【ドラマストア インタビュー】
正統派ポップバンドが
多面的に魅せる最新作
今の4人でドラマストアの
原点の曲を録れたのが良かった
通常盤のカップリングには既存曲「アポロ」のニューバージョンが入っていますね。さらに初回限定盤Bには既存の4曲をリアレンジしたトラックを収めたスペシャルアレンジDISCが付属されているという。
長谷川
今回の過去曲シリーズで一番印象が強いのは「アポロ -2020-」ですね。「アポロ」は僕らが最初にリリースした曲で、録り直すのがめっちゃ恥ずかしかったんですよ。でも、ライヴで久しぶりに演奏したり録り直した時に、“やっぱり最初に曲を書いた時から僕は確かなものを持っていたんやな”と思えたんです。自分を見つめ直せるいい機会になったし、僕らはこれまでにふたりメンバーが変わっているので、今の4人で「アポロ」というドラマストアの原点の曲を録れたのが良かったと思います。
髙橋
スペシャルアレンジDISCに「至上の空論」という曲が入っているんですけど、海くんがライヴ中に声が出なくなってしまったことがあって、そのあとは歌のメロディーをピアノで弾いてもらって3人でライヴを乗り切ったんですね。今回の「至上の空論」はその時のかたちに近いピアノ曲になっています。海くん以外の3人だけで成立させることは今までなかったので苦戦した部分もあるけど、いいところに落とし込めたと思うので、ぜひ聴いてほしいです。
鳥山
僕の中で特に印象が強いのは「流星群」です。この曲はもとがゴリゴリのロックナンバーだったのを、今回はピアノと歌だけで再構築しました。過去曲をリアレンジするにあたって、僕の中でピアノと歌だけの編成のものがひとつ欲しかったんです。普通にバラードでやっても良かったけど、ロックナンバーを素材にしたほうが面白いし、「流星群」をピアノデュオにするとタイトルにマッチした神秘的な感じになるんじゃないかという思惑があったんですよね。
松本
僕は特に「Lostman」が印象に残っていて。「流星群」とは真逆で、オリジナルはめちゃめちゃどん底というか、超メンヘラな闇のバラードを疾走感のあるギターロックに作り替えたんです。それがすごく面白かったし、前とは違う良さが出ていると思います。「Lostman」に限らず、今回のリアレンジシリーズは全曲オリジナルとニューバージョンを、ぜひ聴き比べてほしいですね。
スペシャルアレンジ DISCはドラマストアの幅広さや懐の深さを味わえるという意味でも必聴です。さて、「希望前線/ knock you , knock me / 回顧録を編む」はドラマストアの魅力が詰め込まれた一作になりました。本作のリリースに加えて、4月から精力的にライヴを行なうことも楽しみです。
松本
ライヴに関しては、まず4月に東名阪でアコースティックツアーをするんですけど、それはスペシャルアレンジDISCの面白さを伝えるために組みました。いつものライヴとはまた違った心地良さにあふれるライヴになると思います。あと、僕らは昨年初の全国ツアーをやる予定だったけど、新型コロナウイルスの影響で東京と大阪の公演を除いて全部なくなってしまったんです。ミニアルバム『Invitations』(2020年4月発表)のツアーをちゃんとやっていないので、今年のツアーは『Invitations』と、昨年出した曲も届けに行きます。楽曲はライヴで演奏することで育つので、お客さんと一緒に新しい曲たちを育てていくことが楽しみです。
髙橋
昨年にワンマンツアーができなかった分、今回そのエネルギーも含めて届けられたらいいなと思っています。ドラマストアのライヴはアッパーなシーンもあれば、じっくり聴かせるシーンもあるし、みんなでハッピーに盛り上がるシーンもあるので起伏に富んでいて、今年はそこにより磨きがかかったライヴができると思います。
鳥山
久しぶりなので、僕らもどうなるか分からないところがある…少なくとも僕はあるんですけど、いつもよりも自分が楽しむということに重きを置いてもいいんじゃないかという気がしています。それが、いいかたちでお客さんに伝わるればと思いますね。楽しむといってもお客さん不在で盛り上がるということではなくて、ちゃんと聴かせることにやり甲斐を感じるタイプのバンドだから、おかしなことにはならないと思うし。
長谷川
コロナ禍に関連して僕がすごく残念やなと思っていることのひとつが、ライヴに行くことが怖かったり、ライヴが悪いものっていう風潮になってしまったことなんですよ。あるいはそう思っていなかったとしても、仕事の種類によってはライヴに行けなかったり、行くなと言われている人がいる。そういう中で“そんな世論は気にせず、来たかったら来いよ”ということが言いたいわけではなく、自分たちは世の中の状況を理解している上でツアーをする。僕はライヴに行くのが怖い人や、行けたいけど行けない人も安心して来れる状況になったら来てほしいと思っているんですけど、そのためにはライヴをやり続けないとダメなんですよね。ライヴをすることで、“自分たちは変わらずここにいるから安心していいよ”というメッセージを伝えることになるし、動かずにいるとドラマストアは終わってしまうかもしれない。そうなったら、コロナの収束を待っているお客さんの帰る場所がなくなってしまいますよね。だから、ツアーをやろうと決めました。会場に来てくれた人に最高のドラマストアを見せると同時に、来れなかった人にも想いを馳せながら各地でライヴをしようと思っています。
取材:村上孝之