アレキ、MAMA、TF、ポリ、電話ズらU
KP勢がオンラインで集結したフェス『
UKFC in the Air』
まず、UK.PROJECT代表・遠藤幸一と、FRONTIER STAGEのアーティストが出番直後に登壇するトークコーナーのMC・芦沢ムネトのふたりによる前説からスタート。今年はこのように無観客生配信で開催すること、数ある配信イベント・配信フェスの中にあって、今年のこのフェスの特色はFRONTIER STAGEの5バンドは50分という尺でたっぷり観てもらえること、などを伝える。
歌声はエモーショナルだが表情はクールな金井と、バイオリンを弾く時もコーラスを入れる時もはじけるような笑顔の東出真緒が、好対照だ。最初に観た時(=7月20日、TOTALFATの配信ライブにBIGMAMAがサプライズ出演した時)は度肝を抜かれたサポート・ドラマー、Bucket Banquet Bisこと、ビスたんの姿(常にバケツをかぶっている)も、早くもこのバンドになじんでいる。
ちなみに、BIGMAMAは、8月21日に新木場スタジオコーストから無観客配信ワンマンを行ったばかりだが、セットリストはその時とまったく違っていて、両方でやっている曲は、ここまでの段階では「SPECIALS」だけだ。そのワンマンと本日の両方を観てくれるファンのことを、大事に考えていることが窺える。
オーディエンスによる「have a good night have a good smile〜」のシンガロングがきこえるような錯覚に陥る「Sweet Dreams」、「あなたの未来に希望の光を」という金井の言葉から始まった最新音源(2020年の母の日に配信リリース)「セントライト」を経て、前述のスタジオコーストが初披露だった新曲「The Naked King」、そしてラストはBIGMAMA屈指の高速チューン「CPX」と、曲が始まるごとに、コメント欄が歓喜の声に満ち、終了。
ムスタング・タイプのギターを提げ、NIRVANAのTシャツを着た寺本颯輝が「UKFC in the Air、postman始めます!」と宣言し、「揺らめきと閃き」でスタート。7月1日にリリースしたばかりの、初のフル・アルバム『HOPEFUL APPLE』収録曲だ。伸びやかな歌メロと前につんのめり気味のリズムのコントラストが鮮やか。続く「GOD」は、その1作前のミニ・アルバム『Night bloomer』から。緩急の激しいザクザクしたギター・サウンドが響くミドル・テンポの曲で、寺本颯輝の着ているTシャツと弾いているギターに直結するテイストの曲だ。
ラストは、『HOPEFUL APPLE』のオープニング・チューン、「探海灯」。「溢れた想いが今尚奏でるは名もなき小さな勇気の船 そいつがあればどんな嵐も越えて行く 地図なんていらない」と、荒れる海原へ出て行く決意を歌ったこの曲は、今日の、というよりも、このバンドの決意表明のように響いた。曲を終えたメンバー4人ともに、長い時間、無観客のフロアーに向かって深々と一礼していた。
「みなさん夏っぽいことしてますか? フェスもない、出かけるのも難しい、でもあきらめちゃダメ、夏はまだ終わってない!」(Shun Vo.Ba)と、7月20日に通販限定でCDリリース、8月21日には配信も始まった『WILL KEEP MARCHING』収録の「My Secret Summer」へ。Shun、イントロでは口笛を、それ以降は歌をマイクに載せていく。
「俺たちもUK.PROJECTに来て、長い年月が経って、これが家族なんだなと。一緒にすごしてきた時間と、これからの時間に感謝を込めて、この曲を送ります」と、始まったのは、忌野清志郎のカバー「世界中の人に自慢したいよ」。これも『WILL KEEP MARCHING』からの曲。意外なカバーだったがうまくハマっている、音源でも、もちろんこのライブでも。(ぜひ、原曲と聴き比べてみてください。)
「ここいらで一発、どでかいパーティーを始めようぜ!」というJoseの叫びでオーディエンスが察し、瞬時にコメント欄が「PARTY PARTY」の書き込みで埋まった「PARTY PARTY」。「来年は、お客さんを入れて、2年分取り返すつもりでやりたいよね。絶対、次の時代を手繰り寄せるためにがんばっていくんで、必ずみなさん、ライブハウスで会いましょう!」というShunの言葉から始まった「Good Fight& Promise You」。
「決して嘘はつかないバンド、ウソツキです」というおなじみの挨拶に、「画面の前のみなさん、楽しむ準備はできていますか? だまされる準備はできていますか?」という言葉を足してから、ドラム林山拓斗のキックが四つ打ちで鳴り始め、「一生分のラブレター」へ。バンドの音が一気に華やかにダンサブルになり、竹田昌和はさらに笑顔爆発。「みんな」や「あなたたち」ではなく、「きみ」ひとりに向けて放たれたラブソングを、「私」ひとりとして聴き手が受け取る、ゆえにライブの場だと「ウソツキ対多数」ではなく「『ウソツキ対ひとり』が多数」になる、というウソツキのコミュニケーションの取り方は、配信ライブというフォーマットとも相性がいいのかもしれない。
「(配信ライブで)今、遠くにいる人が、出会ってくれたらうれしいけど、音楽ってやっぱ、ライブじゃないですか。だから、あえてライブハウスで……たぶんUKのみんながそう思ってると思うけど、僕らの大好きな音楽を守るために、今ここで、イベントをやっているんだと思います。これからもウソツキは、『音楽、俺ら大好きだぜ』っていうことを伝えていくから、来年なのか、再来年になるのかわかんないけど、またライブハウスで会いましょう」
というMCを経て、「名もなき感情」でライブは締められた。短いが、終始、気持ちのこもったステージだった。
初ワンマンの頃から1曲目はこれで幕を開けていた「Buggie Technica」でスタート。というのは、意外ではなかったが、次がハヤシの歌もギターも全体的に「どうかしてる」響きだけでできている「Ah-Yeah!!」、ナカムラリョウが入って4人になった頃に作ったのを3人バージョンにリアレンジした「You Talk Too Much」、続く「Crazy My Bone」ではハヤシがギターを置いてシンセを操作しながら歌う──と、非常にレアな曲が続いていく。なんというか、「フェスの場でも勢いだけで押さないPOLYSICS」という風情。無観客であること、映像で見せていくライブであること、それゆえの選曲とリアレンジなのかもしれない。
ポリがこういうライブをやること自体は、初めてではない。曲間なしでノンストップ、MCもなし、というライブ、以前にもフェスとかでやっているし。それに、そもそも、昔からある曲を、いろんな時代から持ち寄って演奏したわけだし。
ただし、1本のライブとして、このような切り口で、曲をリアレンジして並べ、構成したこの日のステージは、とても新鮮だし、驚きに満ちていた。かつて3人だったバンドが、また3人に戻った、というのではなく、まるで違うバンドになったような……とまで言うと大げさに聞こえるかも知れないが。でも、「新形態に進化」くらいのインパクトがある。『UKFC』のためにこういう構成にした、というだけではなく、今後のポリはこういう方向、ということなのかもしれない。次のライブをみれば、どちらなのかがわかるだろう。早く観たい。
あ! そういえば、「TOISU!」、一回も言わなかった。
以上の全5曲すべて、6月3日にデジタル・リリースされたミニ・アルバム『Fake Planets』からの曲で、EASTOKLABはこのライブに臨んだ。リリースしたばかりだからとか、配信ライブというフォーマットへの適正を考慮したとか、そういう理由もあったのかもしれないが、それ以上に、シンプルにこの作品に自信があったからではないか、と、5曲を観終わって思った。ずっとひとつのフェスを観ているのに、この時間だけいきなり違うところに連れて行かれたような、不思議な、そして心地よい感覚に満ちた時間だった。
そう言われてから聴いて、この曲、簡潔に端的に希望を描いた、すばらしい歌詞であることに改めて気がついた。音のインパクトに気を取られてそのへん把握していませんでした、これまで。失礼しました。
と、スタートしたthe telephones。その新曲「Here We Go」は、メンバー全員でユニゾンでサビを歌う、サッカーのスタジアムに似合いそうな、高揚感に満ちた曲。続く「Monkey Discooooooo」では、石毛、「サルのように踊ろうぜ!」「首ぶっ壊せ!」「踊ろうぜ!」と、通常のライブの時以上に、画面の向こうのオーディエンスにあおる。
「UKPと関わりを持って12年くらいになり、そろそろ我々も新境地に入っていこうかなと。そんな気持ちをこめて新曲を作りました。今日初披露です」と紹介から始まった「New Phase」、確かにこんなふうにブラック・ミュージックに直結した横ノリな曲は、the telephonesにはなかったかもしれない。次の「Tequila,Tequila,Tequila」も横ノリでミドル・テンポ。ドラムの松本誠治とベースの長島涼平の活動再開後の演奏の充実っぷりが伺える。「もう1曲新曲やるぜ!」と始まった「Do the DISCO!」は、わりと通常のテレフォンズ寄りだな、と思ったら、途中でいきなりダブっぽくなる。確かにどの曲も、新しいフェイズに突入している。
「観てるみんなと、UK.PROJECT、そして今日の会場のスタッフに、愛とディスコを贈るぜ!」と始まったラスト・チューン「Love&DISCO」は、おそろしい物量の多幸感に満ちていつつも、同時に、とてもせつなく響いた。そのえも言われぬ空気、画面の向こうのそれぞれのオーディエンスも、感じ取ったのではないかと思う。
なお、この曲と3曲目の「RIOT!!!」は、メジャー移籍前のthe telephonesが、唯一UK.PROJECTからリリースした音源『Love&DISCO.E.P.』からの曲である。特に「RIOT!!!」をライブで聴けるのは、ここ数年、『UKFC』だけだと思う。
ちなみに、「金井のピックプレゼントは金井本人からオッケー貰った」と、その日のうちにノブがツイッターで報告していた。
20:30 the shes gone(FUTURE STAGE)
「行くぞUKFC!」と兼丸(Vo.Gt)が叫び、「嫌いになり方」でスタート。終わってしまった恋への、往生際が悪いことこの上ない思いを、8ビートのギター・サウンドに乗せて歌うこの曲から、兼丸の歌メロをマサキ(Gt)のタッピングが彩る「シーズンワン」へつながっていく。ここ最近、生のライブも配信ライブも含めて、観るたびに力強さが増している印象だが、今回もそれを更新していく、堂々たるパフォーマンスである。
「僕らが歌を歌うからには、ライブをするからには、観ているあなたのために、今抱えている不安を、一緒に抱えて、ずるずるひきずって、戦っていこうと想います」という言葉から歌われた最後の曲は、「ふたりのうた」だった。「君」と一緒にいられる日々の大切さを歌った正面からのラブソングだが、「気付いてる?/当たり前は存在しないこと/君との今日も 当たり前じゃないこと」というラインは、それを超えて、the shes goneとオーディエンスのことを差しているかのように響いた。
「2020年残り、あなたが求めていなくても、望んでいなくても、僕らから会いに行きますんで。またね、the shes goneでした」。兼丸は最後にそう言った。
「まさか今年開催されるとは思ってなかったので、めちゃくちゃうれしく思っております。そして、僕の目の前にタブレットがありまして、みなさんからのコメントがあります」と、足元のタブレットの前にかがみこむ川上洋平、これ以降も、MCのたびにオーディエンスのコメントに触れる。白井眞輝(Gt)はスマホでコメントを注視している。
「これ、無観客ライブだと思ってないんで。カメラの向こうには何万人というお客さんがいる、有観客ライブ、だからがんがんあおるし、がんがん踊らせるし、がんがんシンガロングさせますから」という川上洋平の言葉から、ベースの磯部寛之がリッケンバッカーに持ち替えて「Dracula La」へ。イントロでドラムが響き始めると、書き込まれるコメントが「おーおー」一色になり、ものすごいスピードで流れていく。文字によるシンガロングだ。「もっと! サーバーぶっ壊せ!」と、それをあおる川上洋平。
「さっきtelephonesを観て、フェスって楽しいな、久々に仲間に会えてうれしいな、と思って。その最初のライブが『UKFC』でよかったなと思った」
というMCから、『Bedroom Joule』収録の新曲「rooftop」。「次はお客さんと会えるように」という気持ちをこめて書いた、という川上洋平の言葉どおり、コロナ自粛真っ只中の自分たちの気持ちが赤裸々に歌われる。
「さっきtelephonesかっこいいって言ったけど、10年前のUKFC初出演の時、全部のバンドにケンカ売ってました。この曲をやるとその時の気持ちが蘇ります」という言葉から放たれた最後の曲は、2010年のファーストアルバムでの発表以来、ライブのピーク・ポイントを担ってきた「For Freedom」だった。10年間、常に進化・変化してきたバンドだが、こうして改めてこの曲を浴びると、10年前の段階で、すでにすべてを持っていたバンドだった気もしてくる。
ライブ後の芦沢ムネトとのトーク・コーナーで、いきなり立ち上がって「ワタリドリ」を熱唱するなど、これだけのライブをやり終えてもまだまだ歌い足りない様子の川上洋平。「楽しかったですね。配信ライブはこれで5本目なんですけど、フェスっていうか、対バンじゃないですか。また全然違う熱量というか、出演者みんなそれぞれの思いがこもってるし、それぞれのファンもいるわけだから、いろんな気持ちが入り混じってる。その感じが、フェスだなと」 と、『UKFC』への愛着を、改めて言葉にしていた。
また、たとえば2020年10月に待望のニュー・アルバムが控えている銀杏BOYZ、2月28・29日のツアー追加公演を無観客生配信で行ったsyrup16g、しばらく活動が止まっていたが(木下理樹のツイートの様子では)コロナ禍さえなければ、そろそろ動き出してもおかしくないArt-School、そして新鋭teto等の、今年は出演していないアーティストも、できれば2021年の『UKFC』で観ることができるとうれしいし、UK.PROJECTならではの、まだ見ぬ新人バンドの登場にも期待しています。
取材・文=兵庫慎司 撮影=各写真のクレジット参照
※本稿は生配信を自宅から視聴したレポートです
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