ぞんびの『だいっきらい東京』はどのくらい嫌い?

ぞんびの『だいっきらい東京』はどのくらい嫌い?

ぞんびの『だいっきらい東京』はどの
くらい嫌い?

今回とりあげるのは2017年9月27日発表の3rdシングル『だいっきらい東京』だ。

これまで『腐り姫』『死ねばいいのに』などのキャッチ‐な曲名を発表してきたが、今回もある意味ではわかりやすく、覚えやすいタイトルだ。
ぞんび『だいっきらい東京』

『だいっきらい東京』の舞台となる「東京」のイメージは、真夜中の東京だ。「都会のネオン」「トラウマ的」など、偏ったイメージが垣間見える。夜の歓楽街の喧騒や、そこに集まる「嫌な存在」について歌っているのだ。真昼間のビル群や、下町の風景など、場所によってころころ顔を変える東京の、その一角を「大嫌いなこの街」と歌っている。
その「大嫌いなこの街」が、「僕の全てを変えてくれた」という。
「変えてくれた」という言い方に、なにかひっかかりを感じないだろうか。それは感謝にもとれるし、皮肉にもとれる。「変わってしまった」でも「変えられた」でもないところが、ひっかかりを感じる原因だ。「大嫌いな街」が「変えてくれた」自分を、この歌詞の主人公は「好き」なのだろうか。それとも、東京と同じに「嫌い」なのだろうか。
少し子どもっぽい自暴自棄な印象に変わる

「大嫌いなこの街」では「大嫌い」と漢字だったのに、ここではタイトルと同じく「だいっきらい」と平仮名になっている。「だいっきらい」と表記することで、少し子どもっぽい自暴自棄な印象に変わっている。「大嫌い」より少し「嫌い」の印象が弱まっているようにも見えるし、逆に強くなっているようにも見える。あるいは「大っ嫌い」という平仮名混じりの書き方が単純にいやだったのかもしれないが……。
歌詞を追ってみると、この「だいっきらい」はただ「東京」という街そのものだけを指しているのではなく、そこに巣食う人々のことをも指していることが伺える。
「時に本性を隠して」「いたずらに嘘をつく」のは街だけではないだろう。むしろ東京に居ついている「成金デブ」や「ホスト紛いのゴミクズ」に対する憎悪が見え隠れしている。
「僕」を「変えてくれた」のはあくまで「東京」という街であって、決して「成金デブ」や「ホスト紛いのゴミクズ」という人間たちではないのだ。
歌詞の後半では、非常に分かりにくくはあるが、「東京」という街への複雑な愛情が、多少なりとも垣間見えるようだ。「だいっきらい」と突き放しているのに、東京への思い慕う気持ちが、どこか消そうとしても消せない。「だいっきらい」という言葉の中に、それだけではない複雑な感情が見えるのだ。
是非一度、再生してみて
「東京」という街に対して、あなたはどんな感情を抱いているだろうか?ぞんびの『だいっきらい東京』を聴いて、少し考えてみるのも面白いかもしれない。
『だいっきらい東京』のMVには、最後まで見るとある「仕掛け」というか、オチがついていて笑える。なんだか情けない主人公の、もっと情けない人間関係が縮図のように描かれている。それは「東京」という街への偏見かもしれないが、どこか頷いてしまうような魅力がある。
是非一度、再生してみて欲しい。
TEXT:辻瞼

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