いつかみんなの前でギターを弾いてみ
たかったあの曲

ミュージックソムリエ協会では、「こんな時に聞きたい音楽!」ということで、日常のヒトコマでふっと聞きたい音楽を選曲しました。選曲はすべて、ミュージックソムリエ(http://musicsommelier.jp)によるもの。
今回のテーマは、「いつかみんなの前でギターを弾いてみたかったあの曲」です。超絶テクニックで、みんなをあっと驚かせたり、気になる彼女へのアピールにしたり・・・・妄想が膨らむ曲をセレクトしました。

1.「Purple Haze」/Jimi Hendrix

「あのアーティストみたいに、爆音で音をひずませてギターを弾けたら・・・」なんて妄想する時に、頭に浮かぶアーティストの一人が、ジミ・ヘンドリックスではないでしょうか。「Purple Haze〜紫のけむり」では、ヘンドリックス・コードと呼ばれるE7#9が使われています。このコードは、ジャズでは使われることはあってもロックで使われることのなかったものだったので、初めて聞いた人たちは、ビックリしたことでしょう。ロックの世界では存在しなかったE7#9を不協音として効果的に使っているところに、ジミ・ヘンドリックスの音楽的センスの高さを感じさせます。

フェンダー・ストラトキャスターの右利き用を左持ちにして、時には歯で弾いてみたり、ギターを燃やしてみたりと、強烈なパフォーマンスで、観客を釘付けにさせるのはモチロン、ディストーション(アンプで音をひずませる)を効かせた音を爆音でかます!どれを取ってもカッコ良い!こんな風にギターが弾けたら、みんなぶっ飛ぶこと間違いなしです。

(選曲・文章/阪口マサコ)

2.「Johnny B Goode」/Back To The F
uture

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主題歌と言えば、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの「Power of Love」ですが、それと同じくらい観客の印象に残った曲が、「Jonny B Goode」でしょう。ロックンロールの創始者とも言われるチャック・ベリーが1958年に発表したこの曲は、物語が始まってすぐ、主人公マーティが挑んだオーディションシーン、そして発表の3年前に当たる1955年、マーティの両親にとって運命の日となるダンスパーティの夜と2回登場します。どちらのシーンでも、ギターを弾き始めたら、自分の世界に入り込みすぎて周りを静まりかえらせる結果になるのも、この映画の面白いポイントです。
でも、マーティが入り込んでしまうのが分かるくらい、ノリが良い曲です。最高にカッコいいイントロが決まれば、演奏していて気持ちいいでしょう。「ノリノリかつ、引かれずに!」と言った感じで、いつか私も弾いてみたい!聴いた後に楽器屋さんの前を通る時は、ギターの衝動買いにお気をつけください。

(選曲・文章/和久井直生子)

3.「Smoky」/Char

日本を代表するギターヒーローと言えば、この人でしょう。日本のギタリストが憧れ、尊敬するミュージシャン、Char です。「Smoky」は、1977年に発売されたファーストアルバムに収録された曲で、シングルでは発売されていないにも関わらず人気があり、彼の代表曲のひとつと言われています。
ギターのカッティングが、心地よく耳に残るのも「Smoky」の魅力ですが、このカッティングは、フェンダーのムスタングだからこそ実現したものです。ムスタングは、スチューデント・モデルと言われる、初心者向けのようなギター。弦を抑える場所を示す「フレット」の幅が少し狭いため、特徴的なカッティングを生み出せたそうです。
初心者向けのギターを超級ギタリストが弾くと、こんな魅力が出るなんて!!ますますCharの凄さを感じてしまいます。「初心者向けだから・・・」なんて軽い気持ちで手に入れたギターを弾きこんで、みんなの前でクールにカッティングを決めて「Smoky」を演奏してみたい!

(選曲・文章/阪口マサコ)

4.「未来の破片」/ASIAN KUNG-FU GEN
ERATION

今や日本のロックシーンで欠かせない存在となっている、アジアン・カンフー・ジェネレーションのメジャーデビュー曲です。
疾走感と力強さを兼ね備えたギター・リフは、今でもライブ会場などで、多くの人のテンションを見事にブチ上げています。発売から10年以上が経ちましたが、これまで多くの少年少女の手にギターを持たせるキッカケになったことでしょう。
パッと見た感じだと、大人しそうな青年のギター・ボーカルの後藤正文さんが、感情を表に出して情熱的に演奏する姿が、ロックンロールの元ある「抵抗」や「反骨」と言った感じを思い出させてくれます。
普段は、おとなしい人なんて思われている印象を打ち破って、みんなの前で披露したい曲です。

(選曲・文章/楠木智哉)

5.「Cause We’ve Ended As Lovers」/
Jeff Beck

「たくさんの女の子にモテたい」なんていう下心と妄想からギターを始めるという人は、古今東西多くいると思います。でも、「みんなの前で」を装って、実は、1人の大切な彼女のためだけに、ギターの演奏を捧げたい・・・という妄想もよくあるものです。
ジェフ・ベックの美しいバラード曲「Cause We’ve Ended As Lovers〜哀しみの恋人達」は、恋人に捧げるのにオススメです。この曲を書いたのは、スティーヴィー・ワンダー。スティーヴィーが当時の妻シリータに捧げて書いた曲と言われています。
哀愁ただようメロディーをジェフ・ベックが情感をこめて奏でています。使用しているのは、ハムバッキング・ピックアップがついた特別仕様のフェンダー・テレキャスター。ギターという楽器はこんなにも人の心を揺さぶることができるのだなぁと思わせてくれる1曲です。
タイトルはともあれ、彼女をギターテクで泣かしてしまいたい、と妄想したくなります。

(選曲・文章/阪口マサコ)

6.「Mr.Big」/Free

これぞ英国ロック! 4人のロックブルースバンド「Free」のキラーチューンとして名高い「Mr.Big」だが、私の中では70年、ワイト島ライブで行なわれたものがベストだと言いたい。
シンプル過ぎる音の骨組みはじっくり聴けば一音一音、丁寧に作り込まれており、あたかも鉄筋のごとくに堅牢な骨組みである事が解るだろう。
そして、後半のベースとギターの掛け合い、彼らがカタルシスを感じてプレイしているように私には思えた。
ギターのPaul Kossoffは26歳で短い生涯を閉じた。繊細な感性をギタープレイによってすり減らしたとも言えるだろう。

ロックが最もエネルギッシュに輝いていた時代。ワイト島ライブのパフォーマンスは、自分にとって最高の演奏だと断言したい!
なお、1989年にデビューした米国ロックバンド「Mr.Big」は、この曲にちなんで、バンド名を付けたのだ。

(選曲・文章/田中孝典)

7.「More Than Words」/ EXTREME

今日は大学の同窓会。
学生時代の仲間たちが久々に集まった。当時は90年代半ば。卒業してもう20年近く経ってしまったなんて信じられない。「今やアラフォー、あっと言う間にアラフィフだよ~」なんて苦笑してはいるが、実のところみんな10代20代の自分を、昨日のことのように抱えている。
会場は布川(ヌノカワ)君の自宅。布川君は在学中音楽サークルに所属していて、ギターが上手だった。大学を卒業して、その腕前を見ることはなくなったけれど、部屋の隅にアコースティックギターが置いてあった。
少し埃をかぶっているそのギターを、思い出話の流れから、布川君がおもむろに手に取り埃を手で払った後、チューニングを合わせた。
談笑する声が、少しずつトーンダウンしていく。
みんな、何の曲が飛び出すか期待しているのだ
果たして、こなれたフィンガーピッキングから鳴らされた音。
90年代当時の空気が鮮烈に蘇り、みんなの表情が輝いた。
普段、音楽を熱心に聴かなくても「この曲は知っている」という人は当時多かったのだ。曲名は、「More Than Words」
「More Than Words」は、アメリカのハードロックバンド EXTREMEが1990年に発表したセカンドアルバム「Pornografitti」からの曲です。

EXTREMEは、ギタリストであるヌーノ・ベッテンコートの天才的なプレイを全面に押し出したファンキーなハードロックが身上のバンドですが、異色のアコースティカルなこのバラードが全米No.1を記録し、一躍有名バンドの仲間入りを果たしました。

当時、この曲が演奏したくて、エレキギターをアコースティックギターに持ち替えたギターキッズも少なくなかったはず。

(8.へ続く)

8.「Million Miles From Home」/キザ
イア・ジョーンズ

曲が終わり、懐かしさと、今だ色褪せない曲の素晴らしさに和む仲間たち。続いて、同じ音楽サークルに所属していた木澤(キザワ)君が、次の奏者に名乗り出た。木澤君も、当時布川君とサークルで張り合った巧者。どうやらウズウズしてしまったらしい。

「おお~ギターバトル!」「いいね~!!」

仲間たちの声が弾む。

その声に応えるように、ファンキーでパーカッシヴなフレーズが飛び出した。今度は決して誰もが知っている曲という訳ではない。でも、その巧みなプレイに誰もが感銘を受けた。腕前は、学生当時から全く錆びついていなかった。いや、当時より切れ味を増していた。

「木澤、今でもギター練習してるんだなあ…」誰かが呟いた言葉に、不思議なほど胸が熱くなった。

その曲の名は、「Million Miles From Home」。キザイア・ジョーンズというアーティストのヒット曲だった。
「Million Miles From Home」は、ナイジェリア出身のシンガーソングライター/ギタリストのキザイア・ジョーンズの曲。1995年に発表されたアルバム『African Space Craft』に収録され、スマッシュヒットを記録しました。MTVなどで放映されたプロモーションヴィデオでもフィーチャーされた、見事なアコースティックギターのプレイは、90年代当時のルーツ・ミュージック回帰の流れとも相まって、大きな評判を呼びました。

(9.へ続く)

9.「禁じられた遊び」/ナルシソ・イエ
ペス

木澤君の演奏が喝采を浴びて終わると、今度は成瀬(ナルセ)君がギターを手にした。成瀬君は学生時代から成績優秀だったが、おとなしく無口で、あまり自分のことは語らず、いつもニコニコと仲間の様子を眺めているような人だった。

「成瀬、ギターなんて弾けたの?」

長い付き合いの仲間の知られざる一面に、ちょっとしたどよめきが起こった。「でも、木澤君のあのテクニックを駆使した見事な演奏の後に、何を披露するのだろう・・・?」みんな同じ気持ちでいるようだ。期待とも好奇心ともとれる視線が、成瀬君に集まった。

奏でられたのは、実に意外な調べだった。

流麗なクラシックギターの指使い。誰もが知っている悲哀に満ちたアルペジオとメロディ。「おおお~!?」と驚きの声が上がった。と、同時に、クスクスと笑い声も起こった。バカにしている訳じゃない。選曲も演奏ぶりも、あまりに意外だったからだ。

「ここで “禁じられた遊び" かよ~!」

演奏の手を止めず、成瀬君がニヤリと笑った。みんな「やられた」と思った。でも、みんな笑顔だった。
文中の「成瀬君」による演奏曲名は、正しくは「愛のロマンス」。

元々はスペイン民謡ですが、1952年に公開されたフランス映画「禁じられた遊び」のメインテーマとしてあまりにも有名。そのためこの曲自体が「禁じられた遊び」と呼ばれることが一般的になってしまいました。演奏はナルシソ・イエペス

映画の制作費がかさんでしまい、サウンドトラックをナルシソ・イエペスによるギター1本の演奏のみにせざるを得なかった・・・という裏事情が、誰もが知る名演を生み出すきっかけになりました。

(選曲・文章/伊藤威明)

著者:ミュージックソムリエ協会

OKMusic編集部

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