多くのアーティストに影響を与えたJ.J.ケイルのソロデビューアルバム『ナチュラリー』
エリック・クラプトンが檜舞台に引っ張り出さなければ、おそらくJ.J.ケイルの名前は一部のファンのみが知るだけで終わっていただろう。ケイル本人も「自分は裏方として、名前を知られずに金を稼ぎたい」と語っていたことがあるが“事実は小説より奇なり”で、今ではケイルの名前を知らないロックファンのほうが少ない。発端はクラプトンの初ソロ作『エリック・クラプトン』(’70)にケイルの書いた「アフター・ミッドナイト」が取り上げられたことにある。この曲は長いキャリアを持つクラプトンの代表曲のひとつに挙げられるもので、ケイルはまずソングライターとして知られることになった。その後も、レーナード・スキナードが「コール・ミー・ザ・ブリーズ」をヒットさせ、キャプテン・ビーフハート、ブライアン・フェリー、ボビー・ブランド、ポコ、サンタナ、ウェイロン・ジェニングスといったアーティストがケイルの曲を取り上げるなど、70年代の彼はまさしく“裏方として金を稼ぐ”ことに成功したのである。今回取り上げるのは彼の1stソロアルバム『ナチュラリー』(’71)で、サウンドとしてはブルースをベースにしたルーツロック(アメリカーナ)作品である。本作は当時のルーツ系ロックとしては珍しく、リズムマシンを使うなど異色とも言える内容になっているのだが、歌、演奏、曲のどれをとっても最上級の仕上がりだ。本作こそクラプトンをはじめニール・ヤングやダイアー・ストレイツなど多くのアーティストに影響を与えた、ケイルの最高傑作と言っても過言ではない。