「SSSS.DYNAZENON」キービジュアル

「SSSS.DYNAZENON」キービジュアル

雨宮哲監督の「SSSS.GRIDMAN」制作ス
タイルと“白飯”からはじまった「S
SSS.DYNAZENON」

「SSSS.DYNAZENON」キービジュアル(c) 円谷プロ (c) 2021 TRIGGER・雨宮哲/「DYNAZENON」製作委員会 4月2日から放送がスタートする「SSSS.DYNAZENON(ダイナゼノン)」は、円谷プロとTRIGGERがおくる新作テレビシリーズ。大きな反響をよんだ「SSSS.GRIDMAN」(2018)と主要なスタッフを同じくする同作を、雨宮哲監督とTRIGGERはどのようにつくっていったのか。制作スタイルが近しい「SSSS.GRIDMAN」のメイキングを雨宮監督に振り返ってもらいながら、「SSSS.DYNAZENON」での新たなチャレンジについて聞いた。(取材・構成:五所光太郎/アニメハック編集部)
※4月12日追記。3ページ目に「SSSS.DYNAZENON」の具体的な話を伺ったパートを追加しました。
■「SSSS.GRIDMAN」で原作への入り口を増やしたかった
――取材前に「SSSS.DYNAZENON」を2話まで拝見しました。すごく面白かったです。
雨宮:ありがとうございます。
――私も一般の視聴者同様に事前情報がほとんどない状態で「SSSS.DYNAZENON」を拝見しましたので、まずは「SSSS.GRIDMAN」のメイキングを振り返っていただき、「SSSS.DYNAZENON」の具体的な話はオンエア後に掲載する想定でうかがわせてください。
雨宮:よろしくお願いします。
――「SSSS.GRIDMAN」を監督されるさい、最初どんなふうにつくろうと考えられていたのでしょう。その前に「アニメ(ーター)見本市」で短編アニメ「電光超人グリッドマン boys invent great hero」(2015)の監督をされていましたよね。
雨宮:「見本市」と「SSSS.GRIDMAN」は企画が別で、具体的なことまではちょっと覚えていないのですが、作画にも参加していた「見本市」とは違って、「SSSS.GRIDMAN」では僕自身があまり作画をしないということは決めていました。僕はアニメーター出身なので、やはり絵を描きたいところがあるのですが、絵を描かずにディレクションすることを主眼においていた気がします。
――「SSSS.GRIDMAN」では、思春期のキャラクター同士のナチュラルな会話が魅力的でした。実際に学校へ取材にも行かれたそうですが、アクションだけでなくそうしたところにも力をいれようと考えていたのでしょうか。
雨宮:学校施設の取材はしましたが、生徒さんたちへの取材は基本していません。なんというか、人間の部分は取材してもあまり参考にならない気がして、特別に会話を生々しくしようとまでは考えていなかったです。30分の深夜アニメ番組というのが企画の下地にありましたから、むしろ商売とはちょっと遠い部分にある気がして、そちらに振りすぎてもよくないだろうなと。ただキャラクターについて、グリッドマンや怪獣といったケレン味みたいなものから遠いほうがいいかなとは思っていました。ケレン味から遠いところからはじめて、それが同じ画面に映るのがよいかなと。
――私自身、「電光超人グリッドマン」のことを知らないまま見て、それでも見ていてすごく面白かったのですが――。
雨宮:ありがとうございます。
――それでも、「きっとここは『電光超人グリッドマン』を知っている人が見ると、より面白いんだろうな」ということを想像しながら見ていました。
雨宮:まずは「電光超人グリッドマン」を知らない初見のお客さんを大事にしようと思っていました。入り口を増やしたかったので、「SSSS.GRIDMAN」を見た人が「電光超人グリッドマン」に興味をもってくれるとうれしいなという話を企画段階からしていました。
「SSSS.GRIDMAN」キービジュアル(c) 円谷プロ (c) 2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会■着ぐるみやスーツを“モノ”として見せるための3DCG
――「SSSS.DYNAZENON」にも関わる話ですが、オンエア当時「SSSS.GRIDMAN」で意外だったのは、アクション部分の多くがグラフィニカ制作による3DCGだったことでした。「プロメア」のときも同じことを思いましたが、手描きのアクション作画が特徴という印象があったTRIGGERが、そうした部分を外部に任せるのはなぜだろうと思いながら実際に見たら見事にハマっていました。どういうところから、3DCGにする話がでてきたのでしょうか。
雨宮:僕は特撮のなかで、物理的に存在する“実際にあるモノ”が特に好きなんです。形の変わらない着ぐるみやスーツなどの“モノ”は、むしろ手描きでは不得意な部分なので、特撮っぽさを考えたうえでの選択だったのかなと思います。3DCGでモノが動く質感がいちばんほしかったといいますか。手描きにするとキャラクターになりすぎてしまうので、3DCGという“モノ”に見えたらうれしいなと思ったんです。どこからどう見てもいつも同じ顔をしているというのが、3DCGの何よりの強みですから。
――なるほど。
雨宮:絵描きが怪獣を絵として描くと、キャラクターの表情が強めにでてしまう傾向にあるのが前々から気になっていたんです。もちろん怪獣もキャラクターではあるのですが、物語の設定上もビジュアル的にも“モノ”として見せたくて、それを手描きで表現しようとすると、どうしてもプラスの表情がついてしまうんですよね。
 特撮に実写パートと特撮パートがあるように、アニメーションでもキャラクターは手描き、特撮パートは3DCGというように違う描き方をするのは特撮に印象が近いのではないかという話も企画初期からでていたと記憶しています。
――3DCGを担当したグラフィニカさんには、怪獣デザインにもお名前がある板野一郎さんがアドバイザーとして入られていますよね。板野さんは「ULTRAMAN」など特撮映画の3DCGにも関わられていて、そうした流れも関係あるのかなと思っていました。
雨宮:板野さんに怪獣デザインは別途お願いしていて、グラフィニカさんに3DCGをお願いしたら結果として板野さんが3DCG部分にも関わってくださったと聞きました。お願いするときはまったくそういうつもりはなくて、ただ運がよかったという。すごくうれしかったですね。
――3DCGの特撮パートを制作するにあたって、グラフィニカさんとどのようなやりとりをされたのでしょう。
雨宮:基本的に僕は3DCGに関して素人なので、何かディレクションをしたという感じはありません。3Dスタッフのレベルが高すぎて、とにかく言ってみたことを全部やってくれたので。特撮パートのすごさはグラフィニカさんの力です。すごいものをつくろうという意気込みで取り組んでくださって、最初から「すごい!」と思えるものがあがってきましたから。僕はほとんど仕事をしていないくらいの印象です。
――初期の段階で、こういう感じの映像にしたいという話をしたり、参考映像を見せたりはされたんじゃないでしょうか。
雨宮:グラフィニカさんには最初に「着ぐるみっぽくしたい」という話はしました。動かせる関節をあえて減らして、人間の動きありきではあるんですけど、着ぐるみを着ていたらできない動きはあまりしないようにしてほしいと。そういうことを言葉でオーダーはしましたが、実際のディレクションはグラフィニカさん側でやってくれています。
「SSSS.GRIDMAN」本編カット(c) 円谷プロ (c) 2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会――3DCGで描かれたグリッドマンがゆっくりと動くのは、見ていてフレッシュな感じがありました。あのようにゆっくり動かすのは大変だったと思います。
雨宮:ああいうところも、すごく上手いことやってくださいました。ゆっくり動かすのは作画でもできなくはないんですけど、正確性を要しますし何より手間やコストがかかりすぎてしまいます。3DCGのほうが物量を計算した正確な動きが得意なので、本当にお任せしてよかったなと。グラフィニカさんは僕らがオーダーした以上のものをあげ続けてくれて感謝しかなかったですし、それは「SSSS.DYNAZENON」においても同じで、非常に心強かったです。
――ムックのインタビューなどを読むと、雨宮監督をはじめとするスタッフの方々から「SSSS.GRIDMAN」の制作状況がよかったという話がよくでていました。今の話を聞くと、雨宮監督がスタッフにお任せしつつ、作業にかかる時間をしっかりと確保したことが大きかったのかなと思いました。
雨宮:3DCGをグラフィニカさんにお願いするということは、自分のスタジオではどうしようもない都合が生まれるということで、その筆頭が納期なんです。これは音響についても言えますが、自分たちでは管理できない部分が外側から決まると、そこにあわせて動かざるをえない状況がおきるんですよね。それは締め切りをきめるうえでも、非常によい塩梅だったと思います。
――そうは言いつつも、致し方ない事情で、いろいろな作業が後ろにずれこんでいきがちなのがアニメ制作というものなのかなと想像するのですが、そこをしっかり守れたのはすごいことですね。
雨宮:全部守れたわけではなくて、もっと守りたかった部分もありましたが、スケジュールの組み方や各スタッフの配置などはプロデューサーがやってくれて、(成果物を)あげる側の自分としては、それにしたがってあげればいいだけだったので。そういう意味では、周囲のスタッフに楽をさせてもらいました。
――最初に絵は描かないようにしたいと話されていましたが、制作中はどのように時間配分して各作業を行っていったのでしょうか。
雨宮:配分は、僕自身ではしていないです。言われたことだけやっていたので、上手くいったのはそこを仕切ってくれたプロデューサーの手腕だと思います。(制作にかかる)コストが先に決まっていて、例えば「この話数はおよそ何カットまでです」と最初に決まっていると、その範囲内でやればいいだけですから。なので、監督としてそんなに変わったことはしていないはずだと思います。それでも、どうしても描かないといけない部分だけは、人に委ねる前に描いていたりもしました。
――絵で伝えたほうが早いところなどですか。
雨宮:学校の廊下とか設定がないところがいくつかあったので、そういうところを自分で描いていましたが、それも息抜きになってよかったです。

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