【ニコラス・エドワーズ
インタビュー】
聴いてくれる人の側に
いられるようなものを作りたかった
曲そのものを感じられる
歌い方を心掛けました
カップリングのEDM色が強い「Double or Nothing」は“イチかバチか”という意味のタイトルを掲げていますが、この曲も大変な経験から生まれたんですか?
これは自分勝手な人を好きになってしまったという曲ですね。僕、最大級に寂しがり屋でかまってちゃんなのに最大級にプライドが高くて。
面倒臭い人じゃないですか!(笑)
そうなんですよ。最大級に面倒臭い(笑)。向き合ってほしいと思っているんだけど、“向き合ってよ”って言ってしまうのは違うんです。自分の意思で向き合ってほしいんですよね。この曲で描いたのはロシアンルーレットのような恋愛。上手くいっても幸せにはなれないし、上手くいかなかったら傷付いてしまう。良いことは何もないと分かっているんだけどって。
スリリングな恋愛ではありますね。
そう。レッドフラッグな状況をエキサイティングだと思って突っ走ってしまう人間の本能とか衝動を描きたくて、スピードを出して走っている車に乗っているというシチュエーションにしているんですね。いろいろな効果音が入っていてなかなか劇的な曲になっていると思います。
女性目線の歌詞ですが、ニコラスさん自身にもそういう部分があると?
僕もスリリングなものに惹かれがちですね。小さい頃からまだよちよち歩きしかできないのに走ろうとする子供だったらしくて、よく親に“あなたの人生は全部そう”って言われます(笑)。自分の性分が出ている歌ですね。
「I Like It (Turn Up) (English ver.)」はアルバム『うわノそら』に収録されていた曲「親不孝」の英語バージョンなのですが、元曲は福岡の親不孝通りでハロウィンの格好をして呑んでいた時のことを書いた曲でしたよね。
はい(笑)。実はこの曲の歌詞はレコーディングの2日前に全部書き直したんです。最初はもとの日本語の歌詞にもっと寄せようと思っていたんですけど、欧米には“親不孝”という概念があまりないので、どうしようかと思っていたら夜中に“I Like It”っていうフレーズが急に閃いたんですよ。主人公は一生パーティーしていたいっていう現実逃避をしていて、目的もないのでずっと迷っていようって開き直っている人。文化圏の違いはあるけど「親不孝」と通じる部分もあるし、滑り込みセーフで浮かんだ歌詞ですね(笑)。この曲を選んだのはサウンド面が今作に近かったからで…お洒落な作品にしたいという気持ちがあったんです。
全体的にグルービーで洗練されていて、大人のニコラスさんが感じられるシングルになっていますものね。
『うわノそら』の主人公は元気で明るくて頑張っている主人公だったんですけど、今作では聴いてくれる人の側にいられるようなものを作りたかったんです。「Tears」と「Double or Nothing」はほとんどウィスパーで歌っていて、「I Like It (Turn Up) (English ver.)」ではサビでスリルを感じる歌い方ができたと思っています。技術というよりも声質や発音、語尾にこだわって、以前よりも曲そのものを感じられる歌い方を心掛けました。“大丈夫じゃない時があっても、誰もがそういう時があるから、今は光が見えなくてもひとりじゃない”というメッセージを感じてほしいなって。なので、次のアルバムも楽しみにしていてほしいですね。
取材:山本弘子