『Aladdin Sane』/David Bowie

『Aladdin Sane』/David Bowie

異能の才を振りまいた
デヴィッド・ボウイのグラムロック
期の名作『Aladdin Sane』

時代を見抜く嗅覚に優れたボウイ

 デヴィッド・ボウイの1970~1980年代。その時期のローリング・ストーンズ同様、やること、進む方向、全てが時代の的のど真ん中を射貫いていたような感があった。T・レックス、ロキシー・ミュージック、スティーブ・ハーレイ&ザ・コックニーレベル、ゲイリー・グリッター、スレイド…etc、グラムロックとカテゴライズされたバンドが消滅し、あるいはその煌びやかな衣装を脱ぎ捨てて、ロック本来の路線へ、あるいはオルタナティブなスタイルへと変貌を遂げる中、ボウイは常に確信を持って音楽、映画、そして時には美術の世界へと、表現者として歩みをすすめていった。そう、彼ほどシンガー、ミュージシャンではなく、アーティストという呼び方が似合う人はいない。音楽について考えてみれば、早々とロックというフォーマットには見切りをつけ、自分の思う“最先端”を目指していくのだ。その萌芽が早くも『Aladdin Sane』に垣間見える。
 久々にアルバムを通して聴いたが、曲の配列やメリハリがうまく効いていて、思いのほか楽しめた。古くさくなっているかと危惧していたのだが、70年代末から80年代の初頭にかけてのパンク、ニューウェイブの時代にも、このアルバムは例えば「The Jean Genie」のような曲があるおかげでクールさを保ち、当時の若者に支持されただろうし、匂い立つようなボウイのカリスマ性は霞むどころか、発表から40年を過ぎた現代においても色褪せることなく、鮮烈に感じることが出来そうに思える。
※本作は2006年に「30th Anniversary (Remastered)」として再発されているのだが、別バージョン、ライヴ音源、未収録音源に加え、この時期ボウイがプロデュースし、モット・ザ・フープルに贈った曲「すべての若き野郎ども (All The Young Dudes)」のボウイのバージョンも収録されている。

著者:片山明

OKMusic編集部

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