【school food punishment】
取材:宮本英夫
「sea-through communication」は思いきりエレクトロポップ色の濃い曲ですね。
行くところまで行こうと思ったんですよ。自分たちの中にはロックでハードな面とポップな明るい面とがあって、今回はポップな面を見せようと思ったので。2ndシングルの『butterfly swimmer』の時もポップにしたつもりで、賛否両論あると思っていたんですけど、意外にスンナリ受け入れられてしまって(苦笑)。“自分で思っていた境界線はもっと越えていけるんだ”と思ったんですよね。私が今行きたいと思っているのは確実にポップ路線だし、もっと歌いたいんですよ。この曲に関して私は歌と歌詞だけをやりますっていうことで、ギターを弾いてないし、ライヴでも弾かないんです。
では、サウンド作りはメンバーに主導権を任せて?
お願いします!って。でも、“音はもっとこんな感じで”“これはちょっと違う”とか、相変わらず注文だけは多い(笑)。アコギはプロデューサーの江口(亮)さんが弾いているんですけど、“もっとザクザクした感じで”って言ったら“うるさい!”って怒られました(笑)
歌詞はどんなふうに?
今まで生きていて、一番歌詞を練りました。自分がヴォーカリストであること、歌詞を書く人であること、何を表現したいのか、どこへ行きたいのか…そういうことをすごく考えたんですよね。歌詞のテーマは“コミュニケーションのすすめ”で、コミュニケーションにはいろんな方法があって、それはすごくワクワクするものだよということを伝えたかったんです。
コミュニケーションについての歌を作ろうというのは、何かきっかけがあったのですか?
私自身は昔からコミュニケーションが苦手で、しかもこの数カ月でバンドに関わる人がすごく増えて、人とのコミュニケーションのことですごい悩んだ時期があったんですよ。ちょうどフランスにライヴをしに行った頃(7月2日~5日)ですね。フランスに行って、自分が身ひとつであることに気付いたんです。言葉が通じないから、思っていることがあっても伝える術がない。誰も自分のことを知らない。自分にできることは相手の話を一生懸命聞いて、何を言おうとしているのかをなんとなく感じようとすることと、わずかなボキャブラリーの中から言葉を探して、身振り手振りを交えて頑張って伝えることしかない。でも、そういう状況でも歌や音楽は伝わるということを、ライヴをやってちゃんと認識できたので、自分のアイデンティティは歌しかないんだと思ったんです。
それは大きな体験ですね。
結局自分は身ひとつで、感じようとすることと、伝えようとすることだけで生きてるわけだから、“余計なこといっぱい考えてたな~”と思って。コミュニケーションがうまくできない自分だからこそ、“そんな私でもこういうことを思えたよ”ということを残しておきたいと思って書きました。自分はそっちの人でありたい、ということです。私の中では、今までで一番大事な曲かもしれない。サウンドも新しいですけど、自分の中の意識改革として新しいことが見えました。悩みまくった結果としてここに来れたことがうれしかったです。すごく大事な曲になりましたね。