【ネクライトーキー インタビュー】
ネクライトーキーをやっていくうちに
“これがバンドだ”と思った
今まで主流だった楽曲のイメージをPCで作る方法ではなく、朝日(Gu)のギターと鼻歌から作ることが多かったという3rdアルバム『FREAK』。そんな楽曲制作の原点に立ち返って完成させた本作は、よりアグレッシブなサウンドに振りきりつつ、これまでのバンドの歩みも感じられる一枚となっている。
ポップミュージックで
暴れ回る人がもっといてもいいのに
昨年1月にリリースされたメジャーデビューアルバムのタイトルは“ZOO!!”でしたが、今作『FREAK』のジャケットには動物園にもいないような生き物が描かれていますね。
もっさ
こいつが頭の中に出てきたんです(笑)。“FREAK”という言葉より、ネクライトーキーとして生まれたというか。まず、バンドをひとつのキャラクターみたいにしたくて、もともとネクライトーキーのロゴに目がデザインされているので、ひとつ目の子がいいかなと。バンドってひとつの核があって、それにペタペタといろんなものがくっついて、まったく知らないかたちになっていくと思うんです。ネクライトーキーも変な人たちが集まってできたものだから、キメラみたいなものを想像して産まれ落ちました。
今のネクライトーキーは5人の気持ちが重なって、ひとつの生物のようなバンドになっている?
もっさ
そうですね。個々の意思がぶつかり合って固まっている、ちょっと歪なものみたいな。そういう得体の知れない気持ちをジャケットにしたかったんです。
今作の楽曲にも少し似たような印象がありました。ネクライトーキーが今まで積み重ねてきたものを感じられる音楽になっていて、個々のパートの音が際立った歪さもあります。新鮮に感じた部分もたくさんあったのですが、ご自身ではありますか?
藤田
今作は朝日のリフから作ることが多かったんです。バンド人生も長いので、以前はそういう作り方をすることのほうが多かったんですけど、ネクライトーキーではあまりなかったので、みんなで“いっせーの!”で鳴らして作り上げていくのが新鮮でしたね。
中村
前とは違ったコード進行が増えてると思いました。実際に鍵盤で弾く時に“普段ならこんな難しい音弾かないから珍しいな”って感じることもあって。
タケイ
「気になっていく」とか、「続・かえるくんの冒険」とか、今までになかったアレンジはありますね。
朝日
「続・かえるくんの冒険」のエモいところでちゃんとマイナーコードにいくのは、今までだったら王道すぎて避けてましたから(笑)。
もっさ
普通っちゃ普通だけど、ネクライトーキーだから新鮮に感じたことはありました。
楽曲の作り方が変わったのはどうしてですか?
朝日
ネクライトーキーを始めてからはPCを開いて作曲している時間が長かったんですけど、今回はそれをやめて、改めて和声とメロディーで曲を作ろうと思ったんです。だから、新鮮というよりか、遡ってるんですよね。ネクライトーキーで曲を作る時にギターと鼻歌だけで始めることをすっ飛ばしたので、逆にそこに戻り、やってこなかったことをちゃんとやろうと。
タケイ
今までは僕以外のメンバーが関西に住んでいて、コンスタントに集まれる環境ではなかったのもあり、朝日がPCで作った曲をもとにするのはやりやすさもありました。でも、仕方なくそうしていた部分もあるのかな?
朝日
1stアルバム『ONE!』(2018年12月発表)では、あえて“俺はこういうバンドがいい”っていうのをはっきり示すためにやってたところもありますね。そのあと、ミニアルバム『MEMORIES』(2019年7月発表)では僕が石風呂名義で作った曲をカバーするという、出来上がっている曲をみんなで崩していく作業をやって、それがあったのちに『ZOO!!』で一緒に編曲をやっていくことが増えていきました。それでも最初のイメージをPCで作ることがあったんですけど、『FREAK』では俺のギターと鼻歌をスタジオで聴いてもらって作ってます。
昨今はコロナ禍の影響もあってPCやネットを使ってアルバムを作るアーティストも多いですが、『FREAK』はコロナ禍以前からのバンドの流れで、逆にアナログ化していったと。以前から“朝日さんは石風呂の曲を誰かに歌ってほしかったのかな?”と感じたり、ネクライトーキーの結成時は“朝日さんのバンド”というイメージも強かったので、今のお話はすごく大きな変化に思えます。
朝日
誰かに歌ってもらいたいとは思っていました。石風呂としてひとりで作っていた曲を自分で歌う気持ちにはなれなくて、単純に自分が持ってない声が欲しいというのが始まりですね。それからもっさの声を知って、ライヴを観てカッコ良いバンドマンだなと思って…きっかけこそ声だったんですけど、ネクライトーキーをやっていくうちに、みんな面白いくらいに言うことを聞かないけど、“これがバンドだ”って思ったんですよね。
メンバー同士の信頼感が増したんですか?
朝日
信頼というよりかは、もう全部壊してもいいから手綱を手放そうと。
あははは。放し飼いはちょっと近いかもしれませんね(笑)。
朝日
“もう俺の知らないところで暴れてもらおう”みたいな感じです。そこでちゃんとやり合うのがバンドなんだって思えたし、すでにネクライトーキーがそうなっていて、“こういうバンドが一番好きだ”って気づきました。結成時は中心にいたのが自分なので、最初は“こういうヴォーカリストがいて、こういうアレンジで、こんなライヴをして〜”って細かく考えてたんですけど、今は何も考えてないです(笑)。メンバーが面白くて、みんな俺の知らない音楽をやってるから、その中でギターを弾けるだけで楽しい。メンバーに負けないくらい面白い曲を作って、面白いギターを弾きたいです。
すごく素敵な話ですね…
タケイ
僕はある意味の諦めかと思いましたけど(笑)。
朝日
いやいや、今は人格の話じゃなくてフレーズの話やねん。タケちゃんは壊す隙間を見つけてぶち壊しにいくから。他のメンバーはそうじゃなくて、“えっ、そこ!?”みたいなとこで暴れ回る人たちがいっぱいいて(笑)。タケちゃんはライヴではたまにおかしくなるけど、基本的には壊しどころを見計らってやってるから、バンドのバランスも保てるのかなと。
タケイ
バンドってそこが面白くて、10本打ったうちの8本がダメでも、2本がめっちゃ面白かったら大成功っていう気持ちでみんなやってるんじゃないかな?
朝日
でも、そうじゃないバンドって意外に多い気がするんですよ。例えば、曲を書いてる人ががっつり作り込んで、それをメンバーがかたちにしていくバンドもいますし、同期音源があるからライヴで羽目を外すことがないとか。バンドでは“俺はこれが面白いと思ってます!”っていうのを伝えたいし、俺じゃ手に負えない、予測もつかないバンドが一番面白いと思うんです。ポップミュージックで暴れ回る人がもっといてもいいのにって思うから、それをやっていきたいですね。