ハンブレッダーズ「イマジナリーフィ
クション」とツアーで得た宝とは

“こどものままで おとなになろう”ツアー 東京編 2018.12.2 新宿LOFT

大阪在住の4人組ロックバンド、ハンブレッダーズ。11月に2ndミニアルバム『イマジナリー・ノンフィクション』をリリースした彼らが、それを記念し、東名阪対バンツアーを開催した、東京。新宿LOFT公演は2(ツー)とのツーマン。本来はcinema staffも含めてのスリーマンだったが、cinema staffは飯田瑞規(Vo/Gt)のオーバーワークによる喉の不調のため、出演キャンセルとなった。
結果的に、似た者同士によるツーマンになった。例えば、“ネバーエンディング思春期”を掲げるハンブレッダーズ。彼らがこの日演奏した「スクールマジシャンガール」では、“君”と目が合っただけで堪らない気持ちになり何も喋れなくなる、しかし何故だがメロディだけは沸々と湧いてくるのだという“僕”が、その状況を黒魔術のようだと言っている。ものすごい喩えだ。例えば、“エピソード2”を意味するバンド名を掲げ、ロックバンドの持つ希望を信じ続ける2。彼らがこの日演奏した「NEVERLAND」には、<昔仲良かったバンドのブログを見たら/ある日を境に別れも告げず放ったらかし/きっと彼らは大人になって/ここを出るって決めたんだね>というフレーズがある。かなり赤裸々だ。こうして歌詞の内容を書き出してみるとよく分かるように、2組とも、ベクトルは違えど、普通に言うのでは恥ずかしいようなことを歌にしているような人たちという点は共通である。ツアータイトルの“こどものままで おとなになろう”とは、ハンブレッダーズ「弱者の為の騒音を」の一節であるが、その言葉はまさに、2組のことを言い当てているようだった。
2のライブは、MCは短めに留め、矢継ぎ早に曲を演奏していくような構成。1時間弱で13曲も演奏したうえに、最新作である会場限定盤シングルから「ニヒリズム」「ヤケのダンス」も披露した。アクセル踏み込みっぱなし、ブレーキなんてもう知りませんみたいな、衝動剥き出しのバンドサウンド。その渦中にある古舘佑太郎(Vo./Gt.)は、cinema staffの件について「ボーカリストが喉を壊す時はキャパシティを超えるほど頑張ったということ」と触れながら「今日は彼らの分も喉を嗄らして歌っていきますのでよろしくお願いいたします」と絶唱し続けていた。
ハンブレッダーズ photo by 南雲直人
そしてハンブレッダーズ。先に書いてしまうと、この日は、ムツムロ アキラ(Vo&Gt)のボーカルの調子があまり良くなかった。変化があったのはライブの後半。6曲目「ファイナルボーイフレンド」は、声が裏返らないギリギリのポイントで何とか踏ん張りながら歌い終えたが、それ以降、明らかに声を出しづらそうにしていた。しかし、後にムツムロ本人も言っていたように、他の3人、吉野エクスプロージョン(Gt&Cho)、でらし(Ba&Cho)、木島(Dr)は“普段通り”を貫いた。バンドのアンサンブルは前へ前へとドライブし、誰一人表情を曇らせることはなく、MCも明るい。そして吉野&でらしは、いつも以上に大声で、大きく口を開けながらコーラスをしている。そんなメンバーの様子がムツムロの励みになったようだ。
ハンブレッダーズ photo by 南雲直人
ハンブレッダーズ photo by 南雲直人
ハンブレッダーズ photo by 南雲直人
ハンブレッダーズ photo by 南雲直人
結果、バンドは一切挫けなかった。「こんなバンドを好きだと言ってくれる物好きなみなさんへ作った曲があります」と届けた「CRYING BABY」、「弱者の為の騒音を」に表れた聴き手に対する誠意は観る者を強く揺さぶる力を持っていたし、どうしようもない時はいつも音楽に救われてきたのだという話からの「DAY DREAM BEAT」はビリビリとした気迫に満ちていた。最後のサビではオーディエンスも歌声で加勢し、ライブハウスが大きな生き物になった。
ハンブレッダーズ photo by 南雲直人
今年の夏にイベントで彼らを観た時、「自分が本当に感じたことでしか曲を作れない」「だから今は恋愛の曲が多い」とムツムロは話していた。一方、その後リリースされた最新作『イマジナリー・ノンフィクション』では、自分たちがロックバンドに心を動かされる理由、そのメッセージを届ける相手がより明確に描かれている。この日のライブがこのような内容になったのは、『イマジナリー・ノンフィクション』という作品と決して無関係ではないのだろう。
ハンブレッダーズ photo by 南雲直人
逃飛行」を演奏し終えたあと、オーディエンスに向けて、ムツムロが「愛してるよ!」と叫んだ。「こんなこと言うの柄じゃないけど」という前置き付きではあったが、たまにはちょっと臭いことを言いたくなる夜があっても良いじゃないか。このツアーで得た宝を握りしめて、ハンブレッダーズは来年3月、初の東名阪ワンマンツアーを開催する。
ハンブレッダーズ photo by 南雲直人

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