【Wienners インタビュー】
今までの自分だったら勇気がなくて
できなかったようなことができた
四者四様の世界観がバッと集まった、
いろんなところに旅してるような曲
その意味でもこのバンドの十八番かなと。で、そこから話を新曲「FACTION」へ移したいと思うんですが、これがまた素晴らしくて! まずマイナーなメロディーに驚いたんですけど、言い方は悪いですが、こういうメロを狙って作った感じですか?
玉屋2060%
めちゃくちゃ狙いましたね、ほんとに。アニメのオープニングテーマ曲なんで、Wiennersの曲ではあるんですけど、アニメありきの当て書きで。そうなった時、俺、完全マイナーな曲って自発的には絶対に作らないと思う…なんか恥ずかしいんですよ、カッコつけているみたいで。自分の性に合っていない感じがあって、あんまり作ってこなかったんですけど、今回は『デジモンゴーストゲーム』の担当者さんと“こういう曲がいい”という会議をして、ゴースト感が欲しいという話だったんで、これはもう全編マイナーだろうと。“洋風なマイナー”と言うんですかね? それを完全解禁しようと思って作りました。
これまでのWiennersにはマイナーなメロディーもなくはなかったと思いますが、例えば転調してサビは開放的に突き抜けたりして、ここまで完全にマイナーではなかったと思います。だから、相当に新鮮ですね。
玉屋2060%
そうですね。今までのマイナー感って和のマイナー感であったりとか、どちらかと言うとアメリカ寄りだったんですけど、今回はヨーロッパ寄りのマイナー感を意識していたので、そこは本当に初めてだったし。得てして今までやっていなかったことをやると、意外と良かったりするんですよね。
“ブランニュー・Wienners”と言っていいナンバーとなりましたね。
∴560∵
はい。イントロとかサビ前とか、要所要所に入るフレーズがまさに西洋のゴシック的なマイナーな感じ、ホラーっぽい感じで、新鮮さも確かにあるのかもしれないんですけど、単純にめちゃくちゃいいなと思っていて。『デジモンゴーストゲーム』という作品をテーマに作り始めたことで、それぞれがそこを思い描きながら…シナリオも読ませてもらったし、キャラクターの画もあって目指したいものがはっきりとあったので、そういう点でもすごく楽しかったですね。目指したいカッコ良さが明確にあった上でやれたから、そういう意味でも手応えはあるし。僕は個人的にアニメが大好きなんで、今回こういう話があっただけでも僕の人生でかなり大きな出来事というか、今もずっとピークですね(笑)。自分自身が壊れないか心配なくらいに楽しみながらできているんで、「FACTION」はすごく大事な曲になります。
KOZO
『デジモンゴーストゲーム』の曲を作ることが決まった段階で、こういうアプローチになったのは面白いと思いましたね。何かのために曲を書くことになった時に、それを楽しめたことが良かったと思います。守りに入るよりも、その枠の中で“こんなこともやっていなかったから、こういうアプローチをやってみよう”とか“こういうこともできるじゃん!”みたいなワクワク感が作っている時にあったのが一番印象的でしたし、“あっ、うちらもこういうことができるんだ!?”っていうか、そういう自信にもなった感じですね。
クライアントの意見を取り入れるとなると、それこそ“サビのメロディーを変えてほしい”なんて事態が起こらないとも限らないのではないかと思います。でも、楽しみながらやれたというのはすごく良かったですね。
玉屋2060%
ゲームみたいな感覚でした。KOZOくんが言ったように“こういうものを作ってください”と言われたことをいいことに、今までやりたくてもできなかったことを思いっきりやっちゃうみたいな。
バンドの幅を広げることができたということですね。
アサミサエさんの「FACTION」の第一印象も教えてください。
アサミサエ
私の第一印象は“怖い感じなのができたなぁ”でした(笑)。でも、今までにない感じの曲だし、ライヴでやるのが楽しみだなって。アニメのテーマ曲だけどWiennersの良さは変わらずにあるので、Wiennersを知らない人も楽しめるし、もともと知っている人も楽しんでもらえる楽曲だと思っています。
今アサミサエさんがおっしゃられたことは私も感じたところで。最初はメロディーに対して“おや?”という印象を持つものの、全体の聴き応えは全然Wiennersなんですよね。
アサミサエ
聴き終えると“これはWiennersの曲だな”と。すごくいい曲になったと思います。
個人的に「FACTION」で褒め称えたい点は、この楽曲の不思議なところだと思っていまして。“今どこ走ってんだ?”みたいな感じがあるんですよね。
玉屋2060%
はいはい(笑)。そこはまさに狙ったところでもあって、“「FACTION」にようこそ!”という感じですね。
《迷宮はラビリンス》という歌詞もありますし、そういう感じのものを表現しようとしたのでしょうか?
玉屋2060%
これもタイアップものだからこそできたというところが大きくて。この曲をWienners主体…いや、俺主体で作ろうとしていたら、もっとずっとテンションの高い感じの曲になっていたと思うんですよ。だけど、今回は抜くところは思いっきり抜いたんです。それは場面転換を大袈裟にしたいというリクエストがあったからで、今までだったらテンションが落ちるのは怖いからそこまで落とさないんだけど、そういうふうにしてほしいと言われてるから“面白くするには思いっきり落としたほうがいい”みたいな感じで落とせたんです。俺、日頃からメンバーに“もっと音を抜きなさいよ”って言われてるんで(苦笑)。今までの自分だったら勇気がなくてできなかったようなことも、こういう機会だったからやれたと思いますね。
そうですか。個人的に思ったのは、サビ頭で始まったと思いきや、それがサビメロではないところとか、サビ終わりでAメロに戻ると思ったらAとは別のメロディーが流れるとか、展開が読めなくて。そこも新鮮で面白かったです。
玉屋2060%
そこら辺もすごく考えましたね。サビ頭でも良かったんですけど、サビっぽい感じの始まり方で、“えっ、まだいいメロディーが出てくるの?”みたいな感じにしたかったんで、そこはちょっと計算したというか。“あっ、こんな感じね”と油断させておいてから、どんどんパンチしていくという汚いやり方なんですけど(笑)。
そこに迷宮っぽさがあると思います(笑)。あと、Bメロで最初はずれているアサミサエさんの歌とドラムのリズムが次第に合っていく感じも、とても不思議な感じがありますね。
KOZO
“合わせすぎるのも違うし、外しすぎるのもなぁ”って悩んだ結果、ああいうパターンになったんですけど、それによってBメロの雰囲気が変わったので…そこに気づいていただいてありがとうございます!
アサミサエさんは歌ってみていかがでしたか? 先ほど“ライヴでの貫禄が増しましたね”と申し上げましたが、ライヴを積み重ねてきたことが自信にもつながっていますかね?
アサミサエ
段々とWiennersの中での自分というのが確立されて、そこからまたいろんな引き出しを作っては試して…みたいなところがあるので、そこで思いっきり楽しんでやってますね。楽しんでやることが自信につながっているのかなと自分でも思います。
それがしっかりと音源に落とし込まれている印象は強いです。
∴560∵さん、これだけ展開が複雑だとベースもプレイが忙しいと思うんですが。
∴560∵
でも、僕自身はそこまでの印象はなくて。Wiennersにはいろんな曲があって、「GOD SAVE THE MUSIC」もそうでしたけど、展開が目まぐるしく、結構いろんなことをする曲が多いんですよ。ずっとそうなんで、それをやっていく中で、そういう曲を作りたいという気持ちと、ライヴでパフォーマンスする上での伝わりやすさ、自分のプレイのしやすさというものの摺り合せは、ずっとライヴ活動をしていく中で並行してやっていて。それを作っていく曲にも反映させて、ブラッシュアップもずっとしていたので…確かに「FACTION」は最近の曲の中でもギミックの多い凝ったアレンジという印象は聴いて取れると思うんですけど、作る上では“もっと凝ろう”としちゃうと良くないというか。やっぱりパンクロックなライヴをするバンドというところは絶対にあるんで、“どういうアレンジをしたらそこにつながるのか?”という作り方ができているってことだと思います。