真新宿GR学園が見せる、骨太なダンス
ミュージックへの寄り添い方 『電音
部 GR SQUAD vol.1』レポート

2023.5.25(Fri)『電音部 GR SQUAD vol.1』@新宿BLAZE
クラブミュージックを基盤とした音楽原作キャラクタープロジェクト『電音部』、その新エリアとして2022年11月から活動を開始したのがカブキエリア・真新宿GR学園だ。そんな彼女たちをメインアクトとしたライブイベント『電音部 GR SQUAD vol.1』が2023年5月25日に新宿BLAZEにて開催された。
新宿歌舞伎町をホームとする彼女たちが、新宿歌舞伎町にある新宿BLAZEで開催する今回のイベント、その出演者にはクラブミュージック界の一線で活躍する面々が名を連ねる。そのラインナップを見ただけでも期待に胸が膨らまずにはいられない。
この日、新宿BLAZEではどのようなライブが繰り広げられたのだろうか、その様子をレポートする。

イベント当日、開場・開演時間である18時になると新宿BLAZEに、力強い低音が鳴り響き始める。本イベント最初の出演者であるATSUKIがDJブースの前に立ち、DJプレイをスタートした。
そのプレイに吸い寄せられるように会場に観客が集結する。会場に入った瞬間から大音量で鳴り響く音楽が聴ける本イベント、これはクラブイベントを源流にした『電音部』ならではの構成だ、膝を打たずにはいられない。
撮影:フジ・ヘンドリックス
ATSUKIによるDJプレイは、新宿を拠点として活動するラッパー・漢 a.k.a. GAMIの「I’ m a ¥ Plant」のリミックスからスタートした。本選曲で、電音部の世界における新宿と、ヒップホップの世界における新宿、この二つの交わりを提示したのだ。その後、プレイはヒップホップやドラムンベースと言った多様なクラブミュージックを経由。使用される楽曲の多彩さからは、クラブミュージックが実に多様性であることを感じさせる力があった。
そんなATSUKIのプレイは中盤にさしかかるにつれ、ミドルテンポのダンスミュージックに収束していく。多様な客層が集まる今回のライブ、中にはクラブミュージックに馴染みがない人も多かっただろう。そんな人でもノリやすい定番的ダンスビートをチョイスすることによって、フロアには一体感が生まれた。その後、ATSUKIのプレイはテンポダウンをはかり、一体感はそのままに緩やかに会場中を揺らす。ライブスタートに向け、会場に集まった人々のアップは完璧だ。するとDJブースにmaeshima soshiが登場し、メロディアスなダンスミュージックを客席に届ける。ついに本公演のライブパートがスタートした。
撮影:フジ・ヘンドリックス
バックスクリーンにはポップなアニメPVが流れ出す。そしてステージにOHTORAが登場、一曲目として披露したのは「ツレナイズム」だった。アーバンな空気をふんだんにまとったサウンドが会場を包み、観客を魅了する。そこから間髪を容れずにネクストナンバー「BYAKUYA」を披露すると、観客は心地よく音楽に身を任せ、手を上げてこの場にいる喜びを表現した。
ここにローテンポのナンバー、「Silly Love」が続く。「ゆらゆらり踊ろうよ」との歌詞にあわせてOHTORAがステージ上を揺れ動くと、観客も一緒になって身体を楽曲に委ねる。ここにさらに「KOI WAZURAI」を披露し、会場をさらなるエモーショナルで包み込んだ。
「今からが本番です!」
ここまで心地よい、緩やかな楽曲を披露してきたOHTORAが、ここからはアッパーなライブを披露することを宣言。その最初の一曲となったのは未公開楽曲である「TOXIC」だった。
撮影:フジ・ヘンドリックス
その力強いサウンドに、宣言通り観客が湧き上がる。照明も紅い輝きを放ち、その盛り上がりを後押すると、会場中で観客が手を鳴らす。
「スペシャルコラボ曲も持ってきました!」
そう告げるとBimiがステージに登場し、コラボでリリースした「error」を会場に届ける。Bimiのクールな歌声と、OHTORAの情熱的な歌声が見事なマリアージュが会場を魅了する。そしてOHTORAのライブは締めくくりへと走り出す。
「Akashic World」と「Digital Tattoo」、この2曲を立て続けに披露し、その力強いパフォーマンスに観客は高揚する。大きな盛り上がりと共にOHTORAのパートは締め括られたのだった。
撮影:フジ・ヘンドリックス
仄かに青い照明が差し込むステージ、続いて登場したのは2.5次元俳優・廣野凌大としても知られるアーティスト・Bimiだ。ステージで、下を向いたまま静止するBimi、その姿に会場の注目が集まる。そして一言。
「Let's Go!」
その一言と共にビートが走り出す。一曲目に披露したのは「熱気」だ。複雑なビートにBimiがクールかつ巧みに言葉をはめていくと、その様子に会場のテンションは上がっていく。そこにエレクトリックなダンスナンバー「frog」が続き、会場はさらにヒートアップ。Bimi自身も高揚したように、ステージ上を縦横無尽に動き回りながら歌声を披露した。
ここにトラップビートで構成された「狙撃」が間髪を容れず続く。多彩なフロウでビートを乗りこなすと、フックでは歌声も披露して会場を魅了した。
さらにトラップビートのナンバーが続く。「devil」、ビートアプローチはさらにバリエーションを増し、Bimiが作り出した世界に観客を引き込んでいく。その独特な世界観はさらに加速していく。民族音楽をサンプリングしたナンバー、「tai」「NINJA」が続くと、スクリーンにも幻視的な映像が映し出され、観客を酔わせる。
撮影:フジ・ヘンドリックス
ここまでノンストップで6曲を披露したBimi、ここで一気にポップな楽曲へと舵をきる。披露したのは「LOVE」だ。EDM調の力強くもノリやすいサウンドの楽曲が響くと、多彩なアプローチで曲に声を乗せていく。そのサウンドに観客は高揚させられずにはいられない。そして、観客のテンションが最高潮に至った瞬間、こう叫んだ。
「俺のこと覚えなくていいから、最高に楽しんでいってください!」
その一言に、観客は歓声でアンサーを返す。そこに演歌調のサウンドが響く。Bimiのライブを初めて聴いた者は困惑しただろう。そのサウンドにあわせてBimiが演歌を歌い出すと、その歌声はこう締め括られる。
「軽トラで轢きます」
演歌をサンプリングしたトラップビートが会場に響く。そのサウンドに軽快に言葉をはめるBimi、披露したのは「軽トラで轢く」だ。そのエンターテイメント性高いパフォーマンスが、会場中の視線をほしいままにする。そのままBimiによるパートも締めくくりへ。
和を基調としたダンスナンバーが続く。ラストナンバーとして披露したのは「輪」だった。Tシャツを脱ぎ捨て、半裸の状態で音に乗り、トラックに声を乗せる。そのパフォーマンスに会場中がヒートアップ。楽曲の途中にはBimiの号令で全員が一度フロアに腰を下ろし、再び立ち上がって踊り出す瞬間も見られた。大盛況、その言葉がしっくりくる高揚感が会場を包み、Bimiによるライブは幕を閉じたのだった。
撮影:フジ・ヘンドリックス
ステージに再びATSUKIが登場し、DJブースの前に立つ。ステージに幻想的なピンクの照明が落ちると、そこに呂布カルマが登場。その艶かしい照明を反射させながら、一曲目「サムサバンナ」を披露。研ぎ澄まされたサンプリングビートに、ソリッドな言葉が乗り、観客の耳に届く。
「外歩いていると楽しいんだか楽しくないんだかわからない人ばっかりですけど、ここにいる人は楽しんで行ってください」
そう告げると続いてのナンバー「天竺」へ。過剰なことは決してしない、ただただクールに、ビートに合わせて言葉を吐き出していく呂布カルマ。そのストイックなパフォーマンスは見るものを釘付けにする。
「このままいきましょう」と一言、そのパフォーマンスは途切れることなく続いていく。ここまでのメロディアスなトラックとは一転、力強いビートで構成された「図星」「タナボタ」の2曲が続く。そのビートにあわせて、一言ずつ丁寧に言葉をはめこまれていく。そのリリックは聴くものの心を震わせ、フロウは身体を揺らさせた。
そして、今回のイベントについて呂布カルマが語る。『電音部』がどういったものか知らなかったとの話の後、こう告げたのだ。
「どんなイベントかと思っていたんだけど、すげえ健全じゃないですか。スタンガン持ってきたけどいらんかった。」
クールな語り口のまま、お茶目なジョークをさらりと発すると、会場は大きな笑いに包まれた。
そんな微笑ましい瞬間を経て、再び力強いビートが会場に帰ってくる。披露したのは「salamander」、そして「against the world」だった。先ほどのジョークとは異なる、力強いメッセージのこもったリリックが聴くものを耳元から魅了する。これぞまさにスーパーヘビー級の言葉、そう感じずにはいられなかった。
「このように一曲もヒット曲がないままでも売れることができるんですよ。」
呂布カルマにとって、普段向き合っている客層とは異なる人々が集まっている今回のライブ。どう曲にノっていいのかに戸惑っている人がいることを感じたのだろう、そんな一言がもれた。これに対して観客からは「気にすんな」との声が上がる。するとこう瞬時に切り返した。
撮影:フジ・ヘンドリックス
「気にしてねえよ、むしろこれ自慢ですから。一曲もヒット曲がなくても売れることができたっていう。」
説得力ある一言に会場中が論破される。そしてここで、ヒップホップという世界で戦い続けることへの決意をリリックに込めた「不穏」が続く。繰り返し登場する「ここで戦うと決めた」という言葉、それは最後には観客にも投げかけられる。
「ここで戦うことを決めた、お前らはどう、戦っていこうぜ」
その一言が観客の胸に刺さる、そして呂布カルマのライブもラストナンバーへ。
最後に披露したのは「Lucky Boy, Lucky Girl」。決してヒップホップに馴染みのない観客も多かったであろう今回のライブ、しかし呂布カルマのパフォーマンスを通して、観客がその楽しみ方を徐々に身体で覚えていったのが見てとれた。その証明のように、ラストナンバーでは開場中がしっかりと曲に合わせて身体を揺らしていたのだ。
そしてついに本日の主役・真新宿GR学園がステージに姿を現す。中央には大神纏役の吉田凜音、その両サイドに安倍=シャクジ=摩耶役のSONOTAと、りむる役のをとは。3人がステージ上で横一列に並ぶと、そこにビートが流れ出す、一曲目は「Siren」だ。ローテンポで不規則なビートに対して、3人が各々個性剥き出しの声を乗せる。そのパフォーマンスに観客は瞬時に魅了されていく。
撮影:フジ・ヘンドリックス
そこにEDM調のサウンドが続く、ネクストナンバーは「Crush」。ストレートなダンスナンバーが会場を揺らすと、SONOTAから「こんなもんじゃねえだろ!」という檄が飛び、さらにヒートアップする。登場早々からトリに相応しい力強いステージングを見せ、会場の空気を早くも我が物にしたのだった。
3人が各々に自己紹介をすると、吉田凜音とSONOTAがステージから去り、をとはから一言。
「♡んでくれる?」
撮影:フジ・ヘンドリックス
はじまったのは「ハカハカイプリンセス」、低音響く激しいサウンドに、ハスキーでハイスピードな声が乗る。骨太なダンスミュージックと、それと不釣り合いなキュートな声、そのマリアージュが聴くものの夢中にさせる。サウンドにあわせて、バックスクリーンにケミカルな映像が映し出されていたのも印象的だった。
シームレスに次のナンバーが始まる、「狐憑キ」だ。をとはとバトンタッチするようにSONOTAが現れると、力強いサウンドにあわせて挑発的な声をのせていく。「頭良いフリやめな?」曲中でそう告げるとダンサブルなビートが響く。それにあわせて会場中がそれに身体を揺らした。そして、最後に観客に向けて質問を投げかけられる。
「お前ら、GRのスクアッドだよな!」
巻き起こる歓声、それに対して一瞬の笑みを見せると、「仲間だな」と一言。そのままステージを後にした。
撮影:フジ・ヘンドリックス
続いて登場したのは吉田凜音、披露したのは「Cheater」。トラップビートにクールかつ華麗に言葉をはめていくと、舌の回転は徐々に加速していく。高速で弾き出される言葉の数々、その量に比例して会場は熱さを増していき、大いになる一体感が会場を包んだのだった。
各々のソロパフォーマンスを終え、再び3人がステージ上に揃う。告知タイムを挟み、本ライブのラストナンバーが訪れる。披露したのは真新宿GR学園の活動開始とともに公開された「禁言」だ。ビートに合わせて多彩かつ華麗なマイクリレーを披露すると、サビでは声を合わせての歌唱もみせる。スクリーンにはPVも映し出され、会場中が楽曲の世界観で包み込まれる。明確かつディープな音楽性を武器としたガールズユニット・真新宿GR学園。今回のステージを通して彼女たちの魅力を再確認した人も多かっただろう。大好評のままに本ライブは幕を閉じたのだった。
ダンスミュージックを基軸としたコンテンツとして大きな注目を集めるコンテンツ『電音部』。決してポップな方向に舵を切らない、骨太なダンスミュージックへの寄り添い方には心を奪われずにいられない。その姿勢は、これまでも楽曲でも大いに提示されてきた。今回のライブは、その姿勢をステージという形でも提示したもの、それは現地にいるすべての人が痛感したと思う。
今後、さらなる発展を遂げるであろう『電音部』、そして真新宿GR学園、その動向から目が離せない。
レポート・文=一野大悟 撮影:フジ・ヘンドリックス

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