【宇多田ヒカル リコメンド】
クラブミュージックに接近しつつ
開かれたモードを感じさせるアルバム
エレクトロなテイストが強まり
聴き手の快感は最高潮に達する
8曲目の「Find Love」からは、よりエレクトロなテイストに。オーガニックで優雅な耳当たりはそのままに、ハウスっぽいミニマルなリズムの中、音の粒がジワジワと染みわたっていくさまが心地良い。全英語詞の楽曲をこうしてアルバムに混ぜ、またひとつ自分にかけた縛りを外した。スクリレックスとの共作による「Face My Fears (Japanese Version) 」では、彼のキレキレのドロップとフューチャーベース調のサウンドが炸裂。そして、ラストの約12分に及ぶ大曲「Somewhere Near Marseilles -マルセイユ辺り-」で聴き手の快感は最高潮に達する。こちらもフローティング・ポインツとの共同プロデュースなのだが、タイトルどおりのバレアリックな雰囲気といい、クラブで流せるような洒脱でダンサブルなアレンジといい、歌メロのカットアップ感やループ具合といい、完璧なまでに洗練されていて、ずっと飽きることなく聴いていられるトラックの強度に舌を巻くばかり。12分の曲を続けてもう一回再生したくなる経験なんて、昨今は特にそうそうない。先鋭的なクラブミュージックに接近しつつ、こんなふうに胸を躍らせてくれる。それが『BADモード』ならではの旨みなのだと思う。
ボーナストラックには、2007年発表の楽曲をリメイクした「Beautiful World (Da Capo Version)」、「Find Love」を日本語詞で歌った「キレイな人」、さらに英語バージョンおよびA.G.クックがリミックスした「Face My Fears」も収録。改めて全曲を見渡すと、今作はフローティング・ポインツやA.G.クック、スクリレックスはじめ、過去にもタッグを組んできた小袋成彬らが共同プロデューサーとして参加し、配信スタジオライヴのバンドメンバーを含む多くのミュージシャンも演奏に参加している。2000年代は制作における全ての工程をほぼひとりでコントロールしていた彼女が、心を開いてさまざまなコラボに挑み、時にはアイディアをもらうなど、信頼を持って作業を任せたことも大きな注目点と言えよう。そんな意欲的な作品がJ-POPシーンに与えた衝撃は計り知れない。
新アートワークで提示したラフなスウェットの装い、初めて引きの画で全身を見せたジャケット写真など、ビジュアル面からも開かれたモードを感じさせる本作。その上で、コロナ禍の自宅隔離にフィットするデザインにもなっているのが宇多田ヒカルらしい。元来アウトサイダー感の強かった彼女が、活動休止~ロンドンでの暮らしを経て、人間らしさを取り戻したからこそ生み出せた『BADモード』は、本人が“今までで一番好きなアルバムかも”とツイートしていたとおりの最高傑作で、純度の高い愛の歌が並ぶ、素直で勇敢なアルバムである。
「Face My Fears(Japanese Version)」で《私の知らない私に/早く会いたい》と歌っていた宇多田ヒカルだが、『BADモード』を通して新たな自分に近づけた感覚も少なからずあるのではないだろうか。これまで『20代はイケイケ!』『30代はほどほど。』というネットイベントを行なってきた中、40代を迎える来年以降はどんな姿を見せてくれるのかも楽しみになった。できれば、今みたいに“のびのび”と活動していてほしい。
ボーナストラックには、2007年発表の楽曲をリメイクした「Beautiful World (Da Capo Version)」、「Find Love」を日本語詞で歌った「キレイな人」、さらに英語バージョンおよびA.G.クックがリミックスした「Face My Fears」も収録。改めて全曲を見渡すと、今作はフローティング・ポインツやA.G.クック、スクリレックスはじめ、過去にもタッグを組んできた小袋成彬らが共同プロデューサーとして参加し、配信スタジオライヴのバンドメンバーを含む多くのミュージシャンも演奏に参加している。2000年代は制作における全ての工程をほぼひとりでコントロールしていた彼女が、心を開いてさまざまなコラボに挑み、時にはアイディアをもらうなど、信頼を持って作業を任せたことも大きな注目点と言えよう。そんな意欲的な作品がJ-POPシーンに与えた衝撃は計り知れない。
新アートワークで提示したラフなスウェットの装い、初めて引きの画で全身を見せたジャケット写真など、ビジュアル面からも開かれたモードを感じさせる本作。その上で、コロナ禍の自宅隔離にフィットするデザインにもなっているのが宇多田ヒカルらしい。元来アウトサイダー感の強かった彼女が、活動休止~ロンドンでの暮らしを経て、人間らしさを取り戻したからこそ生み出せた『BADモード』は、本人が“今までで一番好きなアルバムかも”とツイートしていたとおりの最高傑作で、純度の高い愛の歌が並ぶ、素直で勇敢なアルバムである。
「Face My Fears(Japanese Version)」で《私の知らない私に/早く会いたい》と歌っていた宇多田ヒカルだが、『BADモード』を通して新たな自分に近づけた感覚も少なからずあるのではないだろうか。これまで『20代はイケイケ!』『30代はほどほど。』というネットイベントを行なってきた中、40代を迎える来年以降はどんな姿を見せてくれるのかも楽しみになった。できれば、今みたいに“のびのび”と活動していてほしい。
文:田山雄士
「BADモード」MV
「君に夢中」MV
「PINK BLOOD」MV
「One Last Kiss」MV
「Time」MV
「Face My Fears (English Version)」
Live ver.
「Find Love」Live ver.
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