花總まり×瀬奈じゅん、ミュージカル
『SUNNY』にかける意気込みと思い出
の曲を語る

2011年に公開されてヒットした韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』、そのリメイク版である2018年の邦画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』を原作にしたミュージカル『SUNNY』が日本の舞台にお目見えする。中年の主婦が高校時代の仲良しグループの仲間と再会し、見つけたものとは――。初舞台化となるこの作品の脚本・演出を手掛けるのは西田征史。もともとの韓国映画版では1970年代~1980年代、邦画版では1990年代の数々のヒット曲がヒロインたちの青春時代を彩ったが、今回は松田聖子の「SWEET MEMORIES」や荻野目洋子の「ダンシング・ヒーロー」といった日本の1980年代ポップスが流れる舞台になるとのこと。主人公奈美を演じる花總まりと、仲良しグループ「SUNNY」のリーダーだった千夏を演じる瀬奈じゅんに、作品への意気込みを聞いた。

――原作は韓国映画で、後に日本リメイク版も作られました。
花總 この舞台のお話をいただいてから、韓国版の映画をDVDで観ました。まったく予備知識がなく、どんな話かわからずに観たのですが、想像以上におもしろかったです。出てくる人たちのキャラクターの設定がおもしろかったし、物語全体の設定も意外と深くて、すごく充実感がありました。単なるおもしろい物語というだけではなくて、そこから感じるものがたくさんあって。
瀬奈 私も作品をまったく知らなかったのですが、今回のお話をいただいて、篠原涼子さんが主演した日本版の映画を観ました。韓国版はこれから観ようかなと思っています。日本版を観ていると、花總さんもおっしゃっているように、本当に、楽しいだけじゃなくって、すごくいろいろな人間模様があって、「SUNNY」のメンバー一人一人に物語があるのがすごく素敵だなと思いました。
――今回の舞台版で楽しみにしていることは?
花總 いろいろな分野からキャストの方々が集まっているので、想像しただけで新しいミュージカルが生まれそうな予感がふつふつと湧いていて。出演者として、お稽古場から作品ができあがっていく過程を体感できるのがすごく楽しみですし、幕が開いてからのお客様の反応を体感できるのがすごく楽しみです。
――これまで演じてきたのとはちょっと違う役どころなのかなと。
花總 はい。私、今回は変に気負うことなく楽しみたいなと。出演者の皆さんと楽しく稽古して、毎日楽しく本番の舞台、お客様の前に立ちたいなと。ある意味、自分の枠というか、今まで作ってきた舞台への向かい方というものも、共演者の方々を観ればいろいろな刺激がもらえて、また新しい自分の取り組み方も自分自身見つかると思うし、そういう意味ですごく楽しみます。
瀬奈 この作品の話が決まって、花總さんに電話したときに、「あさこ、楽しませてね」と言われたので、もう、花總さんを楽しませることに専念したいなと。
花總 (笑)
瀬奈 ただ案外、私、人見知りというか、初めての人に弱いので。自分をちゃんと出せないので。
花總 そうなの?
瀬奈 そうですね。何か、はじめましての人には変にニコニコしちゃうんですよ。だからちょっと能天気な人に思われるので(笑)、そこは気をつけなきゃなと思ってますけれども。久しぶりにこんなに女性ばかりの作品に出演するんですよね。男性キャストが二人しかいないので、彼らのことを思ったら。
花總 そうだー。
瀬奈 彼らがおいてけぼりにならないように。でも、久しぶりにこんなに女性ばかりのキャストなので、そこもちょっと楽しみではありますね。
――「あさこ、楽しませてね」の心は?
花總 空気感かな。設定が親友じゃないですか。仲良しグループ「SUNNY」の6人組で。だからそういう空気感というものも作りたいですし、上手いとか下手とかちゃんとできたとかできないとかじゃなくて、本当に、大きく見て、その作品が何を伝えたいかみたいなことを、その前段階の自分たちのつながりから作っていって、そこがあればみたいなものを大切にしたいなと。技術じゃなくて、自然に生まれてくるもの。でも、そう難しく考えずにやっていきたいな。楽しく作っていきたいですね。
瀬奈 いろいろなプレッシャーがあるとか、そういう舞台に今まで出演してきて、花總さんもつい最近までそういう舞台、『エリザベート』をされていて。独特の空気感の中、宝塚みたいに温かいだけじゃない戦場があって、自分と闘ったりしている中でずっと張りつめてやってきた、たぶん花總さんもそうだと思うし私もそうだったんですけれども、もうそろそろ何かそれいいんじゃないかって私は思っていて。
花總 (笑)
瀬奈 そういう意味でも私は楽しみたいです。
花總 うん。本当に共演者もいろいろな方がいらっしゃって、若い子もいるし、振付も「バブリーダンス」のakaneさんで、たぶん、今まで観てきた景色と全然違うと思うから、それをいっぱい楽しんで、刺激をもらって、みんなで一つのものを作りたいと思うし。
――宝塚時代、お二人は上級生、下級生の間柄でした。
花總 一期違いなんです。組が違ったので、音楽学校のときしか一緒じゃなかった感じで。蓋開けてみれば年齢もほぼ一緒だし、退団してだいぶ経つし、お互いスコーンと抜けるものは抜けて、みたいな。
瀬奈 さっき思い出したんですけれども、私がトップになって最初の公演『Ernest in Love』の稽古中に、隣で花總さんが稽古してらっしゃって。
花總 隣だったね。
瀬奈 そのとき、すごい満面の笑みで、「おめでとう!」って言ってくださったの、さっき思い出しました。
花總 え、言ってた?
瀬奈 「新参者です、よろしくお願いします」と言ったら、そのころあったトップの決まり、こういうことをしてはいけないみたいなことも、全部教えてくださって。
花總 え、何があった?(笑)
瀬奈 こういうことに気をつけておいた方がいいよとか、そういうことを全部教えてくださいました。
――在団中のお互いの印象は?
瀬奈 私はもう、「姫」だなと思ってました。私が初舞台を踏んだころ、『白夜伝説』のミーミルという役をやってらっしゃって、本当にかわいくて。何回か花總さんを観に行きました。
花總 今思うと、音楽学校時代は予科本科の関係だから、いつもニコリとも笑わない顔を見ていて。予科生ってそういうものだったから。そういうときも思い出すなと思うけれども、入団してからはもう、男役スターさんだなと。下級生というよりも、男役スターの瀬奈じゅんさん、という感じ。今は全然そんな感じじゃないですけれども。
瀬奈 いつでも戻れちゃうんですよね、スイッチが入っちゃうと。花總さんもいつでも娘役に戻れますよ。
花總 さっき、あさこが前を歩いて私が後ろを歩いている瞬間があって、やっぱり後姿が頼もしいなって(笑)。洋服が風を切る感じというか。
瀬奈 それはね、たぶん、男役だからとかじゃないと思いますよ。
花總 そうなの?
瀬奈 それが私なんです(笑)。
――それぞれ演じられる役柄についてお聞かせください。
花總 奈美みたいに感じている世の中の主婦の方って少なからずいらっしゃるんだろうなと想像はしました。外からはわからないけれども、実はふと、今の自分の生活を客観的に見てしまう、見つめ直してしまう、そういう毎日を送っている方っていらっしゃるんじゃないかなって。(私自身は)結婚もしていないし子供もいないし、すごく想像の世界ですけれども、よくありそうだなって。よくそういう設定の本だったり映画だったり観てきているから、単純にそう思っちゃうのかもしれないですけれども。おそらく共感する方もいらっしゃるんじゃないかなって。どの役も想像から始まって作っていくという感じですね。まだお稽古に入っていないから、悩んではいないですけれども。もしかしたら、あ、こういう感覚なのかなって思うこともあるかもしれないですけれども、まずは想像から始まりますね。
瀬奈 千夏は、まだまだ若いうちに余命宣告を受ける役柄で。余命宣告されて悔いなく生きるってどういう感じだろうと想像しますね。私と違うのは、千夏は結婚していなくて子供もいない。今の私が余命宣告されたとしたら、子供たちのために、家族のために何ができるだろうって考えますけれども、千夏にはそこの部分はないわけで、その気持ちの持って行き場みたいなものがきっとかつての「SUNNY」の仲間たちなんだろうなって思うので、そこをていねいに演じていきたいなと思っています。最初からこうしようと決めてしまわずに、共演者の方々と一緒にお稽古しながら生まれてくるものを大切に、共鳴しながら作っていけたらなと思っています。お芝居するときいつも思っているんですが、人の役も自分が作るつもりで、私の役も皆さんに作っていただくつもりで、ゆだねながら一緒に作っていけたらと思います。
――ちなみに、青春時代の思い出の曲は?
花總 いろいろな曲のサビは歌えるんですけれども、サビしか歌えない中、一生懸命全部覚えようと思った曲は、松田聖子さんの「瞳はダイアモンド」ですね。今度こそ一曲覚えるぞ、みたいな感じですごく頑張って。
瀬奈 えー、聞きたい!
花總 なんでその曲だったのかはわからないんですけれども。当時、松田聖子さん派か中森明菜さん派か、みたいなのありましたよね。もちろんどちらの方の曲も大好きで、中森明菜さんの「少女A」とかも歌ってましたけど、「瞳はダイアモンド」だけはなぜか気合を入れて覚えていた自分を思い出しました。
瀬奈 私はサザンオールスターズが好きで。高校時代に好きだった男の子がカラオケで歌ったんですよ。そこから好きになって。唯一東京から音楽学校に持って行ったのがサザンのCDで、予科生のとき、毎晩聴いて涙してました(笑)。若かったのでホームシックと、歯を磨くときに山が見える光景に、なんて田舎に来ちゃったんだろう……という情けなさと(笑)、音楽学校に入る前に友達とかとみんなでわいわいカラオケとかして遊んでいたころの自由みたいなのが恋しくて、毎晩聴いてました。「希望の轍」が大好きで。「LOVE AFFAIR~秘密のデート」も大好きでしたね。
取材・文=藤本真由(舞台評論家)  写真撮影=福岡諒祠

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