【亜無亜危異 インタビュー】
反体制じゃなかったら
ロックじゃねぇだろ
今年デビュー40周年を迎えた亜無亜危異が20年振りのオリジナルフルアルバム『パンク修理』をリリース! ソリッドでありながらキャッチーで、シニカルでありつつコミカルな要素もしっかりと取り込んだ、日本最古参パンクバンドの貫禄を感じさせる本作の肝を、仲野 茂(Vo)と藤沼伸一(Gu)両名が語ってくれた。
今の連中がやる奏法を
60歳のおっさんがおちょくった
今回のアー写、最高ですね。
藤沼
赤いやつ?(笑) まぁ、今年で茂もマリ(故・逸見泰成の愛称)も還暦になったということで、今年からこの衣装で。茂もバカだからすぐに乗ってやってくれた(笑)。こういうバカなことは亜無亜危異にしかできない。THE MODSにはできねぇでしょ?(笑)
仲野
うん(笑)。国鉄服でデビューして、またこうして国鉄服を着れるというのはいいなと思ったよね。
本来赤いちゃんちゃんこを着て還暦をお祝いするところですけど、赤い国鉄服というのが素晴らしい!
仲野
俺たちは国鉄服でデビューしてたんだけど、途中から色気づいて、国鉄服を脱いじゃったりしてさ(苦笑)。国鉄服が俺たちの象徴になっちゃったから、当時はそれだけに縛られるのは嫌だったしね。でも、こうしてまた着れるのは何よりだよね。
では、アルバム『パンク修理』の話に入っていきますが、まず最初は若干余談含みなんですけど、11曲目の「世界に羽ばたけロックスター」に《世界の果てまでロックしろ》《熱狂ウイルスまき散らせ》という歌詞がありまして、まさか予見したわけでもないでしょうに、このご時勢に符合しちゃいましたね。
藤沼
もちろん狙ったわけじゃ全然ないんだけど、合っちゃったよね。まぁ、レコード会社も“このままでいいよ”って言ってくれたので、“まぁ、いいか”と。“ロックダウン”とは言ってないけど、《タッチダウン》という歌詞もあるし、何か絡んじゃったよね。
まったくの偶然なんでしょうけど、何とも奇妙に合ってしまいましたね。そもそもアルバム制作自体はいつ頃から取りかかったんですか?
藤沼
俺が歌詞を作り始めたのは日本でコロナがこんなに騒がれる前だったから、1月の頭かな? 中国で徐々に感染者が出てきてた辺りだったから、まさか日本でここまでになるとは予想してなかった。
1曲目「馬鹿とハサミは使いYO!」に《知らぬが仏 尻尾をふって 政治利用まっぴら!ごめん! 祭り上げられ サクラ満開》という歌詞がありまして。これは俗に言う“桜を見る会”のことだと思ったのですが。
藤沼
桜を見る会と、いわゆるサクラ(偽客)…一緒になって応援する奴、紛れて込んで物買ったりする奴をかけた。
桜を見る会が国会で取り上げられたのが今年1月くらいですから、アルバム制作はおそらくその頃にスタートしていたのではないかと想像しておりました。
藤沼
桜を見る会のことは去年から騒いでたけどね(笑)。
はい(笑)。今回のアルバム制作についてはメンバー間でどんな話がなされたのでしょうか?
仲野
今回の曲のもとは伸一が全部作ったんだけど、前回の『パンクロックの奴隷』(2018年9月発表のミニアルバム)辺りから…何て言うのかな? すごくポップになったところがあって、そこは今回のアルバムでも伸一が反映してくれた。“じじいだからってコアにならない”ってイメージでお願いしますって伸一には頼んだよね。
藤沼
まぁ、俺らにもそういうことがあったけど、歳を食ってくると、何かカッコつけたりするじゃないですか。“俺、こんなこと知ってるぜ!”みたいな。でも、そこじゃなく、子供でも分かりやすい言葉で、曲もすぐに分かるというか、なるべくそっちに気を使って作りましたけどね。
『パンクロックの奴隷』も決して分かりにくい作品ではなかったと思いますが、確かに『パンク修理』はあそこからさらに削ぎ落としたようなアルバムになってますよね。
藤沼
俺の中で『パンク修理』は『パンクロックの奴隷』の延長と言うと変ですけど、あれを作った辺りでもう1曲目の“馬鹿とハサミは使いYO!”というタイトルだけはあってメモしてたんで、それをどう肉付けしていくかというのを今回やりましたね。
なるほど。『パンク修理』と前作『パンクロックの奴隷』との違いを挙げるとするなら、前作には4分を超える楽曲が2曲あったというところかなと。
藤沼
あれは茂の台詞をどうしても入れたかったんで入れたんですけど、ああいうことをすると4分くらいの尺がいるという。
でも、今回の収録曲はおおよそ3分台で、中には2分台もあるほどで。
藤沼
もうギターソロとか面倒くさくて(笑)。そりゃあできますよ、“やれ!”と言われれば。歳を食うと、みんな見せびらかすでしょ? “俺ってこんなにうまいんだぜ!”って。俺、あれが大嫌いで(笑)。
(笑)。その3分台の楽曲がほとんどというのは、アルバムタイトルが“パンク修理”ということを考えると、1970年代からここまでパンクは進化してきたけれども、“もともとパンクってこういうもんだろ”という回答のような印象があります。
個人的にはキレの良さにパンクらしさを感じましたね。特に「パンクのオジサン」「檻の中の民主主義」辺り、あのビシッと終わるところは本当にカッコ良いです!
藤沼
無駄に芸歴が長いですからね(笑)。俺は曲を作る時、基本的に“ライヴはこういうふうになるだろう”ってことを中心に曲を書くタイプなんで、例えば“ここでジャンプする”とか“ここでガッと終わって次の曲にいく”とか、そういうテーマというか目標みたいなものが俺の中であるんですよ。それに沿ったらこういうかたちになっちゃったという。
あと、これは言うまでもないことなんでしょうけれども、ミドルテンポ以下の楽曲もありませんね。
藤沼
ドラムのコバン(小林高夫の愛称)がミドルテンポ以下だと寝ちゃうんで(笑)。
(笑)。「ノー天気の子」はイントロがミドルですから、あそこで“このアルバムはここで一旦落ち着くのか”と思わせておいてそうならずにアップに転じて、そのままアルバムのフィナーレまでずっとアップという。
藤沼
あそこは今の連中がやる奏法を60歳のおっさんがちょっとおちょくったというね(笑)。
“こういうイントロ、よくあるよね?”という?(笑)
藤沼
たぶん「ノー天気の子」では俺と茂が肩をくっ付けてたりして歌うんじゃないかな。(笑)。
仲野
(笑)。あのド頭の歌は何パターンかやってて、“もっとシックに…”とかね。今思うと、もっと二枚目風でも良かったと思うんだけど…。
仲野
二枚目風にやりたかったんだけど、ほら、俺ってどうしても一枚目だからさ(笑)。次のアルバムはもうちょっと二枚目にやります(苦笑)。