ギター弾きまくって45年、多くのミュージシャンに信頼されるギタリストはどんなキャリアを重ねてきたのか?
いわゆるセッション・プレイヤーとは、レコーディングやライヴなどにおいて、メインとなる歌手などのサポートという形でプレイする人たちのことだ。少ないリハーサルでも曲を的確に把握し、ほぼノーミスで演奏してしまう実力者たち。バンドでデビューしてからセッションの世界に入っていく人もいれば、最初から裏方の人もいる。そして、裏方であるが故に、そのバックグラウンドを知られていない人が多い。
星川薫と言ってわかる人は、相当な音楽ファンであるのは間違いない。クリーントーン主体の渋いギタリスト。職人肌のバッキングマスター。頼れるバンマス。モータウンのギタリスト、エディ・ウィリスのような絶妙のタイム感のリズムプレイや、STAXのスティーヴ・クロッパーのようなシンプル極まりないアルペジオなどは、どんなハイテクのギタリストでも恐れるもの。それを最も得意とするのがこの人だ。リズム隊の一角に溶け込むギタープレイは、シンガーにとって最高のガイドとなる。実力派のシンガーたちがこの人にバッキングを依頼するのには理由があるのだ。
一方、これまでに3作リリースしている自身のソロ作品では、グラント・グリーン直系のジャズ・ファンクを聴かせる。また、最新作となるメロン・ホーカーズ名義での作品は、ニューオーリンズ風味のイナタいファンキーなインスト作品。どちらも流行などとは無縁だが、その音だけで楽しくなってくる作品だ。
そんな星川薫は今年還暦を迎えた。それを記念して、星川がこれまでにサポートしてきたシンガーや、一緒に演奏してきたプレイヤーたちが集ってライヴが行われる。題して<45/60 還暦お祝いパーティ ギター弾きまくって45年>。その参加メンバーがすごい。中沢ノブヨシ、井手麻理子、ZOOCO、真城めぐみ(ヒックスヴィル)、村上てつや(ゴスペラーズ)、Bro.KORN、ジェームス小野田(米米CLUB)、そして鈴木慶一。ジャンルを超えてこういったメンバーが一堂に会するのも、星川の人柄の現れといえるだろう。
■最初はプロになろうとは
■思わなかった
星川薫は1958年、山形県生まれ。つまり、70年代前半に多感な時期を過ごしたことになる。
「幼稚園の頃、お袋がたまたまベンチャーズのレコードを持ってて、それを聴いたのが最初かな。ストーンズの「Heart Of Stone」とかもあったね。たぶん、リアルタイムに買ったものだね。それで、小学校のときにグループサウンズが出てきて、それからフォークル(フォーク・クルセダーズ)が出てきた。個人的に影響を受けたのはGSだね。育ったのが山形の鶴岡、湯野浜ってところなんだけど、海岸なの。海水浴場。夏にグループ・サウンズの、あんまり売れてないバンドだと思うんだけど、が来て、モンキーダンスの大会みたいなのがあって、カッコいいなあと思ったんだよ。でも、すぐに楽器を始めたわけじゃなくて、高校に入った頃に、よく一緒に遊んでる連中がロックが好きだったんだよね。それで、みんなでやる?ってことで始まったんだけど、ギターやりたいってやつはもうギターを持ってたの。アニキのやつを。残りのパートはジャンケンで決めて、負けてベース担当になった(笑)。その時はCCRやグランドファンクのコピーだね。でも、若いからベースを一人で、練習しててもあまり面白さが分からなかったの。だから、自宅に帰ってギターの練習をしていたんだよね」
高校生の頃には、いろんなバンドが集まり、地元の会館などを借りてライヴをやっていたというが、あくまでも趣味の範疇で、プロになりたいというわけではなかったという。そんな星川だったが、19歳で上京することになる。アン・ミュージック・スクールでギターを習うことが目的だった。
「1978年頃かな、クロスオーバーが流行ってきたの。それでスタッフとか聴くようになって、なんだこの音楽は?と思った。それまでロックだったのが、ジャズも分からないといけないのかなと思って、ジャズスクールに入った。でも、頑張ってプロになろうとは思わなかったな。学校に行っているとき、仲良くなったヤツがハコバンをやっていて、そいつが行けなくなったときにトラ(エキストラ)で行ってくれと。それで初めてそういうところに行ったのかな。当時はまだ譜面も読めないし。その時のバンマスが優しい人で、譜面を渡されて「この中で知ってる曲ある?」って、「じゃあ今日はそれだけやろう」って。そんなに優しいの珍しいよね。そこで初めてギャラをもらって弾くようになった。その1~2年後にそいつが辞めることになって、代わりにそのバンドに入ることになった。そのへんからプロの活動が徐々に始まっていった感じかな」
■ベイライツへの加入で
■R&Bのキャリアをスタート
そういった活動が続く中、80年代の半ばに、現在の星川につながる活動が始まる。それがベイライツだ。