エドガー・サリヴァンが思い描く令和
という時代「違いに対して偏見を持つ
のではなく、違いを認める必要がある

2019年3月に公開されたミュージックビデオ「WONDERFUL WONDER」が100万回再生を突破するなど、勢いに乗っているユニット、エドガー・サリヴァン。2015年の活動開始以降、幾度かのメンバー変遷を経て、2019年4月より佐々木萌(Vo)、坂本遥(Gt)の2人体制に。「めんこい」というワードを押し出した独自スタイルのポップサウンドで話題上昇中の彼女たちが、ミニアルバム『CHAP』の4月22日リリースに先駆けて、収録曲「DOKI DOKI」を先行配信する。自分にとって大切な人と触れ合う瞬間のドキドキを、洗練されたメロディセンスとキュートな歌詞で表現。しかし、決して恋愛だけに特化したものではなく、エドガー・サリヴァンが考える現代性が隠されている。令和という時代へ移り変わり、いま自分たちは何を感じ、そして伝えるべきなのか。さまざまな気持ちが込められている同曲について、佐々木、坂本にインタビューした。
エドガー・サリヴァン 撮影=ハヤシマコ
――「DOKI DOKI」はどのようなイメージを抱きながら制作をしていきましたか。
佐々木:令和のはじまりをリアルタイムでちゃんと生きている感覚があり、みんなと一緒にどれだけワクワク、ドキドキできるか。そんなことを考えて作りました。<この3分半の恋を>という歌詞がありますが、サブスクやライブなどで私たちの曲を聴いて、その3分半の間はとにかくドキドキしてほしい。そういうことが生きる上での豊かさにつながるだろうし、イマジネーションを膨らませることもできる。どれだけトキメキを持てるか、むしろそれがないと今の時代は生き残れない気もしています。
坂本:令和はみんな好きなことをなんでもやろうよ、という時代だと思っています。平成の終わりって、なんだか暗い印象があって。今もいろいろ不安はあるけど、そのなかでも好きなことをやっていきたいですね。<未来に期待を>という歌詞がありますが、令和がスタートして、ドキドキ感が持てる曲を作れたのは本当に良かったです。サウンド面でも、アレンジに関してはまさに好きなことをやりました。あえてドラムのハイハットを使わず曲を作ってみたり。
――これまではそういったことはやってこなかったんですか。
坂本:そうですね。あまりやりたくなかったんです。ただ、クイーンの映画をきっかけに「ボヘミアン・ラプソディ」がリバイバル・ヒットしたじゃないですか。僕はクイーンがずっと大好きなんですけど、昔だったら、あの曲が流行ったからといって、それっぽいことをやるのは嫌だったんです。でも今回は、「それでも俺はクイーンが好きだし」と、Bメロはクイーンのギターをモチーフにしてみたり。「好きなんだから恥じることはない」という気持ちでやりました。
佐々木:クイーンに関しては、あの当時の音楽作りにおける発想の自由さ、新しさが今も変わらず評価がされているということが分かりましたね。
――それこそ映画にはフレディ・マーキュリーのセクシャリティについても描かれていましたけど、当時と今とでは多様性や物事の受け止め方に変化が生まれています。
坂本:たしかに僕が音楽を始めたとき、音楽雑誌などではフレディがネタのように扱われていましたが、今は「それは間違っている」ということがちゃんと広がってきましたよね。LGBTの話もそうですが、そういった今の時代のなかでクイーンが再評価されたことは、すごく重要な気がしました。時代が変わっていくことって、すごく必要なことなんだなと気付きました。
佐々木:令和になって、たとえば漫才でも、ぺこぱさんが今すごく評価されていますよね。誰のことも否定せず、ツッコミでも叩かない。むしろボケに対して「うん、そういう考え方もあるよね」と認める。ぺこぱさんのネタを見て、「これが令和なのかも」と感じました。ロックも、昔は反体制、反抗的な要素があったけど、そうじゃない形が出てくる気がします。個性というものがよりきわだつだろうし、それぞれが違うことをちゃんと認める必要が出てくる。違いに対して偏見を持つのではなく、ちゃんと向き合っていくべきですし、私たちもそういうことを考えて音楽を作っていきたいんです。だから時代の変化に対する意識が強いのかもしれません。
坂本:平成の時代は、僕らはまだまだ若かったと思います。でもちょっとずつ大人になって、令和では「俺たちが主役だ」と言える年齢になったので、自分たちの考えを音楽でちゃんと伝えていきたいです。
エドガー・サリヴァン 撮影=ハヤシマコ
――「DOKI DOKI」もそうですが、そのような考え方を、エドガー・サリヴァンは恋愛という形に落とし込んで楽曲にしますよね。
佐々木:おっしゃる通りです。決して恋愛そのものを歌っているわけではなく、自分たちの考えを恋や愛に例えています。愛は普遍的なものなので、いろんな人たちが共感しやすいですし。
――たとえばインタビュアーから、「この曲の恋愛って、実際に経験されたことなんですか」とか尋ねられますよね。
佐々木:すごく多いです。でも、題材的にはそういうことではないんですよね。あと、私は恋愛そのものには、そこまで興味はなくて、むしろ、そういう状況に置かれた人たちの心の揺れ動き方に興味がありますね。
――「DOKI DOKI」もそうですけど、エドガー・サリヴァンの曲って、「君」という相手に対して、「自分」がかなり依存をしますよね。前作「Beginnin’ 」にしても<いま だきしめたい>とあったり、他の曲でも相手とものすごくたくさん会っていたり、とにかく密接。「DOKI DOKI」には<この体温交換しよう>という表現もあります。
佐々木:私は基本的には誰かに依存はしないんです。ただ、熱量を持って関わる人たちとは、できるだけ近い距離感でいたい気持ちはあります。別に深く踏み込まなくても良いのですが。
――だけど、エドガー・サリヴァンの曲に出てくる人たちって、「絶対に遠距離恋愛ができなさそう」と思っちゃいます。
佐々木:ハハハ(笑)。
――「ストロボ・ハート」では<会えない瞬間とかで僕は強くなんかなれないや>と歌っているし、「今夜ステキになって」では<君となら生き残れる><隣で見つめてたい>とありますよね。
坂本:萌ちゃん、本当は依存したいんでしょ?
佐々木:いや、遠距離とか全然平気なタイプ。「ずっと一緒にいたい」という感情になったら、それは私にとってニュースなんですよ。依存体質だったらきっとそのことに気づかないから、こうやって曲にはなっていないはず。たまに、「あれ、私はこんなに弱くないのに。なんで悲しいんだろう」となるから、曲が書けるんです。
坂本:そうなんだ。僕は、好きな人とずっと一緒にいないと死んじゃうタイプです。別れたら1年くらい引きずってしまいます。というか、元カノと別れてちょうど1年でやっと吹っ切れてきたところなんですけど(笑)。
――「ずっと一緒にいたい」というのは、相手からしたらちょっと気持ちが重たいのかもしれませんよね。
坂本:そうなったから別れたんだと思います。元カノの場合は塵(ちり)が積もって……なんですけど、僕はその塵が積もっていることが分からなかったという。致命的ですね。
エドガー・サリヴァン 撮影=ハヤシマコ
――過去の他媒体のインタビューを読んでいると、坂本さんは、佐々木さんの書く歌詞に関して「なんで俺の気持ちを理解できているんだろう」と発言していらっしゃいますよね。
坂本:俺のことを書いてくれているのかなって思ったら、全然違って。それが15曲くらい連続で続いたんです(笑)。「DOKI DOKI」の<3分半の恋>というフレーズも、それは音楽のことを例えているものなんだけど、だけど「あれ、3分半だけ俺に恋をしていたのかな?」とか思っちゃって。
佐々木:え、バカじゃないの(笑)。
――あと、「DOKI DOKI」や「Beginnin’ 」も含め、エドサリには「何かが終わる/始まる」というテーマが多いですよね。「マジックアワー」でも<何か終わっちゃいそうで 始まっちゃいそうなfeel>というフレーズがあります。先ほどの平成の終わりと令和の始まりの話なんかはまさに当てはまります。
佐々木:私は基本的に諸行無常だなと思っていて、どんなに好きなものが目の前にあったとしても、いずれ飽きてしまうことを考えるんです。誰かのことを「超大好き!」になったとしても、別れたくないから付き合わないとか。
――あ、それはちょっと分かります。
佐々木:終わるなら始めたくない。小説なんかも、読み終わりたくないから読まずにとっておくとか。
坂本:それは精神の徳の高い考え方だよね。
佐々木:結局は消費されるものの方が多いから。終わったとしても何かちゃんと残る方がいい。跡形がないものにはなりたくない。
――「DOKI DOKI」も収録されたミニアルバム『CHAP』ですが、全体的にどのような作品になりそうですか。
坂本:2019年5月に出したEP「NEWS」から僕と萌ちゃんとの2人体制になりましたが、その関係性を再認識しながら、ここまでやってきました。『CHAP』は音作りに関しても今まで以上に細かくなっていて、Decay(ディケイ)なんかもすごく意識したり。僕らふたりだからこその軽快さがあります。エドガー・サリヴァンとしての価値観を定義している作品になりました。『NEWS』とは違ったニュアンスになっています。
――『CHAP』ってスラングで、「野郎」とか「ヤツ」という意味なんですよね。
佐々木:そうです。6月のワンマンショーでは、ミニアルバムの曲をたくさんやりたいですし、その場でしかできないアレンジも入れていきたい。そして、ライブにはいろんなCHAPを呼びたいです。
――それはゲストミュージシャンということですか。
佐々木:それもありますし、あとお客さんですね。ワンマンでは仲間をどんどん増やす感覚でやっていきたいです。
エドガー・サリヴァン 撮影=ハヤシマコ
取材・文=田辺ユウキ 撮影=ハヤシマコ

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