NIGHTMARE 大復活の狼煙を上げた原
点回帰のツアーファイナルをレポート
「これからも最高の“悪夢”を見せる
から、四の五の言わずについて来い!

NIGHTMARE LIVE HOUSE TOUR 2023 FAREWELL TO SHADOWS

2023.5.14 LIQUIDROOM
NIGHTMAREが新曲「FAREWELL」を掲げ、3月25日、メンバーの地元である宮城・仙台MACANAからスタートさせていた全国ツアー『NIGHTMARE LIVE HOUSE TOUR 2023 FAREWELL TO SHADOWS』が全17公演を無事完走。マスク越しでの声出しを全面解禁した彼らの最新ツアーのなかから、5月14日、東京・LIQUIDROOMで開催されたファイナル公演のレポートをお届けする。
どこを見渡しても人、人、人で埋め尽くされた超満員の会場。そこに響き渡る大歓声と一丸となったオーディエンスの歌声。前後左右に激しく波打つ上半身、ヘドバンでバッサバサと激しく揺れまくる髪の毛は、まるで荒ぶる夜のまっ黒い海のよう。ステージとフロアが一体となって織りなす壮絶なる悪夢の宴饗は、まさにバンギャ、ギャ男たちが心底求めていたヴィジュアル系魂完全炸裂の怒涛のライブ空間。ヴィジュアル系バンドの真髄をどこまでも貫き続け、活動休止しても、世界がコロナ禍に見舞われ悲観に塗れた日々のなかでも、バンドとして活動を決して止めなかったNIGHTMAREが、このタイミングで大復活の狼煙を上げた。
2023年上半期のNIGHTMAREは、何もかもがぴしゃりとハマった。その幕開けは、コロナ禍や、いつしか自分たちを食い尽くしていた呪縛を断ち切り、さよならを告げた新曲「FAREWELL」のリリースだった。そうして、再び原点から始めようとでもいうように、コスチュームをかつてのヴィジュアル系を彷彿させる黒一色のエナメルっぽい衣装で揃えた5人は、CDジャケットにインディーズ時代に使っていた昔のアーティストロゴを刻み込んだ。そうして、今回のツアーでは舞台後方にあったフラッグでもこのロゴを採用。ツアーで選ばれたハコは、NIGHTMAREとしては圧倒的に小さすぎる会場ばかり。ステージとフロアが至近距離にあるライブハウスを回るツアー日程も、大都市以外に北は北海道、四国、九州は熊本までをくまなく回るもので、そこには東京から数日間出ずっぱりという行程で回る場所も含まれていた。どれもが、インディーズ時代のNIGHTMAREの活動を思わせるような“原点回帰”っぷり。そうして、バンドの原点回帰を待っていたかのように、フロアのほうもこのツアーから全会場において声出しを解禁。さらにさらに、本ツアー中にはボーカルのYOMIがバンド活休前から患っていた機能性発声障害が(ほぼ)完治したことも伝えられ、YOMIのパワフルで伸びやかなあの声が、ついに復活したのだ。
《ごらん ここが始まりの場所》
新曲「FAREWELL」に予言のように描かれていた世界が、本当にやってきたのだ。
ツアーは、初日からどの会場も大盛況。「FAREWELL」収録曲を軸にした最新曲と、往年の曲を各地ごとに組み込んだセットリストで、白熱のライブを繰り広げてきた彼ら。まさかこんな狭いハコで、こんな至近距離でNIGHTMAREが観られるとは。ということで、最終日もフロアはすでに興奮状態で熱気が充満。
ライブは、最後にステージに出てきたYOMIが「飛べー!」と叫んでフロアのジャンプを誘い、まさかの「dogma」で幕開け。声出し解禁ということでの選曲なのだろう。曲中、メンバーをコールするパートがやってくると、ファンは大声でメンバーの名前を呼びながらフロアで咲き乱れ、オープニングから“これこれ!”と言いたくなるような懐かしい声援と光景が目の前に広がる。そうして《あの頃の大事な 思い出たち 今もずっと残ってたよ》という歌い出しがこの状況と相まって心に沁みた懐かしの「ビルドゥングス・ロマン」。新曲「FAREWALL」では咲人(Gt)と柩(Gt)のツインギターならではのハモりで、迫力ある演奏をステージで展開してみせた。
曲が終わると、コロナ禍で我慢していた分までメンバーの名前を呼ぶ歓声が立ち上がる。こちらも演奏に負けないぐらいのすごい迫力。それに対してYOMIが「お前たちのデカい声、聴かせてくれ」とさらに煽り「お前たちはここに暴れにきたんだろ?」と誘い、始まったのは「ピラニア」。コロナ禍のリリースで思う存分暴れられなかった最新アルバム『NOX:LUX』収録曲をヘドバンで暴れ倒し、そこから曲の表情が静から動へと移り変わっていく「to for」や、曲中に咲人が「トルコ行進曲」のフレーズを引用したクラシカルなギターソロを弾く「muzzle,muzzle,muzzle」という遥か彼方に聴いたような昔の曲を2連発。昔からのファンだけではなく、フロアにいる若いお客さんたちも、いまと昔、振り幅の広い年代を行き来する楽曲それぞれをちゃんと知って楽しんでいる。
中盤戦、「Last note」ではYOMIがあえて声を張らず、囁くような歌声を立ち上げ、ここからはいまの大人のヴィジュアル系バンド、NIGHTMAREだからこそ出せるしっとりとした雰囲気を醸し出しながら、ライブを進行させていく。YOMIの低音ギリギリのところから繰り出す声がせつなさを倍増させていった「絵空事」、「love tripper」では三連のパートをNi~ya(Ba)とRUKA(Dr)がリズムでシックなムードを作り、そこにフロアを浸らせていった。
いまの彼らだからこそできる表現やテクニック、それを存分に堪能したオーディエンスかすぐさま拍手が送られると「ありがとう」とYOMIが静かに伝える。この後、そのYOMIから「このツアーで札幌に行く前、病院の先生に“機能性発声障害がほぼ完治しました”といって頂きました」という報告が行なわれ、観客からはさらなる拍手が沸き起こる。「長かったな」と咲人が優しい声で語りかけると「6~7年かな」とYOMIがしんみりと振り返った。その間は「メンバーも、みんなもずっとそばにいてくれたから。なんとかここまでこられました」と言って、感極まった自分を誤魔化すようにステージドリンクを一人で荒ぶってイッキ飲みするYOMI。「ここは泣いていいんだよ」と咲人に言われても、YOMIは「泣くのは柩の役目だから(笑)」と拒否。すると、柩がバレバレの嘘泣きの仕草で「治って嬉しい~」と言って、メンバーもフロアも大爆笑。長年ヴィジュアル系バンドでいながらも、せっかくの感動場面もカッコつけられず、いつもこんな風に茶化さずいられないところが、彼らが長年変わらず愛されているところだろう。そうして茶化した後に、この日は珍しくYOMIが「魂込めて歌っていきます」と真面目に締めくくって、ライブは後半戦へと突入。
真っ赤な照明のなかで始まった「despair」は咲人が手持ちのエレキとスタンドに立てたアコギをダブルでプレイ。「Dizzy」ではYOMIがいつも見せるマイクの白いコードをぶわんとうねらせるパフォーマンスをやったとき、そのコードが咲人にひっかかり、それを咲人が外して丁寧にYOMIにお返しするというハプニングも。そうして「頭振ってるところ、俺らに見せてくれるか」とYOMIが叫び、暴れ曲「極上脳震煉獄・弌式」でフロアはヘドバンの嵐が吹き荒れる。ステージではRUKAの前のお立ち台に4人が並び、一斉に体を折り曲げると、ものすごい熱気と一体感が場内に巻き起こる。そこにNi~yaがお立ち台に立ち、「ジャイアニズム死」を投下。後方にいるRUKAに向かって、フロア、さらにステージ前方の4人が揃って体を折り曲げて作る景色は、まさに地獄のような悪夢。そうしてRUKA、Ni~ya、咲人、柩とソロを華やかにつなぎ、YOMIが歌でラストまでもっていくというゴージャスな展開で、悪夢という名の天国まで会場にいた全員を連れていった。
そうして、このあとはNIGHTMARE恒例の5人のトークコーナーへ。「ツアーを振り返ってエピソードを」というYOMIのお題に対して、咲人はYOMIの声が戻ってきて「我々はまだまだ成長できる余地があることを発見した」と伝えた上で「今回は俺、ゾジー(YOMIの愛称)さんのMCにやられることが多くて。アナタにMVPをあげたい」というとYOMIは大喜び。そのYOMIに下ネタ発言をバラされてしまったNi~yaは「一つ言わせてくれ。あのときはテンション爆上がりしてた」と言い訳し、「ライブっていろいろあるんだよ」と付け加えた。RUKAは、今回のツアーはバンドとして7~8年ぶりに訪れる場所もあり「ご飯が美味しかった。函館とか。街もすごくいいところだった」と言い、柩はそれに続けて、今回はそんなところも含めて「ツアー感があって。毎回ライブのたびにグッときた。みんなに拍手したい」と、声を出し騒いでくれたファンを讃えた。そして最後に「俺たちもっとカッコいいバンドになって、これからも最高の“悪夢”を見せるから、四の五の言わずについて来い!」とYOMI が宣言。
そうして始まった「1000 Days」では《僕らが一緒ならば 何も怖くないよ》と歌うYOMIが左手をフロアに伸ばし《そう 光は僕らの手に》と力強いメッセージを歌にのせて、手のひらを握りしめて、みんなの心を手繰り寄せていった。そこに渾身のシャウトを投げ込んだあと、「Can you do it?」ではお立ち台に堂々と立ち《もう迷わない もう大丈夫》と伸びやかな声を響かせるYOMIにフロアは大感動。そうして、オーディエンスの“ラーラーラーラー”の大合唱から「Awakening.」が始まると、曲中、YOMIはアカペラで歌う部分をマイクを外して生声で歌うというパフォーマンスを披露。YOMIのボーカル復活、最強のNIGHTMARE復活にフロアは嬉し泣きに包まれ、感動が広がるなで本編は終了した。
アンコールはRUKAいわく「よりどりみどりのバカ」が揃ったというメンバー5人のバカ話で幕開け。そうして「バックストリートチルドレン」で踊り騒ぎ、柩と一緒に頭の上で手を“パパン”と叩く「極上脳震煉獄・弎式」で盛り上がったあとは「Star[K]night」へ。コロナ前、お馴染みだったファンの大合唱がフロアに広がると、メンバーは愛おしそうな表情を浮かべて耳を傾け、そこから最後まで大団円のなかライブは終了。のはずが、ドラム台から離れたRUKAがNi~yaの耳元で何かを囁き、それを他のメンバーに伝え、予定外の「極東乱心天国」がこの後スタート。この日もっとも激しいヘドバンからの大合唱で、ステージもフロアも限界を超えた絶頂まで上りつめたところで、ライブは終了した。
全ての演奏を終えた後、膝から崩れ落ちるようにステージに座り込んでしまった咲人は、「今まで散々ライブやってきたけど、今日ほど終わってほしくないって思ったのは初めてかもしれない。俺、どうしたんだろう……」と言いながら泣き出してしまった。こんな姿をステージで見せたのはおそらく、これが初。「今日が終わったらこのこと忘れてね」と言葉を添え、ステージを後にした。その咲人を後ろから抱きしめ続けていた柩は「今年はまだまだ面白いことを考えてるから、絶対についてこいよ!」とメッセージを残し、最後に舞台を去っていった。
この後、NIGHTMAREはメンバーの誕生日に合わせて『NIGHTMARE BIRTHDAY LIVE 2023』を開催。また、MUCCとの初のツーマンツアー『悪夢69』も決定している。いま最強に熱狂させるヴィジュアル系ならではのライブ空間を作りだすNIGHTMAREを、ぜひとも確かめに行ってほしい。
取材・文=東條祥恵 撮影=菅沼 剛弘

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着