木梨憲武インタビュー “触れる”ア
ートも公開する展覧会『GOKAN 〜5感
〜 木梨憲武』いよいよ開幕

木梨憲武による展覧会『GOKAN 〜5感〜 木梨憲武』が2023年6月7日(水)から東京・代官山ヒルサイドフォーラム&エキシビジョンルームで開催される。これまで全国各地の美術館でさまざまな展覧会を催し、計122万人もの人数を動員してきた木梨。今回新たに開催される本展では、新作のほか、TBSラジオ『土曜朝6時 木梨の会。』でリスナーから集めたシールを用いて制作した作品なども初公開。さらに、美術家・西村陽平との出会いから、西村の代表作や、西村が所蔵するハンディキャップアーティストの作品も同時公開し、木梨の作品との同時展示によるシナジーを楽しめる内容になるという。5月某日、木梨のアトリエへと伺い、展覧会にかける思いや見どころを聞いた。
触れたり体を動かしたり “五感”を使って楽しめる展覧会に
ーー今回の『GOKAN〜5感〜』。まずはどういうコンセプトの展覧会になりそうか教えてください。
いろいろなアートや美術関係の先輩、関係者のみなさん、そして長年アドバイスをもらっているプロデューサーに美術家の西村陽平先生をご紹介いただいたんです。西村先生は、目が見えなかったり耳が聴こえなかったりとさまざまなハンディキャップがあるアーティストや子供たちとつながりがある方。先生の作品はもちろん、ハンディキャップアーティストの作品、そして僕の作品も一緒に展示できたら……ということで始まりました。
展覧会では、触れられるアートの展示やワークショップのようなことができたらいいな。触れたり、抱っこできたり。触って怪我をしないようにとか、いろいろトラブルが起きないように配慮はしつつね。オブジェ的な作品も並ぶかなと思います。
ーータイトルの通り、まさに五感を使って楽しめると。
「触れないでください、作品を壊さないでください」みたいな警備体制の中でね(笑)。ま、触れたことで作品が壊れたら、それはそれでしょうがない。それがアートとなるかもしれないしね。
僕の仲間にブラインドサッカーの選手がいるんですけど、彼が僕の展覧会に来てくれたことがあって。奥さんがいろいろと横で解説をしながら観てくれたあとに「どんな感じか分かった?」と聞いたら、「なんとなく分かりました」って答えてくれてさ。空気感で理解しようとしてくれたり、分かってくれたりするんだよね。ハンディキャップがあっても、できるだけ参加したり体感したりできるような展覧会にしたいなと思ってます。
ーーこういったコンセプトの中、木梨さんの作品、西村さんの作品、そしてハンディキャップアーティストの作品が並ぶわけですね。
ハンディキャップアーティストや子供たちの作品は西村先生が選抜してくれて、20点ぐらいになるのかな。ぱっと描く子もいれば、長時間かけて描く子もいるそうですが、やっぱりどれも作品の威力がすごいね。
ーー木梨さんの作品は《感謝》のシリーズなどが展示されるのでしょうか?
そうですね。それから《REACH OUT》もいくつか展示します。あとは“触れられる”作品の新作です。今回、自分のInstagramで呼びかけたり、ラジオのリスナーに協力を仰いだりして、大量のシールを集めまして。自分だけでは集められなかったであろう相当な数を、みんなが協力してくれて……。本当に感謝です。
子供のときって、シール集めはするけど、それを貼れる場所ってあんまり無かったじゃないですか。冷蔵庫に貼ろうとするとお母さんに怒られたでしょ?(笑)。「冷蔵庫に貼っていい?」「ダメ」「机は? 自分の部屋だったらいいでしょ?(貼っちゃう)」「剥がしなさい!」(「剥がれないよ……」)、みたいなね(笑)。そういう思い出も含めて、何でも貼っていいよという作品にしました。大人になった今、怒られないで、シールを全力で貼りまくることができたんです(笑)。そしてシールの間には、僕がその日感じたこととか、スケジュールとか、そういう日記みたいなことを書いています。
本当はさ、会場の代官山ヒルサイドにそのままシールを貼りたかったんだけど(笑)、さすがに担当者が難しい顔をしてたので、そこはやめました(笑)。
ーーちなみにどんなシールが集まったんですか?
何でもいいんです。お気に入りの洋服のブランドのシールでも、雑誌の付録でも。それこそ、20代の頃のとんねるずのシールを取っていてくれた人がいてさ。他にもチェッカーズや(松田)聖子ちゃん、田原俊(彦)ちゃんなんかもいて。大事に持っていた方がそれを分けてくれたんだよね。ありがたい。きっと展覧会に来たら言いたいでしょうね。「これ、私があげたやつ」って(笑)。
前回のツアーの『Timing』ときは「いらない箱をくれ」と呼びかけて、それが作品として1000体の《フェアリーズ》になったわけだけど。箱もシールもね、ひたすら作っていてしばらく夢中になっていましたよ。
自分のやりたいこと、好きなものを作っていく
ーーコロナ禍が明けようとしている今、アート以外のお仕事も再開して、制作時間の確保が難しい……ということはないですか?
いやいや。ジジイは朝が早いのでね(笑)。布団から起きるのは3時とか4時とかなんですけど、今の時期はもう外が明るくなってきて良いですよ。冬場はね、暗いから寂しいですから(笑)。朝起きてからハサミやボンド、シールなど、やることを並べてね。お茶を飲みながらコツコツやっています。
作品を作ったり絵を描いたりするのは、家かアトリエかだからコロナも何も関係なくて。展覧会やライブが中止、延期というのはあったけど、これは仕方ないでしょう。むしろ時間ができたから、プラスアルファのことができたかな。結果オーライですよ。
ーー制作スタイルは変わらないということですが、表現したいものが変わったりはするんですか?
いや、基本的に変わらないですよ。自分のやりたいもの、自分の好きなものです。だから、誰もいないときに、自分で自分を褒めてます。「いいね~!」って(笑)。
制作スタイルとしては、タイトルもないところからスタートして徐々にタイトルが見えてきたりもするし、逆にタイトルから入って描いたりもする。それに「これ、ありだな〜! 来てる、来てる!」と1人で喜んでいることもあるけど、我が家のプロデューサー(安田成美さんのこと)がアトリエに来たときの反応も結構大事かな。リアクションが薄いとすぐやり直しをしたりもします(笑)。素直に「おー!」と喜んでくれると嬉しいですよ(笑)。
ーーちなみに「おー!」となった作品というのは?
今回の場合は、樹脂とフィルムが混ざり合っている素材を使った、触れるアート。この真っ白なアートが5枚並ぶ予定です。基本的にやりすぎ注意、触りすぎ注意で、1回勝負の制作でした。本当は来場者が自由に色を塗れるようにしたら面白いかなとも思ったんだけどね。今回は塗り絵はやめて、触れることにしました。展覧会の終盤は手垢だらけになるかもしれませんね。それもいいよね。
その道のプロたちとモノづくりをする楽しさ
ーーいろいろなアーティストと共に作っていくことについて、改めてどんな思いでいらっしゃるのですか?
1人じゃ何もできないもの。分からないことは聞きながら、その方面のプロの方たちと一緒にモノを作っていきたいなと思っているんです。
この間は、鉄工所のみなさんとオブジェを作って。「これ大変でしょう? どうやったの?」と聞かれて「鉄工所の人たちと一緒にやったんだよ」と鉄工に関する解説付きで説明してたんだけど、もう何回も聞かれるからそのうち説明するのが面倒になっちゃって、「もう大変でした〜」と嘘ついたりして(笑)。富山のガラスのアーティストたちに手伝ってもらったときも、最初のうちは「富山のみなさんと」と説明してたんだけど、これも何回も聞かれるから「いや、ガラスって大変なんですよ〜」とこれまた省略しながらね(笑)。
ーー(笑)。でも一緒に制作することで、さらにアーティストとしての幅も広がっていきますよね。
そうですね。いろんなアーティストと知り合うことが楽しいし、そのプロたちが一生懸命やった仕事を見るのが楽しい。「これは自分じゃできないわ……」と思うもの。その技術を自分が習得するとしたら何十年もかかるけど、そこを省いてディレクションだけすればいいんだよ(笑)。みんなすぐ理解してくれて、動いてくれて、形になっていくんだもの。そりゃあ、楽しいですよ。
ーーそういう意味でも、ハンディキャップアーティストとの出会いも刺激的なものになりそうです。
そうですね。きっと展覧会を準備するときに会えるのかな。みなさんとお会いするのがとても楽しみです。
『GOKAN 〜5感〜 木梨憲武』は、6月7日(水)から6月25日(日)まで、東京・代官山ヒルサイドフォーラム&エキシビジョンルームで開催。入場券はイープラスほかプレイガイドで販売中。

取材・文=五月女菜穂 撮影=大橋祐希

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