「ルパン三世 カリオストロの城」ト
リビア 驚異的に短かった制作期間、
宮崎駿“新人”監督と山田康雄さんの
エピソード

原作:モンキー・パンチ (c)TMS 5月5日午後9時から日本テレビ系「金曜ロードショー」にて、劇場アニメ「ルパン三世 カリオストロの城」が放送されます。
 本作は、1979年に公開された「ルパン三世」劇場版第2作です。2021年には、「ルパン三世」アニメ化50周年を記念して4K映像+7.1chサラウンドの特別仕様で、短編「ルパンは今も燃えているか?」と2本立てで公開されました。
 「カリオストロの城」は、初期のアニメ版「ルパン三世」の名作であると同時に、宮崎駿監督の劇場初監督作品としても知られ、本作のヒロインであるクラリス役を「風の谷のナウシカ」でナウシカ役を務めた島本須美さんが演じています。
 「ルパン三世 カリオストロの城」のあらすじ、キャスト、知っておくと本作がより楽しめるトリビアをご紹介します。
【あらすじ】
原作:モンキー・パンチ (c)TMSカジノから盗み出した大金が「ゴート札」と呼ばれる偽札であることに気づいたルパンと次元は、偽札の秘密を探るためカリオストロ公国を訪れる。その道中でルパンたちは、謎の男たちに追われていた花嫁姿の少女クラリスを目撃。彼女は公国の亡き大公の娘で、摂政として国の実権をにぎるカリオストロ伯爵に結婚を迫られていたのだ。ルパンたちは、伯爵にさらわれたクラリスを救うためカリオストロ城に潜入する。
原作:モンキー・パンチ (c)TMS【主要キャスト】
ルパン三世:山田康雄
次元大介:小林清志
峰不二子:増山江威子
石川五ェ門:井上真樹夫
銭形警部:納谷悟朗
クラリス:島本須美
カリオストロ伯爵:石田太郎
園丁:宮内幸平
ジョドー:永井一郎
ウェイトレス:山岡葉子
【驚異的に短かった制作期間】
原作:モンキー・パンチ (c)TMS 「カリオストロの城」はストーリーラインの作成、絵コンテ、作画までの制作期間がわずか4カ月だったことが、同作の作画監督を務めた大塚康生さんの回想録「作画汗まみれ 改訂最新版」に記されています。
 大塚さんは同書で、「おそらくその質の高さ/制作期間比では『カリオストロの城』は日本の長編アニメーション史上最短の制作期間記録をマークしているのではないでしょうか」とも振り返っています。また宮崎監督は、自作を語るインタビューで、「ルパン(編注:宮崎監督と高畑勲監督が途中から参加した「ルパン三世(1st シリーズ)」のこと)や東映時代にやったことの大たなざらえなんですよ。だから新しくつけ加えたものは何もないと思うんです」と謙遜しながら語っています。
 同業のアニメクリエイターからは作品の素晴らしさとあわせて、制作スケジュールの短さについて触れられることが多い作品です。
【宮崎監督と鈴木敏夫プロデューサーとの出会い】
原作:モンキー・パンチ (c)TMS スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが宮崎監督に初めて会ったのは「カリオストロの城」の制作中でした。当時「アニメージュ」の編集者だった鈴木プロデューサーは宮崎監督にインタビューを申し込むも、宮崎監督は同誌の編集姿勢を批判して取材を断ったそうです。鈴木氏はそれに引かず制作現場に通い続けます。
 「カリオストロの城」の冒頭のカーチェイスシーンにでてくるルパンのセリフ「まくるぞ」は、現場に通っているとき、絵コンテ執筆中の宮崎監督から「こういうとき何て言うんですかね?」と聞かれ、競輪好きの亀山修氏(鈴木プロデューサーの同僚の「アニメージュ」編集者)が「まくる」と呼ぶことを教えたことから生まれたそうです。そのやりとりをきっかけに、宮崎監督は鈴木プロデューサーたちに心を開いてくれるようになったそうです。
 宮崎監督の才能に魅了された鈴木プロデューサーと宮崎監督の長い付き合いがそこからはじまり、「アニメージュ」での「風の谷のナウシカ」の漫画連載・映画化、スタジオジブリ設立へとつながっていきます。
【初代ルパン役:山田康雄さんと宮崎“新人”監督とのエピソード】
原作:モンキー・パンチ (c)TMS 大塚さんの回想録「作画汗まみれ 改訂最新版」には、「カリオストロの城」のアフレコ収録のエピソードも記されています。宮崎監督から初代ルパン役の山田康雄さんに、「今回はこれまでと調子をかえて、例えばクリント・イーストウッドのような抑えた声をお願いしたい」と話したところ、最初山田さんは「ルパンは俺が決めてるンだ」と横柄な態度をとっていたそうですが、アフレコ用の映像を見ると態度がガラリと変わり、「どんなことでもおっしゃって下さい。何百回でもやり直します」と宮崎監督に詫びたそうです。
 山田さんは、当時放送中だった「ルパン三世(2ndシリーズ)」で、お調子者としてだけ描かれることの多かったルパン像に不満があり、アニメのルパンを生かしているのは自分だという自負をもっていたため、声のことで新人監督にあれこれ言われたくないと思っていたのではないか。しかし、「本物を見る眼はしっかり持っていました」と大塚さん著書でつづっています。
 「作画汗まみれ 改訂最新版」は、日本のアニメーション黎明期について書かれた貴重な回想録です。ここで紹介した話のほか、面白くて勉強になるエピソードが満載ですので、ご興味ある方はぜひ読んでみてください。また、2021年に亡くなった大塚さんの言葉と絵を集めた「道楽もの雑記帖」(大塚さんと親交のあった映像研究家の精二氏が編集・構成)が、5月31日に発売されます。
【宮崎駿監督がペンネームで手がけたテレビアニメ「ルパン」】
 宮崎監督は「カリオストロの城」の制作後、「ルパン三世(2ndシリーズ)」の第145話「死の翼アルバトロス」、第155話「さらば愛しきルパンよ」の脚本・絵コンテ・演出をペンネームで手がけています。ペンネームの「照樹務」は、テレコム・アニメーションフィルムの「テレコム」をもじってつけられました。
参考文献
「作画汗まみれ 改訂最新版」(大塚康生/「文春ジブリ文庫」文藝春秋刊)
「出発点 1979~1996」(宮崎駿/岩波書店刊)
「ALL ABOUT TOSHIO SUZUKI」(永塚あき子・編/KADOKAWA刊)

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