SPRINGMAN、peanut butters、ブラン
デー戦記の気鋭3組が競演、FM802『寿
限無座~陸の巻~』 主宰・樋口大喜
からバトンを受け継ぐべく、新DJハタ
ノユウスケが渾身のレポート

『寿限無座~陸の巻~』2023.4.25(TUE)大阪・心斎橋Pangea
4月25日(火)、大阪・心斎橋Pangeaにて、大阪のラジオ局・FM802『RADIO∞INFINITY』(毎週木曜・深夜24時~27時)と、関西のイベントプロモーター・清水音泉がタッグを組んで開催する無料招待制イベント『寿限無座~陸の巻~』が開催された。バンド名の由来をもとに作られた創作落語をFM802 DJの樋口大喜が行い、アーティストを紹介するという一風変わったイベントで今回が6回目の開催。先日、樋口が番組のDJを卒業したことからこの日が樋口大喜の『寿限無座』としては最後の開催となる。出演は、SPRINGMAN、peanut butters、ブランデー戦記の新進気鋭の3組。SPICEでは、落語とロックの融合で大いに盛り上がりをみせた当日の模様を、樋口からバトンを受け継ぐべく、『RADIO∞INFINITY』3代目DJ ハタノユウスケがレポート!
FM802 DJ 樋口大喜
落語の出囃子が響き渡るなか、オレンジ色の着物を纏い登場した樋口大喜。客いじりも交えながらトップバッターであるSPRINGMANの創作落語が始まる。「おい! 荒川ちゃんとボール取れよ!」「あぁごめんなさい、今日もダメだったなぁ……」少年野球では思うように結果が出なかった荒川大輔(Gt.Vo)が、偶然出会った音楽に魅了されアーティスト活動を始めるストーリー。「そういえばお母さんが子守唄で歌ってくれていた、ユニコーンのアルバム名から名前を取ろう! SPRINGMAN!」という樋口のどなりでUNICORN「スプリングマンのテーマ」を登場SEに、SPRINGMANがステージに上がる。
SPRINGMAN
SPRINGMAN
後光が差すステージ、荒川のギターで始まる「still writing…」からプレイボール。
「野球ダメだったんだよ、背ちっさくて」「それしかやってこなかったからどうしようと思ったけど、良かった、俺、音楽やってて」と感慨深気に語る。樋口の落語にアンサーを返しながら、「心境」「右にならえ」とファイトソングで畳み掛ける。
「SPRINGMANは元々スリーピースバンドでした、でも上手くメンバーとコミュニケーション取れなくて。そのときは何だよと思ったけど、今では自分の気持ちを上手く伝えるのが下手だったなと反省してます」「だから最近の曲には伝えることを大切にしてる」と後悔と反省をさらけ出しながら、過去を赤裸々に語る。
そして「本当はシャイだけど、ステージに立つ以上、生半可ではいられない」「大切な人にちゃんと気づかなきゃと思って作った歌です」と語り、新曲「カポック」へ。このエピソードに共感した人も少なくない。
メンバー紹介のあと4月6日の『 RADIO∞INFINITY』でオンエアが解禁された新曲「いないふり」が歌われると、インフィニティリスナーも自然と拳が上がり、会場のボルテージは最高潮へ。そしてラストナンバーは「さよなら北千住」。「めっちゃ感動したわ、ありがとう樋口さん!」と口にしてステージを後にした。
終始、汗だくになりながらギターを弾いて歌っていた荒川。序盤のMCで「なにか背中を押せたら嬉しいです、おせっかいだけど」そんな言葉をポロッと口にしたが、そのおせっかい精神がリスナーの心を掴み、背中を押してもらっていることを改めて実感できるステージだった。

続いてはpeanutbuttersの創作落語。「ズ…!なんかズがつくバンド名がいいなぁ…『夕方5時ズ』『夕方からズ』」。「もっと地面に根を張って、地に足ついた名前がいいのよね」おそらくコンポーザーの“ニシハラ”だろうか。バンド名の由来を決める際の掛け合いが始まる。
「うーん…ピーナッツバターズは?」「それええなぁ!他のナッツと違って、ピーナッツは地中に生えてくるし、ちゃんと地に根を張っている。僕らの音楽活動的にぴったりやん!」「そんなこと考えてなかったけど、まあいっか!」これまでの寿限無座で培われた表現力で樋口大喜が一人二役でバンド名を紹介し、peanutbuttersが登場。
peanutbutters
peanut butters
客席からは手拍子が起こり期待感に包まれる中、登場SEからそのままイントロへノンストップで繋がり「悪魔くん」が始まる。4月26日にリリースしたEP「ロンリーメイビー」の1曲目であるこの曲がこれから始まるショーの幕開けを告げてくれた。
「ツナマヨネーズ」「スーパーハイパー忍者手裏剣」「メロンD」MCがないままノンストップで曲が繋がれていくセットリスト。日々の生活の中にあるネガティブな感情をステージ上で表現した「ジャスコ、上野」、ゆったりとしたミドルテンポのリズム、神秘的なエフェクトがかかったボーカルの、カラフルな照明がまるで別世界と錯覚するような「るるるるくん」4月13日のFM802『RADIO∞INFINITY』でオンエアが解禁された新曲「she so come!!!」とジェットコースターのような緩急で畳み掛ける。曲名の由来の一つである“疾走感”に包まれた会場では自然に拳が上がっていた。
「パワーポップソーダ」を演奏しライブは残り1曲。「ありがとうございました、peanutbuttersでした」と短く挨拶をし、ラストナンバーは「普通のロック」ネガティブなメッセージをストレートに観衆に届けることで、勇気づけられ人も大勢いる。そう感じたステージだった。終始印象的だったのはVo.穂ノ佳。透明感のある歌声や、細かい手の動きや仕草にオーディエンスが自然に釘付けになっている。彼女の動き全てがpeanutbuttersの持っている音楽の繊細なメッセージを表現している気がした。
そしていよいよこの日のトリ、ブランデー戦記の創作落語が始まる。
「バンド組みたいねんけど、好きな音楽なに?」「andymoriが好きかなぁ…」「私はなきごと!」「andymoriとなきごとに共通するような名前にしたいなぁ~!」と樋口が誇張し演じる姿には、説明はせずとも蓮月(Gt.Vo)とみのり(Ba)のやりとりだとすぐに分かった。

「andymoriの「ベンガルトラとウイスキー」や、なきごとの曲にも「深夜2時とハイボール」お酒にまつわるワードが出てくるよな」というやりとりから、お酒にまつわるワードをバンド名に入れようと、「ブランデー」までたどり着いたようだ。ただ、エゴサーチで引っかからないという悩みが。そこでまたもや誇張されすぎたボリ(Dr)が登場。「戦記とかつけてみたら?」そんな一言で、ブランデー戦記に至ったようだ。そんな樋口の創作落語から、Pixiesの「Where Is My Mind?」をバックにメンバーが登場。
ブランデー戦記
ブランデー戦記
蓮月の力強い眼差しでスタートしたのは、現時点でリリースされている唯一の楽曲「Musica」。YouTubeでは約250万再生のヒットナンバーは結成1年未満の新人バンドをここまで引っ張ってきたナンバーだ。1曲目からオーディエンスの心をガッチリ掴んだ3人が、次に演奏したのは「サプリ」ニルヴァーナのようなグランジロックの風味を感じる力強いミドルテンポにフロアが動く。
同じくミドルテンポの「黒い帽子」からルーツの一つと創作落語でも紹介されていたandymoriを彷彿とさせるようなハイテンポな「機関銃」で畳み掛ける。激しいギターソロに観客の視線は釘付けに。
中盤のMCでは「せっかく抽選で当たった人が大勢いるので、我々の秘密を打ち明けたいと思ってます」「私と樋口さんは学校の後輩です!」と突然のカミングアウト。と思いきや「次ボリなんかある?」と無茶振り。楽曲とのギャップを感じる彼女たちの親しみやすいキャラクターも垣間見えた。
「バンドは応援できる時に応援しないと、終わってしまうんだなって最近感じました。その気持ちを曲にしました」という言葉から「ラストライブ」へ。ゆったりとした落ち着いたテンポから、後半にスピードアップする曲調には思わず拳が上がる。
そのままの勢いで令和歌謡テイストの「僕のスウィーティー」そして、樋口大喜の『寿限無座』のラストナンバーにセレクトしたのはゆったりとしたロックバラードの「水鏡」。
先ほども説明したがリリースは「Musica」だけ、初めて彼女たちのライブを見る観客は「Musica」以外すべてが新曲という状況下でも、盛り上げきった彼女たちのパフォーマンスに今後の大きな期待を感じた。

すべてのアーティストのパフォーマンスも創作落語も終了した。しかし、ここで再び樋口大喜が登壇。「なんか、近くで『RUSH BALL』ていうイベントやってるらしいで! ちょっと気になるから行ってみる?」泉大津出身の少年が音楽に出会い、ラジオに出会うまでの創作落語が始まった。アーティスト以外の創作落語はおそらく初めてだったため、感動を覚えながら、樋口に呼び込まれて『RADIO∞INFINITY』3代目DJのハタノユウスケ(筆者)がステージに上がる。この瞬間、リスナーの目の前で『RADIO∞INFINITY』新旧DJのバトンが渡された。
そして、気になるこのイベントの継続について「『寿限無座』続けてほしいですよね?」と観客に煽る樋口、そしてそれに拍手で応える観客。ハタノは「落語は自信ないし、ラーメン好きなので『寿限無屋』じゃダメですか?」と聞いたが、樋口から「そんなんアカンよ」と一蹴される場面も。なんとか『寿限無座』の継続も決定したところで、イベントは大盛況のうちに幕を閉じた。
こうして樋口大喜先輩からイベントのバトンも受け取ったわけだが……。コロナ禍で始まったこのイベントも、声出しが可能になった現在まで続いていて、僕にバトンが渡ったことでこれからもリスナーのあなたとの出会いのお手伝いをさせていただけることに喜びを感じる。オンラインでもライブが楽しめるようになった今でも、ライブハウスでの体験は何事にも変えられない魅力がある。ラジオをキッカケにライブハウスに来てほしいし、逆にライブハウスからラジオも楽しんでほしい。
そして知ってほしいのは、あなたひとりひとりのリクエストやメッセージが積み重なって番組やイベントが作られていること。たとえ採用されなくとも、次回の選曲やイベントのキャスティングにつながっている。樋口先輩がこの日も言っていた言葉だが、「あなたが好きなアーティストを一番早く応援する方法は、ラジオにリクエストを送ること」だと自分も思っている。これからも、あなたひとりひとりの「声」をこれからもラジオに届けてほしい。
取材・文=ハタノユウスケ 撮影=桃子

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