ダンスロックの枠には収まらない、K
EYTALKの多彩なルーツとは?

インターネットラジオ「FaRao」で配信中のアーティストを毎回一組、ピックアップ。ルーツを中心に、ジャンルや世代、国境を超えて広がる「音楽地図」を、音楽ライター 柴 那典が紹介する連載企画!

今回の『FaRao Music Discovery』でフィーチャーするのはKEYTALK。メジャーデビューから約1年、“いいメロディー”“ライヴで踊って盛り上がれる曲”というテーマを突き詰め、2014年最重要ロックバンドとしてメキメキと頭角を現してきた下北沢発の4人組だ。今年の10月にリリースしたシングル「MONSTER DANCE」がロングヒットを記録する中、12月17日にはアルバム『OVERTONE』を引っ提げてのツアーファイナル公演を記録したライヴDVD『OVERTONE TOUR 2014 at AKASAKA BLITZ』をリリース。ライヴハウスやフェスを拠点に噂が噂を呼ぶかたちで支持を広めてきた彼らの勢いが感じられる作品になっている。その背後にある独特のポップセンスをルーツから解き明かしていこう。
KEYTALKが結成されたのは2009年7月のこと。メンバーは首藤義勝(Vo&Ba)、寺中友将(Vo&Gu)、小野武正(Gu&MC&Cho)、八木優樹(Dr&Cho)の4人で、もともと小野と八木が高校時代に軽音楽部で組んでいたバンドを母体に、対バンを通して知り合った首藤、大学で一緒になった寺中が加わってスタートした。結成当初は寺中がヴォーカルを務めていたが、2010年にインディーズからの初シングル「KTEP」をリリースしたあたりから徐々に寺中と首藤によるツインヴォーカルのスタイルになったという。首藤以外は音楽大学出身という経歴で、メンバー全員が作曲を手掛けるのも大きな特徴だ。
メンバーの音楽的なルーツもかなり多彩だ。これまで雑誌やWEBのインタビューで語ってきたことによると、ポイントはロックだけでなく、J-POPや歌謡曲もストレートに吸収してきていること。まず寺中友将のルーツはゆずと尾崎豊。“ゆずのマネをしてアコースティックギターを弾いて、ハーモニカを吹いて。それから尾崎豊が大好きになって…という感じです”(「WHAT’S IN WEB」2013年11月)と、中学生の時に両者に出会って大きな衝撃を受けたことが彼の音楽のベースにある。ゆずでは「友達の唄」、尾崎豊は「傷つけた人々へ」が特に好きな曲だとか。
一方、首藤のルーツはサザンオールスターズ。小学校6年の時に初めて買ったCDが桑田佳祐の「波乗りジョニー」で、そこからずっと好きなのだという。“本当にサザンが憧れなんです。音楽的な造詣がとても深いのに、それを聴き手にまったく感じさせないところが本当にすごいなって”(「ナタリー」2013年11月)と語っている。一方で、10代後半からはカサビアンやザ・ミュージック、ブロック・パーティーなどのダンサブルなUKロックバンドも好んで聴いていたとか。日本のロックシーンではthe band apartやUNCHAINからも影響を受け、それが今のバンドの方向性にもつながっているという。
また、小野が最初に買ったCDはポルノグラフィティの「アゲハ蝶」。中学生の時はいちファンとしてJ-POPを熱心に聴いていた彼だが、“この曲の作曲をしたak.homma(本間昭光)さんの曲が好きで。初めて作曲家を意識した曲でもあります”(「SPACE SHOWER TV POWER PUSH!!」 2014年3月)と、その後はよりプロフェッショナルな観点からも捉えるようになったという。また高1からギターを習っており、その先生からの影響でジャズの素養もある。好きなギタリストのひとりにロニー・ジョーダンを挙げていたりもする。(「MUSIC SHELF」2013年11月)
そして、八木のルーツになっているのはthe band apart。UNCHAIN、WRONG SCALEなども含め、00年代以降の日本のロックシーンに根付いたグルービーなバンドたちの系譜がKEYTALKのダンサブルなビートの根っこにある。さらに彼もジャズをルーツのひとつに挙げていて、中でも憧れが上原ひろみ。“僕が尊敬するピアニストの上原ひろみさんに「Keytalk」という曲があって。音程で会話するという意味だそうですが、音楽的ですごくいいなと思って”(「oricon」2013年11月)と、彼女の曲名が、KEYTALKのバンド名の由来になっていることを明かしている。
そういう多彩な音楽センスを持ち合わせる4人が集まったバンドだけに、そのごった煮感覚をポップに昇華する音楽性を確立するにおいては、インディーズ時代の初期からプロデュースを務めたTGMX(SCAFULL KING/FRONTIER BACKYARD)の手腕も大きかったはず。4つ打ちダンスロックをベースにしながら、キャッチーなメロディーセンスを全面的に打ち出していることが彼らの大きな魅力になっている。
そして、メジャーデビュー以降はさらにその感性が開花。歌謡曲やポップスのエッセンスを吸い込んだ楽曲が増え、アルバム『OVERTONE』に収録された「MURASAKI」や、シングル『MONSTER DANCE』のカップリング曲「エンドロール」など、80年代のアイドル歌謡のテイストをベースにした楽曲も増えてきている。
先日にはレーベルメイトのキュウソネコカミ、go!go!vanillasとの3組による対バンツアー『MUSIC TAGS Vol.2~バンド戦国時代~』で全国を回ってきたばかり。グッドモーニングアメリカやBLUE ENCOUNTなどとも各地でステージをともにし、同世代のバンド仲間との親交も厚い。ひと筋縄ではいかないセンスと底力を持ったKEYTALKは、2015年も音楽シーンを賑わせてくれそうだ。

著者:柴 那典

OKMusic編集部

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