星熊南巫ソロライブ『TOKYO 神 VIRT
UAL』、日本一攻めてるアイドルのア
イコンが我儘を貫き通した世界観を見
せつける

星熊南巫『TOKYO 神 VIRTUAL』2023.04.29(sat) SHIBUYA WOMB
俺たちは、まだ星熊南巫を知らなかった――。4月29日、星熊南巫がSHIBUYA WOMBにて、自身初となるソロライブ『TOKYO 神 VIRTUAL』を開催した。日本一攻めてるアイドル、我儘ラキアのメンバーとして活動しながら、2021年12 月にはソロプロジェクト、DEATHNYANN(デスニャン)を始動。さらには国内外問わず様々な作品へのゲストボーカルとしての参加をはじめとして、fortniteやD4DJといった人気コンテンツへの楽曲提供など、その活動の幅を広げ続けている。スタイリッシュさと爆発力、そして躍動感を兼ね備えたサウンドとビジュアルから生み出される、強烈な個性と独創的な世界観を放つ楽曲やMVは日本のみならず、海外でも注目を集めている。
今年3月には、星熊南巫ソロEP『TOKYO 神 VIRTUAL』をリリース。同作ではタイトル曲である「TOKYO 神 VIRTUAL」を星熊本人が作詞作曲を務めるほか、全6曲すべてを自身が作詞。すべての作曲にも携わり、底知れない星熊南巫の世界を一枚にギュッと凝縮。我儘ラキアとは全く異なる表現でファンを驚かせ、ここから大きく広がる新たな可能性を感じさせたミニアルバムを引っ提げて開催されたのが、この日のライブだった。
星熊南巫
星熊南巫

薄暗い照明に包まれたフロアにスモークが漂い、スクリーンには暗雲立ち込む渋谷の街並みが映る。開演前から怪しく独特な世界観に包まれた会場は熱気溢れるというより、ヒリヒリとした緊張感に包まれていて、「これから何が起きるのだろう?」という観客の期待やドキドキが伝わってくる。フラッシュライトに雷鳴が響き、西暦と日付が掲示されたデジタルカウンタがぐるぐる回り、会場ごと2623年の未来へ誘うとステージに星熊南巫が降臨。「みなさん、楽しむ準備出来てますか?」の呼びかけにフロアから歓声が上がる。
4つ打ちのビートに観客が手拍子を合わせ、始まった1曲目は「TOKYO 神 VIRTUAL」。鼓動を打つような4つ打ちのビートに、達観したような諦観したような歌声を丁寧に重ねる星熊。見えない夜を泳ぐように体を揺らし、グッと感情が入るサビパートで聴く者をハッとさせ、観る者を自身の世界観へと誘うと、体を揺らしたりジャンプを合わせたりと自由にライブを楽しむ観客に笑顔を見せる。
星熊南巫
星熊南巫

この日のサポートは恐竜姿のベースとドラム。深海や夢の奥底に潜り込んだような、ディープでエレクトリックなトラックにベースの生音も効果的な「DIVE」は、ささやくような歌声とヘヴィな生演奏がコントラストを生む中、観客の手拍子も手伝いながら、やがて激しくなっていくドラマチックな曲展開や星熊の悲痛な歌声がグッと胸に迫り、観る者を星熊ワールドの奥底へと誘っていく。
ここで改めて自己紹介をして、集まってくれたファンへの感謝を告げた星熊。EP『TOKYO 神 VIRTUAL』に、自分の“好き”がいっぱい詰まっていることを話すと、「私をゲームの音楽の歌姫にしてくれた曲です」と、音楽ゲーム『Arcaea』への提供曲「Testify」へ。ラスボス感のある壮大なトラックとパワフルなリズム隊に映える、星熊の美しい歌声はまさに歌姫。楽曲に魅了された観客の大歓声が上がる中、ラウドな演奏で会場の空気を変え、観客も気持ちを大開放した「tarantula」がフロアの熱量を上げる。
星熊南巫 / aviel
続く「tears in rain;(」では、作品ではフューチャリングアーティストとして参加しているCVLTEから、客演としてavielが登場。逃げ場のない感情に苛まれながら、それでも生きてる実感を抱かせる楽曲をツインボーカルで立体的に表現。押し迫るような歌と演奏が、グッと胸を締め付ける。星熊が男性ボーカルと並んで歌う姿も貴重だったし、二人の歌声の相性の良さも驚いたが。カーペットの上にぽつんとソファが置かれたステージセットや照明、衣装にメイクと星熊の脳内をそのまま具現化したようなステージに、登場したavielがハマりすぎていたことにも驚いた。突き上げるビートに野心を秘めた歌声を乗せ、音源とも異なる印象を与えた「ERA」と続くと、ライブはクライマックスへ。
MCでは、「このアルバムを通して、人間って愛って感情でエラーを起こして、なにか無理をしたくなったり、なにか挑戦したくなる生き物なんだなとすごく思いました」と話した星熊。「私は音楽への愛が強すぎて、自分にエラーを起こしてここまでやってきました。その中でたくさんのみんなと出会って、こうして音楽がやれてます。これからも色んな表現で、自分の好きなものをこうやって形にしていこうと思うので。それを食らって、みんなも明日から「オモロイことしようかな」とか思ってくれるといいなと思ってます」と、自身の率直な想いとここからの意気込みを語る。

星熊南巫

続く「Dreamscape」で、夢の中にいるような浮遊感のある心地よいサウンドに丁寧に言葉を紡ぐと、ラストは静寂と喧騒を自在に操り、むき出しの感情を表現した「NEJEM」でフィニッシュ。音楽への強い愛とこだわりをもって、自身の“好き”が詰まったソロライブをしっかり構築した星熊南巫。星熊の脳内に誘われ、気持ちよくトリップしていた観客は現実世界に戻ってくるのが困難だったようで。終演後、デジタルカウンタの西暦と日付が現在に戻り、客電が着いてもしばし静寂が続いたフロアから、時間を置いてから大きな拍手と歓声が起きたのが、実に印象的だった。
終演後、思わず「スゲェ……」と漏れてしまうほどに完成度の高いライブだったが、星熊南巫がソロライブを行うのはこれが初めて。我儘ラキアの星熊南巫とは明らかに異なるが、明らかに星熊南巫でしかなかったこの日のライブは、「俺たちはまだ、星熊南巫を知らなかった」と思わされた。ここからさらに自身を掘り下げ、様々な表現がブラッシュアップされていくであろう星熊のソロ・プロジェクト。我儘ラキア言うまでもないが、ソロ活動にも大きな期待をさせてくれたし、星熊南巫をもっと知りたいと思わされるライブだった。

取材・文=フジジュン 撮影=nekoze_photo
星熊南巫
星熊南巫 / aviel

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