名古屋「ナビロフト」など全国小劇場
の厳しい現況と、それを支える再開支
援プロジェクト~再び、生の舞台が観
られる日のために
劇場での観劇ができなくなって約2ヶ月半。新型コロナウィルス感染拡大防止のため全国に発令された緊急事態宣言は解除されたものの、第2波到来への警戒感が続く昨今、従来どおりの公演実施及び劇場再開という明るいニュースはまだほとんどなく、全国各地の劇場の収入は途絶えたままで深刻な窮状に追い込まれている。こうした状況下でさまざまな劇場支援の活動が広がる中、〈全国小劇場ネットワーク〉が5月20日、劇場再開に向けて「READYFOR」によるクラウドファンディングを開始した。
2017年12月に沖縄県那覇市で開催した「全国小劇場ネットワーク会議」を出発点として活動を開始し、19都道府県36の民間小劇場(2020年5月時点)が参加する〈全国小劇場ネットワーク〉は、「“地域に根ざしたクリエイティブな劇場”を目指す全国の民間小劇場が、先進事例や実践を共有し互いに援助すること」を目的として発足された組織だ。今回の緊急事態宣言を受け、一時的に閉館を余儀なくされた全国の小劇場が今後再開していく際のさまざまな事項についての協議を行っており、クラウドファンディングもその一環として劇場再開のために必要な資金を募り、参加劇場に分配すべく行われるもので、詳細は以下の通りだ。
《クラウドファンディングプロジェクトについて》
◆【地域と共に歩む文化拠点】全国の小劇場の「再開後」にご支援を
◆URL:https://readyfor.jp/projects/shogekijyo-network (下記「全国小劇場ネットワーククラウドファンディングプロジェクト」欄参照)
◆公開期間:2020年5月20日(水)13:00~7月31日(金)23:00
◆プロジェクトタイプ:寄付型 ※税制優遇の対象となります
◆目標金額:1000万円 ※目標金額以上の支援が集まったかどうかに関わらず、プロジェクトが成立となるALL-IN形式
◆問い合わせ:全国小劇場ネットワーク shogekijojp@gmail.com
◆URL:https://readyfor.jp/projects/shogekijyo-network (下記「全国小劇場ネットワーククラウドファンディングプロジェクト」欄参照)
◆公開期間:2020年5月20日(水)13:00~7月31日(金)23:00
◆プロジェクトタイプ:寄付型 ※税制優遇の対象となります
◆目標金額:1000万円 ※目標金額以上の支援が集まったかどうかに関わらず、プロジェクトが成立となるALL-IN形式
◆問い合わせ:全国小劇場ネットワーク shogekijojp@gmail.com
<クラウドファンディング参加劇場>
〈全国小劇場ネットワーク〉内の以下の劇場が今回のクラウドファンディングに参加
【再開後、早急に支援を必要とする劇場・アトリエ】
・生活支援型文化施設コンカリーニョ(北海道札幌市)
・スペースベン(青森県八戸市)
・La MaMa ODAKA(福島県南相馬市)
・シアターKASSAI(東京都豊島区)
・花まる学習会王子小劇場(東京都北区)
・北千住 BUoY(東京都足立区)
・若葉町ウォーフ(神奈川県横浜市)
・新潟古町えんとつシアター(新潟県新潟市)
・上土劇場(長野県松本市)
・犀の角(長野県上田市)
・ナビロフト(愛知県名古屋市)
・THEATRE E9 KYOTO(京都府京都市)
・in→dependent theatre Group(大阪府大阪市)
・シアターねこ(愛媛県松山市)
・アトリエ銘苅ベース(沖縄県那覇市)
【再開後、早急に支援を必要とする劇場・アトリエ】
・生活支援型文化施設コンカリーニョ(北海道札幌市)
・スペースベン(青森県八戸市)
・La MaMa ODAKA(福島県南相馬市)
・シアターKASSAI(東京都豊島区)
・花まる学習会王子小劇場(東京都北区)
・北千住 BUoY(東京都足立区)
・若葉町ウォーフ(神奈川県横浜市)
・新潟古町えんとつシアター(新潟県新潟市)
・上土劇場(長野県松本市)
・犀の角(長野県上田市)
・ナビロフト(愛知県名古屋市)
・THEATRE E9 KYOTO(京都府京都市)
・in→dependent theatre Group(大阪府大阪市)
・シアターねこ(愛媛県松山市)
・アトリエ銘苅ベース(沖縄県那覇市)
【動画】〈全国小劇場ネットワーク〉劇場紹介リレー動画 part1
【クラウドファンディング協力劇場・アトリエ】
・扇谷記念スタジオ・シアターZOO(北海道札幌市)
・百景社アトリエ(茨城県土浦市)
・こまばアゴラ劇場(東京都目黒区)
・急な坂スタジオ(神奈川県横浜市)
・The CAVE(神奈川県横浜市)
・ネオンホール(長野県長野市)
・白子ノ劇場(静岡県藤枝市)
・うりんこ劇場(愛知県名古屋市)
・津あけぼの座・四天王寺スクエア(三重県津市)
・Théâtre de Belleville(三重県津市)
・アートコミュニティスペース KAIKA(京都府京都市)
・アートマネージメントセンター福岡(福岡県福岡市)
・アトリエ PentA(長崎県長崎市)
・百景社アトリエ(茨城県土浦市)
・こまばアゴラ劇場(東京都目黒区)
・急な坂スタジオ(神奈川県横浜市)
・The CAVE(神奈川県横浜市)
・ネオンホール(長野県長野市)
・白子ノ劇場(静岡県藤枝市)
・うりんこ劇場(愛知県名古屋市)
・津あけぼの座・四天王寺スクエア(三重県津市)
・Théâtre de Belleville(三重県津市)
・アートコミュニティスペース KAIKA(京都府京都市)
・アートマネージメントセンター福岡(福岡県福岡市)
・アトリエ PentA(長崎県長崎市)
【動画】〈全国小劇場ネットワーク〉劇場紹介リレー動画 part2
今後、徐々に経済や文化活動が復帰しても、すべてが元通りという状況が訪れるかどうか現時点では予測がつかず、〈全国公立文化施設協会〉から「劇場、音楽堂等における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」が発表されるなど、当面は規制のもとでの劇場再開となる。そのため、ソーシャルディスタンスを確保すべく客席数を減らすことによって生じる収入減や、全館の消毒・検温・マスク着用などガイドライン遵守にともなう支出増の一助となり、アフター/ウィズコロナ時代に即した「新しい発想をもった事業・作品の試行」を後押しする資金を支援しよう、というのがこのクラウドファンディングの目的だ。
集まった資金の分配方法は、クラウドファンディング運営事務局の人件費や手数料を除き、第一目標の1,000万円については、まず上記「再開後、早急に支援を必要とする劇場・アトリエ」15カ所からの申請(各劇場が再開にかかる用途と金額を申請)を優先的に受け付けて分配(1件につき最大50万円目処)。目標以上の支援金が集まった場合は、ネットワーク内のその他の劇場からも申請を受け付けて分配する、という形式だ。
これまでにも他のクラウドファンディングで、損失補填や緊急支援などを目的とした企画が立ち上げられてきたが、〈全国小劇場ネットワーク〉では「劇場再開に向けた支援」に軸足を移し、また、複数の回路から各劇場にとってベストな支援が選択できる支援環境を整えるべく、今回の企画を立ち上げることにしたという。
その支援希望に、当地・名古屋の小劇場「ナビロフト」も名を連ねている。名古屋市東部の住宅街に佇む「ナビロフト」はもともと、劇作家の北村想が当時率いていた〈プロジェクト・ナビ〉のアトリエ兼劇場として1994年に開設。飲料メーカーの倉庫を改装した空間は、100席程度の小劇場としては珍しい、天井が高くゆったりとした造りが魅力の劇場だ。2003年のナビ解散以降はいわゆる貸し小屋となり、多くの団体に利用されてきた。
そして2016年、俳優としての活動をメインに演出や劇作も手がけ、〈てんぷくプロ〉に所属する傍ら〈名古屋演劇教室〉を主宰、〈KUDAN Project〉などでプロデューサーとしても手腕を振るう、小熊ヒデジが運営に加わった。以降、新体制を整え、客席やロビーを改装・整備するなど大幅なリニューアルを実施している。
従来どおり貸し小屋としての運営をベースにしながら、地域で活躍する有望な若手~中堅アーティストを支援するプログラム《LOFTセレクション》や、全国発信を目指して作品創造・公演を行う《クリエイション企画》といった自主事業を立ち上げたり、〈日本劇作家協会東海支部〉との共同主催による戯曲のブラッシュアップ及び劇作家育成講座《ナビイチリーディング》も2017年より継続して開催。また、遠方から来名するカンパニーを積極的に受け入れる《地域とつながるプログラム》の実施など、他エリアのアーティストや劇場とのネットワーク構築を目指し、全国と繋がる活動にも尽力している。
「ナビロフト」プロデューサーの小熊ヒデジ。再開後のソーシャルディスタンスを配慮した劇場の客席で
こうしてさまざまな取り組みを行ってきた「ナビロフト」も3月下旬以降、公演の中止や延期が相次ぎ、7月まで利用団体ゼロという状態が続いている。
小熊は、「名古屋は何年も前から予約がいっぱいになるという状況ではなくて、申し込みが来るのはだいたい10ヶ月~半年前くらい。春は例年稼働率が低いので毎年5月後半ぐらいから埋まってくるんですけど、ちょうどコロナが騒がれ始めた頃に申し込みが増えるタイミングだったんです。いつもは年間30公演ぐらいですが、問い合わせはあるものの、今入っている2020年度の予約としては、夏以降の8団体しかない。4月から収入が途絶えて、小劇場の経営状況はどこも同じだと思いますけど、自転車操業だから数ヶ月で家賃が払えなくなってしまうんです。「ナビロフト」も固定経費だけで月に30万円ほど掛かるので、このままでは本当に閉鎖せざるを得なくなります」と、運営者として直面している厳しい実情を明かした。
しかしそこにはもちろん、簡単には存続を諦められない事情や想いがある。「僕が「ナビロフト」に来て4年になりますが、4年間で客席やロビーを直したり、宣伝していろんな人に使ってもらったり、遠くから来てもらったり、多くの人に支えられてきました。ここを利用してくれる劇団や、改装や劇場運営に協力してくれている方々、或いは足を運んでくれるお客様と共に劇場は在ると思います。それがあって「ナビロフト」の今があるから、できる限りの手を尽くし、末長い存続のために最大の努力をしたいと思います」
そうした多くの人々の気持ちや助力に報い、創造・発信・育成・支援・交流の場としてこれまでどおり地域に根ざした文化拠点としての役割を果たし続けるため、上記クラウドファンディングへの参加と共に、6月7日(月)より「ナビロフト」独自の救済基金も立ち上げるに至ったという。
《「ナビロフト救済基金」について》
◆実施期間:2020年6月7日(日)17:00~8月10日(月・祝)23:00
◆目標金額:180万円
◆支援金の用途:家賃などの固定経費補填、再開に向けてのさまざまな設備投資、コロナ禍における劇場維持のための諸経費
◆支援に対するリターン:サンクスメール、劇場HPやロビーでの氏名掲載、オリジナルグッズ(ステッカー、手拭い、Tシャツ)、主催・共催公演ご招待券、「あなたの人生/社史を舞台化します!」権などを金額に応じて贈呈。詳細については公式サイトを参照
◆公式サイト:https://naviloft1994.wixsite.com/navi-loft(下記「ナビロフト救済基金」欄参照)
◆問い合わせ:ナビロフト 052-807-2540 naviloft1994@gmail.com
◆目標金額:180万円
◆支援金の用途:家賃などの固定経費補填、再開に向けてのさまざまな設備投資、コロナ禍における劇場維持のための諸経費
◆支援に対するリターン:サンクスメール、劇場HPやロビーでの氏名掲載、オリジナルグッズ(ステッカー、手拭い、Tシャツ)、主催・共催公演ご招待券、「あなたの人生/社史を舞台化します!」権などを金額に応じて贈呈。詳細については公式サイトを参照
◆公式サイト:https://naviloft1994.wixsite.com/navi-loft(下記「ナビロフト救済基金」欄参照)
◆問い合わせ:ナビロフト 052-807-2540 naviloft1994@gmail.com
また、こうした資金援助に頼るだけでなく、より強固な運営体制を整え、劇場再開後の展望も見据えて人材面の強化にも取り組んでいる。
「「ナビロフト」は今後、新しい運営体制に組み換えていく必要があるので、いろいろな方に相談し、協力を仰いでいきたいと思っています。コロナ禍にある現在、舞台芸術のプラットフォームであり、地域の文化拠点でもある小劇場「ナビロフト」は、何を担い、何を発信できるのか。変わらず「地域に根ざし、全国とつながる劇場」を目指しつつ、できれば運営メンバーを増やし、現在のプログラムをより充実させ、さらに新しい取り組みや創作作業にも力を入れ、より地域社会や演劇界に貢献できるようになりたいと考えています。4年前に僕が携わることによりリニューアルした「ナビロフト」を、新しい人材を投入することで僕一人では出来なかったことにも挑んでみたいと、劇場再開に向けて前向きな気持ちになっています」と、小熊。
今回の事態で“新しい生活様式”が求められるようになり、3密の極致ともいえる演劇に於いては未だ劇場へ足を運ぶこともままならず、創り手たちは新たなツールや手段を活用して伝達方法を模索しながら、「リモート演劇」や「無観客上演の配信映像」などを盛んに手掛けている。逆境を逆手に取った意欲的な表現や驚くべきアイデアが生まれてくるのもこんな時ならではで、それらを目撃していくのもひとつの楽しみと言えるだろう。
けれども、それぞれに特色を持つ劇場空間へ出向き、生の舞台作品に触れて衝撃を受けたり感動を覚えた経験のある人ならば、大多数の人がまた、リアルな劇場で役者たちの息遣いや観客同士の反応を肌で感じ、音や光、美術や映像の効果などもダイレクトに味わいながら観劇したい、と願っているはず。これから長い時間が掛かったとしても、いつか取り戻したい従来の上演と観劇スタイルのために、私たち観る側にも上記のような寄付しかり、それ以外の方法であっても、小さくても僅かでも、何か出来ることがあるのではないか、と考えていきたい。
文=望月勝美
アーティスト
SPICE
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