますね。
田村
ありがとうございます。日本であからさまにプログレッシブと謳っているバンドはそこまでいないと思うので、ulma sound junctionがプログレの入門になってくれると嬉しいっていうのはなんとなく考えています。なので、変な先入観を持ったりしないで、ぜひ一度聴いてみてほしいですね。
同感です。『Reignition』のリリースに加えて、4月16日にshibuya CYCLONEで行なうレコ発ワンマンライヴも楽しみです。
田村
今回shibuya CYCLONEという場所を選んだのは、我々のすごくお世話になったライヴハウスなんですね。メジャーデビューしたからって僕らの環境が大きく変わったわけではないので、僕らを応援してくれるファンのみなさんに今までと変わらない親近感を感じてほしいと思っているので、shibuya CYCLONEでやらせていただくことにしました。ライヴの内容に関しては、昔から僕らを知ってくれている人には変わらないと同時に新しさを感じてもらえて、『Reignition』で僕らを知ってくれた人にはulma sound junctionの魅力を見せつけるライヴにしたいと思っています。
福里
4月のライヴは、もういつもどおりにやればいいと思っています。
山里
いつも以上?(笑)
福里
あっ、そう!(笑)
山里
いつもどおりってなると、シュンはライヴでギターを弾かない時は、本当に弾かないんですよ。横を見ると万歳していたりして(笑)。そういうところも楽しんでもらえればと思いますね(笑)。あとは、演奏はいつもどおりだけど、そこにプラスαでメジャーっぽいちょっとした演出とかもあれば、お客さんにも喜んでもらえるかなと。別に大がかかりなことではなくて、本当に何でもいいので、何かやりたいというのはありますね。
加勢本
メジャーになって初めてのライヴなので、山里も言ったように何か工夫ができるといいですね。いつもどおりにやることも大事ですけど、ちょっと特別感のあるライヴにしたい。あとは、うちのメンバーはみんなワンマンが好きなんですよ。ワンマンは自分たちのペースでライヴができるし、自分たちが観せたいものを全部観せることができるから。そういう意味でも4月のライヴはすごく楽しみだし、来てくれる人も楽しみにしていてほしいです。
取材:村上孝之
「Modern Bleed」MV
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