【PUSHIM】今まで以上にパーソナルな
作品となった

力強い歌とメッセージを届けるレゲエシンガーPUSHIMが、3年振りのオリジナルアルバム『MILESTONE』を完成させた。出産、震災を経ていく中で感じた思いを伝える新作について話を訊いた。
取材:土屋恵介

オリジナルアルバムとしては3年振りの『MILESTONE』は、その間のPUSHIMさんの私生活が反映された作品のようですね。

今までの作品より、パーソナルなものになったと思います。もともとは去年出すつもりだったので、制作を始めた頃は、子供が産まれるとは想像もしてなかったし。なので、時間の経過の中で変化していったアルバムって感じですね。

シングルで「My Endless Love」を出した頃には、思いもしない変化が起きたと。

はい。その時はイケイケの曲を作りたい衝動に駆られてて、テンポのいいものを作ってた頃で。そのあとジャマイカに行って作業して、お腹が大きな時期に仕上げてく作業でもあったんです。子供に向けての曲が『MESSENGER』で、一番最近できた『You were a little boy』は震災以降に作った曲なんです。

人生の流れが垣間見れる、女性のさまざまな気持ちがアルバムを通じて出てますね。芯のある言葉が貫かれつつ、サウンドはバラエティーに富んでいるし。1曲目の「Good Morning Jamaica」は穏やかなメロディーのレゲエチューンで、歌詞は苦しみを歌にして、温もりも分かち合おうという広い愛情が歌われていますね。

ジャマイカのクライブ・ハントってプロデューサーと制作したくて、この曲とマイケル・ジャクソンのカバー『Human Nature』を向こうで録ったんです。で、いる時にハイチの地震があったんですけど、週に2回30分くらいしか水が出なかったりで、ほんとに電気より、水のない生活が辛くて。でも、ジャマイカ人は慣れてて、ペットボトルの小さいので体洗うとか、生活力に感心するとこも多かったんですよね。異国のジャマイカで思うことから、この歌詞を書いたんです。

その歌詞が、今の日本の状況にすごく当てはまるものになりましたね。多くの人の心に灯火を照らす感じがします。夏っぽいさわやかな「Mr.Teaser」などを挟みつつ、「Make a pose!」は、シンプルなビートと歌がメインで攻めていく、PUSHIMさんのカッコ良さが出た曲ですね。

森 俊也さんとの曲ですけど、彼とは今まではスケールの大きい歌モノを作ることが多かったんです。今回は、それとは違う、訳分からんものを作ろうかって(笑)

(笑)。歌詞では、新しい時代を作るのはあなたの気持ち次第って内容で、若い世代を引っ張ている感じがありますよ。

やっぱり、音楽やファッションにしろ、誰かの真似じゃなく、自分で自信を持って生み出すものが面白いよって若い人に言いたかったとこはありますね。

MIHIRO~マイロ~さんをフィーチャーしたやさしく明るいメロディーの「誓い」は、自分を信じる思いを歌ったミッドチューンですね。

MIHIROはF.O.Hのメンバーで、長い付き合いでやっと一緒に作れたんです。この曲をより活かしてくれる歌は彼だと思って。すごくいいものになりましたね。妊娠中に作った歌で、今までひとりで好きなように生きてきたけど、命ができたことでひとつ責任ができたし、“よし頑張らなきゃ”って書いた曲なんです。

「Interlude~やつらの足音のバラード~」は昔のアニメ『はじめ人間ギャートルズ』のエンディング曲で、しかもアカペラで赤ちゃんをあやしながら歌っているという。

大好きな曲で、ナイヤビンキ調でレゲエに変えて歌いたいなって思ってたんです。アニメのエンディングの1番はそのままで、勝手に2番を自分で作っちゃったんですよ(笑)。で、子供に歌ってるのをiPhoneで録音したら面白くて、みんながこれでいこうってそのまま収録したんです。

この2曲から子供に向けた「MESSENGER」への並びは、リアルなPUSHIMさんの流れとリンクしますね。そして、「You were a little boy」はダビーでオーセンティックなサウンドで、今の世の中のおかしい物事を歌う曲。

やっぱり、綺麗なことばかり言ってても音楽じゃないし、一般市民代表として、人前で歌ってるメッセンジャーなんでね。私と同じように不安に思ってる人はいっぱいいるだろうし、震災や原発のことがあったあとに、絶対書かなきゃいけないなって。

正直、何を信じていいのか分からない状況ですもんね。そこで見極めてく目、人間らしく生きてく大事さが伝わってきます。

やっぱり、こっちは弱者。ただ、心の懐に持ってるものは多いんです。欲するものはあるけど、私たちは素直に思いっ切り笑えてるよって歌ってるんです。

アルバム本編最後の「さよならまた会う日まで」は、この世を去った人への感謝を歌ったゴスペル調の曲ですね。

ずっと尊敬してた友達が亡くなって。彼女と深くつながりのあった、Moominやさかいゆうくんもコーラスしてるんです。みんなでお世話になった気持ちを歌いましたね。

まさにこのアルバムは、PUSHIMさんの3年間の出来事を綴った作品であり、人間の生から死まで描いた作品のようですね。

そうなりましたね。みんな誰しも経験することですし、感じるものが届いてくれればいいなって。聴いてくれる人が、しんどくなった時、気持ちが迷った時に“私、まだいけるかも”と思ってもらえるものになったかなって。自分の気持ちさえ持ってれば何とかなるかも、って思えるアルバムだと思います。

PUSHIMさんの人としての成長感から生まれる、メッセージが新たなステップに入ったなって印象も強いです。

そういうアルバムになっていればいいなと思いますね。歳を重ねると書くことが増えていくし、説得力のある歌を歌っていきたいと改めて思いますね。まあ、母親としてはまだ新人なので(笑)。働く母ちゃんとして頑張っていきたいです。
『MILESTONE』2011年07月20日発売Ki/oon Records
    • 初回盤(DVD 付)
    • KSCL-1809〜10 3500円
    • 通常盤
    • KSCL-1811 3059円
PUSHIM プロフィール

プシン:2000年3月に1stアルバム『Say Greetings!』(Greetingsはジャマイカで“初めまして”の意味)をリリース。朝本浩文とのコラボレーションや雑多なジャンルを飲み込んだスケールの大きい世界を展開し、サウンドの隅々から主張をみなぎらせている。ダンスホールやヒップホップ、R&Bまで歌いこなす器のデカさは、いわゆるディーヴァ系の括りには収まりきらない。デビュー15周年を経た16年1月、自身が新たに設立したレーベル“groovillage”より、アルバム『F』をリリース。PUSHIM オフィシャルHP

OKMusic編集部

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