アニメ映画史を変えた「白蛇伝」「エ
ースをねらえ!」「AKIRA」それぞれの
“リアル”

第2部では「エヴァ」トークも弾んだ、氷川竜介氏、稲垣早希、原口正宏氏(左から) 第32回東京国際映画祭「ジャパニーズ・アニメーション部門」の関連シンポジウムが11月2日、東京・六本木ヒルズで開催され、同部門のプログラミング・アドバイザーを務める氷川竜介氏(明治大学大学院特任教授)、アニメーション史研究家の原口正宏氏(リスト制作委員会)が登壇した。
 「アニメ映画史、最重要変化点を語る」と題し、第1部では今回の特集上映「日本アニメ映画マスターズ」に、「白蛇伝」(1958)、「エースをねらえ!」(79)、「AKIRA」(88)の3本を選んだ狙いと意義が語られた。氷川氏は、「(選出した作品)以前・以降で語られるような作品」を意識して選んだと振り返り、若者がアニメの歴史に触れる出発点になるよう「ソリッドに絞りこんだ」という。「アニメを単体で楽しむのも面白いけれど、歴史を知るともっと面白いと思う」と語る原口氏は、日本のアニメが劇場アニメ、テレビアニメといった制作環境の違いや、ハングリーな状況のなかで新しい表現方法が生まれたと解説する。
 アニメにおけるリアリティの解釈の違いに話題がおよぶと、「『エース』では撮影技法やカッティングで“主観的なリアル”を表現していて、後年のアニメに与えた影響は大きい」(原口)、「出崎統監督は、動かさずに映画らしさを追求することに当時から自覚的だった。これは画期的なこと」(氷川)と称賛。東映動画(現・東映アニメーション)の「白蛇伝」をルーツに、宮崎駿監督と高畑勲監督が「アルプスの少女ハイジ」などで実現させた“客観的な(時間や空間の)リアル”との対比についても言及された。
原口氏が作成したスライド「大友克洋と主要作品関連スタッフの流れ」 一方、「AKIRA」では、意欲のある若手アニメーターたちがカメラのレンズや人間の関節を意識した“作画のリアル”でディティール描写の基準を更新。90年代の「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」(押井守監督)や今敏作品はその流れのなかにあることが、原口氏の作成したスライドを映しながら説明された。氷川氏は、アニメのリアリティを考えることは「どうやって(アニメを)映画にするかと考えるのと同義で、不可分な問題」と述べ、「日本アニメ映画の到達点」として選んだ5本(「海獣の子供」「きみと、波にのれたら」「天気の子」「プロメア」「若おかみは小学生!」)は、その回答として見ることもできると選出の意図を明らかにした。
 第2部には、「エヴァンゲリオン」のアスカのものまねで知られる芸人・タレントの桜 稲垣早希がゲストとして参加。和やかな雰囲気のなか、「エヴァ」や、アニメの制作現場を描いたテレビアニメ「SHIROBAKO」の話に花がさき、原口氏が稲垣に“マニア道”への入り口を解く一幕も。現在妊娠中の稲垣は、「普段見ているアニメを、作り手が葛藤しながら作っていることが知れて、改めてアニメに感謝する日になりました」と述べ、「生まれてくる子がどんなアニメを見るのか楽しみです」と感慨深そうに話していた。
 第32回東京国際映画祭は、11月5日まで開催。
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