ずとまよから世間に捧ぐアンチテーゼの正体は「ハゼ馳せる果てるまで」

ずとまよから世間に捧ぐアンチテーゼの正体は「ハゼ馳せる果てるまで」

ずとまよから世間に捧ぐアンチテーゼ
の正体は「ハゼ馳せる果てるまで」

キャッチーさに隠された生身の人間らしさ

ずっと真夜中でいいのに。』(通称ずとまよ)は、2018年6月にYouTubeに『秒針を噛む』のMVを公開したことを皮切りに、驚異的なスピードで人気が急上昇しているアーティストだ。
ACAね(Vo.)のTwitterアカウント(@zutomayo)は、今や20万人以上のユーザーがフォローしており、2019年11月にメジャーデビュー作であるミニアルバム『正しい偽りからの起床』をリリースした。
人気があるにもかかわらず、『ずっと真夜中でいいのに。』はメンバーの素顔や素性だけでなく、メンバー構成まで明らかにしていない。そのミステリアスな姿も相まって、詩的で抽象的な歌詞はずっと真夜中でいいのに。の魅力の一つだ。
その歌詞についての考察ツイートや、解釈記事を載せたウェブページなどもあり、意味について様々な想像を膨らませることができる歌詞は『ずっと真夜中でいいのに。』の強みと言えるだろう。
この記事で取り上げる『ハゼ馳せる待てるまで』も、もちろんそんな楽曲の1つだ。
また、楽曲のタイトルからも伝わるように『ずっと真夜中でいいのに。』の歌詞は、意味に重みや深みがあるだけでなく、重厚感のある言葉遊びをしてキャッチーにまとめている楽曲が多い。
この記事では、そんなキャッチーさに隠された生身の人間らしい感情を読み解いていく。
ハゼ馳せる果てるまで 歌詞 「ずっと真夜中でいいのに。」
https://utaten.com/lyric/yc19110103
世の中に存在する“生きづらさ”や“閉塞感”。生きることを諦めてしまわない限り、きっと死ぬまでそれらと付き合っていかなければならない。
人との関わりの中で上手くいかないこと、自分の思いが相手に伝わらないこと。もしかしたら、そんなことの繰り返しが人生なのかもしれない。
自分が思う正義を声高に主張するだけが正義ではない。時には曖昧なまま飲み込むことも必要だろう。
でも、世界中に生きる全ての人がそんなふうに器用に生きられる訳ではない。『ずっと真夜中でいいのに。』の音楽は、不器用にしか生きられない人たちの居場所なのだ。

不器用にしか生きられない人へ捧ぐ歌詞
ハゼ馳せる果てるまで 歌詞 「ずっと真夜中でいいのに。」
https://utaten.com/lyric/yc19110103
『ずっと真夜中でいいのに。』の歌詞と同じように、物事は複数の意味を同時に含んでいる。
目の前で笑っている人は嬉しい気持ちと同時に、心のどこかに悲しさを抱いているかもしれない。「ごめん」と謝る人の心の中にはフツフツと燃え上がる怒りが存在するかもしれない。
笑顔の裏にある感情に想像を向けずに表面だけを攫って、まるで意思のないコンピューターと話しているかのようなやりとりが、不器用にしか生きられない人たちの心を徐々に疲弊させていく。
正解が分かったらそれ以外の可能性に目を向けられなくなる。そんな関わり合いなんて、きっと面白味がないだろう。私たちは人工知能ではない。
この歌詞からは、人間にしかできないことに頭を使えよ、なんて強い主張がされているようにも感じる。

ハゼ馳せる果てるまで 歌詞 「ずっと真夜中でいいのに。」
https://utaten.com/lyric/yc19110103
人より多くのことを考えて、過敏に感情を動し、徐々に生きることに疲弊していく。
きっと、不器用にしか生きられない人は少なくない。それでも頑張って取り繕って涼しい顔をしている人たちの葛藤を歌う『ハゼ馳せる果てるまで』は、その苦しさがどこまでも人間らしい楽曲だ。
現代社会へのアンチテーゼが同時に描くものは…
ハゼ馳せる果てるまで 歌詞 「ずっと真夜中でいいのに。」
https://utaten.com/lyric/yc19110103
疲れるほど思考にエネルギーを使わなくても、きっと人間は生きていくことができる。人混みの中をただなんとなく歩いて、敷かれたレールの上をなんとなく進んで、そして順風満帆に人生の幕を閉じることはできるだろう。
人間らしく頭を使い、考えて生きる人生を諦めきれない人は、きっとそんな誰もが欲しがるような幸せを得ることは難しいだろう。それでも生きていくために綺麗事で身を守り、自分が思い描く正義に思考を巡らせて生きていく。
そんな姿に同調する人々もきっといるだろう。しかし、きっとそんな人々はまたすぐに離れて別の場所にいってしまう。
表現者である『ずっと真夜中でいいのに。』が、こういった意味を持った歌詞をもつ楽曲を発表したことには、彼女たちなりの世の中に対するアンチテーゼなのではないだろうか。
毎日数えきれないほどのコンテンツが生まれ、消費されていく。消費する側はきっと楽しいだろう。日々、新しい何かに出会えるのだ。それでは、その中身を作っている人は?
人々はその中身を作っている人も、同じように生身の人間なのだということを時々忘れてしまう。
この曲は、そんな世の中の形に警鐘を鳴らしているのだろう。

ハゼ馳せる果てるまで 歌詞 「ずっと真夜中でいいのに。」
https://utaten.com/lyric/yc19110103
「異なる自分を愛していたいの」。この曲を締めくくるフレーズは、どこまでも人間らしい欲求をストレートに紡いだものだ。
“他人と異なる自分”“世間と異なる自分”そんな自分を愛してあげられるのは自分だけなのだから、命果てるまで向き合っていく。
『ずっと真夜中でいいのに。』が『ハゼ馳せる果てるまで』で描く人生像は、彼女たちの主張であると同時に、不器用にしか生きられない人たちへと捧げられた力強い応援歌だろう。
TEXT DĀ

UtaTen

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