【Dizzy Sunfist インタビュー】
これまでで
一番いい音源にしたかったし、
実際に一番いい音源ができた
新体制になってから初のCDとなるミニアルバム『PUNK ROCK PRINCESS』。メロディックパンク界隈随一のメロディーセンスを改めてアピールしながら新境地に挑んだ意欲作は、新たな代表曲になること間違いなしの表題曲に加え、日本語の歌詞を導入した「そばにいてよ」など全6曲を収録。作品全体にあふれるエネルギーが痛快な一枚に仕上がった!
HEY-SMITHの猪狩さんと
もう一回やるチャンスだと思った
ライヴに足を運んでいるファンはもうご存じだと思うのですが、22年4月29日に正式加入した新ベーシスト、メイ子さんのことをまず紹介していただけますか?
あやぺた
ベース募集に応募してくれたんです。初めに送ってもらったメイちゃんがベースをプレイしている動画が良かったので1カ月ぐらいスタジオで合わせてみて、まずサポートで入ってもらいました。そこからライヴをしていくうちに、もうメイちゃん以外考えられないと思って正式メンバーになってもらったんです。
moAi
もともとバンド経験があったことに加え、ベースはもちろんですけど、コーラスのスキルも高かったし、何よりも“とりあえずワンツアー、サポートでお願いします!”となった段階で、メイちゃんは飲み込みが早かったんですよ。新曲を詰めるってなっても話が早くて、バンドをやっていく上でそういうスムーズさって大事だと思ったので。あやぺたもメイちゃん以外考えられなかったと言っていましたけど、本当にそんな感じでしたね」
メイ子さんが以前やっていたバンドを考えると、Dizzy Sunfistのベーシスト募集に応募したのはちょっと意外にも思えるのですが、以前からメロディックパンクも聴いていたのですか?
メイ子
実は全然通っていなくて。正直言ってメロディックパンクのことは全然分からなかったんですけど、バンドをしたくて上京したにもかかわらず、何も活動できてなかったので、精力的に活動しているDizzyに入ったら思いっきり活動できるんじゃないかと思って挑戦してみたんです。
実際に入ってみていかがでしたか?
メイ子
これまでとは全部違いました。以前はベースも結構高い位置で指弾きしていたんですけど、まずピック弾きを練習するところから始めて、ベースの位置も下げて。ステージングもかなり動かないといけない…Dizzyに入った当初はコロナ禍だったから、お客さんもただ立ったまま観ている感じだったんですけど、最近は“うわぁー!”ってなる(笑)。そんなライヴは体験したことがなかったから最初は怖すぎて、ちょっとヒキながら弾いていたんですけど、徐々に慣れていきましたね。そんなふうに全部が一からの挑戦なので楽しいです。
Dizzy Sunfistに加入して初めてのMV撮影は黄色い忍者姿でしたが(笑)。
メイ子
「N.i.n.j.a feat PETA&LARRY (GARLICBOYS)」(2021年10月発表のアルバム『DIZZYLAND -To Infinity & Beyond-』収録曲)ですね。前のバンドは結構きれいな格好をして、カッコ良い感じで撮っていたんで、忍者には“おぉ…”ってなりましたけど(笑)、普段なかなか着ることもないから楽しかったです。
以前のバンドとは違う楽しみ方ができているわけですね。
そんなメイ子さんが加入してから初めてのCDとなる今作では、Dizzy Sunfistのどんなところを見せたいと考えたのでしょうか?
あやぺた
毎回思っていることですけど、これまでで一番いい音源にしたいと思いましたし、実際に一番いい音源ができたと思います。
moAi
いつも音源を作る時は、いろいろなインスピレーションを受けて“あれもやりたいこれもやりたい!”ってなって、結構玉数多く作るんですよ。そこからメロディックパンクのマインドがあるのかどうかってところで曲を厳選していくんですけど、そこは今回も変わらず、曲げないようにしようと思っていました。
曲作りにはいつ頃から取り組んだのでしょうか?
あやぺた
6曲目の「Decided」だけは1年ぐらい前にTVアニメ『マイホームヒーロー』のエンディングテーマとして書き下ろしたものになります。
TVアニメのテーマソングを書き下ろすという体験はいかがでしたか?
あやぺた
原作の漫画を読みながら思ったことを、そのままスラスラと書けたので楽しかったです。ただ、誰かの気持ちに重ね合わせて歌詞を書くってことは初めてでした。
どんな部分で気持ちを重ねたんですか?
あやぺた
しがない会社員の父親が娘を守るというストーリーなんですけど、私も娘を持つ母として主人公の気持ちと重なるシーンがたくさんあったんです。
エンディングテーマとしてどんな曲調やサウンドが合うと考えました?
あやぺた
いきなりサビで始まるのがいいと思ったのと、決してハッピーなストーリーじゃないから哀愁もちょっと意識しました。
では、歌詞、曲ともにそれほど悩まずに作れたわけですね。
あやぺた
そうですね。でも、リズムはかなり変わりました。
moAi
あやぺたが曲をスタジオに持ってきた時からはがらっと変わりました。最初は2ビートの速い曲にしようとあやぺたも僕も考えていたんですけど、歌メロを聴いた時に直感でテンポを下げてみたら結構ハマったんですよ。
今作はHEY-SMITHの猪狩秀平さんがプロデュースと作曲で参加されているのもひとつのトピックですね。
moAi
全6曲のプロデュースと、曲作りにも3曲携わってもらいました。
猪狩さんと組んだのは『SUPER DELICIOUS』(2014年7月発表のミニアルバム)以来なので、9年振りですね。
あやぺた
『SUPER DELICIOUS』の次の作品も猪狩さんに参加してもらう予定だったんですけど、途中でその話がなくなってしまって、ずっとモヤモヤが残っていたんです。今回、新体制になって新しい音源を作ることになった時、猪狩さんともう一回やるチャンスだと思って。前回はまだそんなに曲作りをしたことがない状態で一緒に作ったんですけど、そこから何枚も音源を出して、ちょっとずつ曲作りのことが分かってきた状態で、猪狩さんとやり合いたかったんです。
再び猪狩さんと音源を作る中で、自分たちの成長を認めてもらえたと思える手応えはありましたか?
あやぺた
うちはどうか分からないですけど、moAiとメイちゃんはめちゃめちゃ認められていました。うちはいい感じに猪狩さんと一緒に呑んでいました(笑)。
メイ子
最初は緊張しましたけどね(笑)。レコーディングにプロデューサーがいるという経験が初めてで。常にプロデューサーである猪狩さんのジャッジがあるので、それをクリアーするのに必死でした。
moAi
以前から制作の時は僕もギターを持って、あやぺたと一緒に曲を作るんですが、今回はそこに猪狩さんも加わって一緒に作った曲もあって。曲を作りながら行き詰まったら、もうその日はやめて、みんなで酒を呑みながらその日に作った曲を聴き返すんですけど、そのうちにアイディアが湧いてきて、“それ、めっちゃいいじゃん!”ってできた曲もありますね。そういうところが前回とは違うというか、猪狩さんと僕たちのインスピレーションがお互いに影響し合いながら曲が出来上がっていくのが楽しかったです。
今作の表題曲になっている「Punk Rock Princess」はどんなタイミングでできたのですか?
moAi
そうだね。出来上がった曲を並べた時、強い曲がもうちょっとあったほうがいいとなって作りました。
あやぺた
猪狩さんが“これどう?”ってサビの《Punk rock princess》という歌詞とメロディーを持ってきてくれたんですよ。そこからmoAiがリフとAメロのコード進行を考えてくれて、それにうちがメロディーをつけて、猪狩さんと曲としてかたちにしていったんですけど、“Punk Rock Princess”ってタイトルもキャッチーだし、メロディーもいいし、“これはきたな”ってなりました。
猪狩さんはどんなところから、この曲のアイディアを思いついたのだと思いますか?
あやぺた
うちがアヴリル・ラヴィーンのライヴを観に行った話をしたからかもしれないです。何年振りかで観たアヴリルがほんまにPunk Rock Princessやと思えたんですよ。だから、“Punk Rock Princess”って言葉を聞いた瞬間、歌いたいことが自然にあふれてきたんです。
なるほど。猪狩さんはきっとあやぺたさんの話から、ライヴを観たあやぺたさんの感動を汲み取ったのでしょうね。では、あやぺたさんにとってPUNK ROCK PRINCESSはアヴリル・ラヴィーン?
あやぺた
そうです。アヴリルがきっかけで音楽を始めて、いっぱい夢を見せてもらったし、生きる希望をもらったから人生が楽しくなったんです。今度はうちがそれを誰かにつないでいけたらいいなという気持ちを歌詞にしました。
moAiさんとメイ子さんにとってのPUNK ROCK PRINCESSは?
moAi
アヴリルももちろんですけど、日本のメロディックパンク界隈で、ギブソンのエクスプローラーを持って歌っている唯一の女子ということを考えたら、あやぺたしかいないんじゃないかと。
メイ子
私もあやちゃんしかいないと思います。“PUNK ROCK PRINCESS”って言葉を聞いた時、あやちゃんのことだと思いました。
あやぺた
(Vサインをしながら)“ポォ! ポォ! ポォ! ポォ!”と書いておいてください(笑)。