【堂島孝平】20周年を記念した王道ポ
ップスアルバム『VERY YES』
デビュー20周年を迎えた堂島孝平がニューアルバム『VERY YES』をリリース! 洗練されたポップサウンドと“全てには限りがある。だから、楽しもう”という意思がひとつになった本作からは、現在の彼の充実ぶりが伝わってくる。
取材:森 朋之
20周年のアニバーサリーイヤーの始まりは、2015年2月 22日に中野サンプラザで行なわれた『堂島孝平 活動20周年記念公演オールスター大感謝祭!』でしたね。
そうですね。本編だけで5時間、自分を含めて出演したミュージシャンの数が36人。本番中に真心ブラザーズのYO-KING先輩から“痩せた?”って言われたんですけど(笑)、家で体脂肪率を測ってみたら、3.9パーセントくらい減ってて。それくらいエネルギーがあるライヴだったし、20周年のでっかい花火を打ち上げさせてもらったなって。
ニューアルバム『VERY YES』も20周年を意識してました?
“20周年記念アルバムだ”ということを考えすぎちゃうと、あまり面白くないなって思ったんですよね。そのときどきで反射的に“やりたい”と感じること、自分にとってビビッドなことに挑戦し続けてきたからこそ、今があると思っていて。今回もそこを大事にしたかったんですよね。
あくまでも堂島孝平の“今”を表現しようと。
そうですね。今回は“ド”ポップスをやろうと思ったんです。ここ最近はキーボード・レスの編成でやることが続いてたんですよ。それはポップミュージックをソリッドなものに落とし込むという自分なりの挑戦だったんですけど、“今、何がやりたいのか?どうすれば、自分が思っている音楽、歌いたいことができるのか?”と考えてみたら、自分が楽器を弾かないアンサンブルもいいなと思って。だから、まず楽器の編成から決めたんですよね。最初のイメージはラスベガスのショーバンドだったんです。4リズム(ドラム、ベース、ギター、キーボード)とホーンセクション、女性コーラス3人っていう。ほとんど楽曲がない時期から“こういう編成でやります”ってスタッフを説得しました(笑)。しかもね、ちゃんとメンバーが揃ってたんですよ、自分の周りに。渡辺シュンスケ(Key/Schroeder−Headz)とか、sugarbeans(作曲家、プロデューサーとして活躍する佐藤友亮のソロプロジェクト)とか。
アルバムのリードトラック「PERFECT LOVE」はまさに“ラスベガスのショーバンド”のイメージですね。
中野サンプラザのライヴや『ROCK IN JAPAN』で久しぶりに堂島孝平楽団をやって、“やっぱり楽しいな”と思ったのも大きかった。もともと堂島孝平楽団は“21世紀の坂本九”を目指して始めたんですよね。ビッグバンドなんだけどポップスで、賑やかでハッピーな感じがあるっていう。それが今回のアルバムでやりたいこととも重なったんじゃないかなって。ヒューマンタッチでありたいという気持ちもあったので。
すごく愛にあふれた楽曲なんだけど、途中で《許し合って生きると言っても 限界はあるし》というフレーズがあるのも堂島さんらしいですね。
そういうことしか考えてないんですよ、ほんとに。限りあるものをどう楽しんでいくか?というのが、ちょっと異常なくらい基盤になってるんですよね、何をやるにしても。大きなことで言うと“親の年齢がどんどん上がっているし、考えなくちゃいけないことがいっぱいあるな”とか、小さいことでは“美味いものしか食いたくない”とか(笑)。そういう感覚って、19歳、20歳くらいの時にはなかったですからね。
20歳くらいって“これが永遠に続くんだろうな”みたいに思ってますからね。
そうなんですよね。でもね、音楽も映画も演劇も、終わるからこそ感動するんですよ。必ず終わりがくるとか、“もう観られないかもしれない”ということがクライマックスにつながるというか。
「きみのため」にも、そのスタンスが反映されてますね。《明日はいつまでもありゃしないんだ/なるべく楽しい方へ 進んでけばいいだけ》という歌詞もあって。
「スマイリン ブギ」(2006年のアルバム『smiles』収録)という曲で《自分探しなんて いいかげん 面倒くさいことやめなよ》という歌詞があるんですよ。ちょうど30歳くらいの時なんですけど、“自分らしさは探すものではなくて、作るものだ”って気付いたというか。今はそれを超えて“何がなくなったら、自分ではなくなるか?”を考えるようになって。今回のアルバムは、そのことばかりを歌ってるような気がしますね。
ソウルフルなポップチューンから抒情的なバラードまで、カラフルなサウンドも印象的でした。
楽曲の振り幅は広いですよね。今年のバンドツアーの最終日に友達のパーカショニストが来てくれて、“ひとつのことをやってきたっていう重みを感じないところが、堂島孝平らしい”って言ってて。“軽ろみ”しかないんですよ、俺は(笑)。
“重み”じゃなくて“軽ろみ”(笑)。ポップスを作るアーティストとしては、良い意味で軽さがあったほうがいいんじゃないですか?
良いとか悪いではなくて、それしかできないっていう感じは拭えないですけど(笑)。しっかり芯を通してきたつもりだし、“自分にしか思い付かない発明をしたい”という情熱とロマンを持っていたからこそ、今に至ってるというのもあるとは思いますけどね。
今回の『VERY YES』というアルバムについては?
決してポジティブな気持ちではなくて、“YESから始めるしかないよね”っていう感じなんですよ。デビューしてからずっと、周りのスタッフからの提案には全部乗っかってきてるんです。前向きな意味でこだわりがないというか、基本“YES”から始めることで、ここまでやってこれたんじゃないかなって。
来年1月からスタートするツアーも楽しみです。
20周年の最後を飾るツアーなので、今までの自分の楽曲も満遍なく入れたセットを組みたいと思ってます。20年間で作ってきたいろんな曲と『VERY YES』の曲を抵抗なく一緒にやれたら最高ですよね。
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