城田優&加藤和樹が圧巻の歌唱披露!
 新キャストを迎え集大成を目指すミ
ュージカル『ファントム』製作発表レ
ポート

城田優が2019年に演出・主演を務めて話題を呼んだミュージカル『ファントム』が、4年ぶりに大阪・東京で上演される。
本作はガストン・ルルーのベストセラー小説『オペラ座の怪人』を原作とし、アーサー・コピットの脚本とモーリー・イェストンの作詞・作曲により誕生したミュージカル。怪人ファントムの姿がひとりの青年エリックとして描かれており、耽美的な音楽と共にドラマチックに物語が紡がれてゆく。日本では2004年の初演以来、繰り返し上演されてきた。
前回公演時は城田が演出し、加藤和樹とダブルキャストで主演のファントム(エリック)を演じた。今回はそれに加えて城田がシャンドン伯爵役を大野拓朗とダブルキャストで演じる。さらにクリスティーヌ役には真彩希帆とsaraが新たに加わり、2023年版の新たな『ファントム』に期待が高まる。
2023年4月5日(水)、都内にて開催された製作発表の模様をレポートする。

まずは歌唱披露からスタート。城田と加藤が1曲ずつファントムのナンバーを披露した。
トップバッターの城田は「世界のどこに」を心の叫びのように力強く歌い上げ、ファントムの切なる想いを音楽に乗せて響かせた。続く加藤が披露したのは「崩れゆく心」。加藤はステージに姿を現した瞬間から憂いを帯びた表情を見せ、孤独と哀しみに満ちた想いを繊細な歌声に込めた。
(左から)森亮平(音楽監督)、城田優

加藤和樹

城田は本作に3度目、加藤は2度目の出演となるが、それぞれがファントムという役の空気を纏い、観る者を作品世界へと誘っていく姿は圧巻だった。
城田優
加藤和樹
歌唱披露後は改めて加藤和樹、城田優、真彩希帆、sara、大野拓朗ら5名が登壇。ひとりずつ熱い意気込みを述べた。
加藤和樹(ファントム役)
再演ということで、気持ちも新たにすごくワクワクしております。新しいクリスティーヌのお二人を迎え、そしてシャンドン伯爵、ほとんどのキャストが一新する中で、城田優の演出の元、また新たなものを見つけていきたいと思います。同じことをやるのではなく、新たなファントムに生まれ変わるのを目指していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

加藤和樹

真彩希帆(クリスティーヌ役)
『ファントム』という作品は、宝塚の雪組でトップ娘役を務めておりましたときに一度出演させていただいたことがあります。ですが、今回は自分の気持ちも数年経って全然違っているということもありますし、何より新しいことにチャレンジする気持ちで今は心が向かっているので、どんな風に城田さんが演出をしてくださって、それに向かっていろいろなお話ができるということもすごく楽しみにしています。みなさまに楽しんでいただけるようにこれから稽古してまいりますので、どうぞ楽しみに劇場にいらしてください。
真彩希帆
sara(クリスティーヌ役)
本当に夢のようで。今日ここに立たせていただいたときに、始まるんだなというワクワクとドキドキで今は胸がいっぱいです。しっかりとクリスティーヌという役を全うできるよう頑張ります!
sara
大野拓朗(シャンドン伯爵役) 
今回は演出家の城田優さんから直接ご連絡をいただきまして。「シャンドンが輝けば輝く程、ファントムの闇が深くなる。だからぜひ拓朗にやってもらいたい」とお声がけいただいたので、参加させていただくことを決めました。そのご期待に応えるべく、先週ブロードウェイで『オペラ座の怪人』を観て改めて勉強してまいりました。こんな風に一つひとつの作品としっかり向き合う時間を持って、大切に結果を出していけるようにと深く思いながら近年は芝居に取り組んでおります。観に来てくださったみなさまに元気と勇気をお裾分けできるよう、精一杯シャンドンを演じたいと思います。
大野拓朗
城田優(演出・ファントム役・シャンドン伯爵役)
個人的には3度目のファントム役の挑戦、そして演出は前回からやらせていただいてるんですけれども、そこに加えてシャンドン伯爵役をやらせていただくことになりました。この挑戦によって、エンターテインメントに携わっている方たちはもちろん、お客様として来てくださるみなさまにも「城田がこれだけのことをやるんだったら、私も・僕もできるかもしれない」というような、何か希望を持っていただけるようどれも片手間にせず、演出もファントムもシャンドンも誰よりも輝き……ここに2人(加藤・大野)いますけれども(笑)、誰よりも輝きをといつも自分で鼓舞しています。ここに今日いないメンバー含めて、本当に最高のキャストと素晴らしい愛のあるスタッフのみなさまに囲まれながら、なるべくご迷惑をおかけしないように一生懸命、稽古場でも本番も頑張っていきたいと思っております。本当に愛に満ちた素晴らしい作品ですので、よろしくお願いいたします。
城田優
挨拶を終えたあとは質疑応答へと移った。
ーー城田さんは最初は主演、そして2回目は主演と演出、今回はそれにシャンドン伯爵まで加わるという。なぜそこまでされるんでしょうか?
城田:なんででしょうかねえ。僕もわからないです(笑)。僕自身このエンターテインメントの仕事をする上で決めていることがありまして、それが挑戦ということです。基本的に何をやるにしても、とにかく絶対できないだろうということをいかに自分が努力してできるようになるか。当たり前のことのようですけれど、実はすごく難しいことで。二刀流と言われていたときも、本当にヒーヒー言いながら、隣にいる加藤和樹に助けてもらいながらずっとやってきたんです。(前回と)また同じことをやっても自分の中での挑戦としてはそこまで大きなものにはならないという中、最終的に落ち着いたところが「じゃあ城田、シャンドン伯爵も挑戦してみないか」と。僕が三刀流に挑戦することで、それが成功した暁にはきっと観てくださった方や関わってくださった方たち全てに素敵な刺激やポジティブなエネルギーを届けられるのではないかという僕なりの結論に至ったので、シャンドン役も挑戦させていただくことになりました。おそらく本当にみなさんには迷惑をかけ続ける日々が続くと思うんですけれど、そこを超えていくシャンドン伯爵を作れるように精一杯、自分なりに一生懸命努力したいと思います。
ーー城田さんはこう仰っていますが、みなさんからはどう見えていますか? 一番近くにいた加藤さんはどうでしょう?
加藤:彼(城田)はね、なるべくご迷惑をかけないようにと言っていますが、全然かけてください(笑)。やはりそこを支えていくのも我々カンパニーメンバーの役目だと思っているので。彼がどれだけ努力して今のこの立場にいるのかということも、我々はわかっているつもりですし、彼が実現したい夢、形があるのであれば、そこに我々も全力で応えていきたいなと思っております。
ーークリスティーヌのお二人はいかがですか?
真彩:すごく楽しい試みだなと思って! できるのかできないのかというギリギリのラインにチャレンジするのはめちゃくちゃ楽しいことですよね。多分、私は私でクリスティーヌという役を作るのに必死だと思うんです。だからこそ演出家であったり、エリック(ファントム)であったり、シャンドンであったり、いろんな視点で見ることができる城田さんの近くにいられるというのはすごく楽しみで、私にとっても刺激だなと感じています。
sara:人間なのだろうかというくらい、すごいなと。城田さんが挑戦されることで、私もすごく力もらえるというか。城田さんがここまで自分の限界を超えて挑戦しようとされているということは、自分もそのエネルギーを受けてそれについていって、カンパニー全員で一丸となって前へ前へと進むエネルギーが生まれていくんだろうなと思っています。
ーー大野さんはシングルキャストかと思いきや、まさかの城田さんとダブルキャストということで。何か違いを見せていくとしたらどんな風に見せていきたいと思いますか?
大野:僕はやっぱりシャンドン一筋なので負けるわけにはいかないな、という思いです(笑)。でも一人のミュージカル・演劇ファンとして、(城田)優くんが挑戦しようとしている新しい試みを僕自身も側で見られることにすごくワクワクしています。ぜひとも大谷翔平超えの三刀流を完遂していただけるようサポートして、一緒に作り上げていけたらいいなと思っています。
城田:今日の見出しは「城田優、大谷翔平超えの三刀流へ!」ですね。
大野:さっきからずっと、和樹さんが喋っているときからこれを言おうって考えていました。
加藤:じゃあ、僕の話は聞いていなかったという。
大野:何て言っていましたっけ?(笑)こんな感じで頑張りたいと思います(笑)。
(左から)城田優、sara、加藤和樹、真彩希帆、大野拓朗
ーー真彩さんは2回目の『ファントム』とお話しされていてましたが、前回と違って相手が今度は男性になります。その辺りの違いはいかがでしょう?
真彩:私があまり男性・女性ということを考えていない人間なので……あ、でも身長が大きいなと思いました(笑)。私自身、一番変化を感じるだろうなというのは歌詞が違うことですね。演出が違うことよりも歌詞が違うことが大きいです。歌い込みまくった歌なので、違う歌詞が出てこないかというところはちょっと心配なんですけれども。「また『ファントム』のクリスティーヌを観れる」と思ってくださる方もいらっしゃると思うんですけれど、多分、全然違うと思います! 先に言っておきます(笑)。
ーーsaraさんはどんどんミュージカルの大作に出演されて勢いに乗っていますが、今の状況を自分でどう思いますか?
sara:信じられなくて。家族も信じていなくて(笑)。まだ実感としては自分が出ているということを全然感じていなくて。ただ『ドリームガールズ』もそうですし、『ファントム』もずっと憧れ続けた作品なので、まさか自分がそのカンパニーの一員として出られるなんて、つい最近まで全然信じられなかったようなことなんです。ですが、憧れるだけじゃなく、自分がその作品に対して何ができるかということにしっかりと向き合って、一つひとつの作品に向き合っていきたいなと今は感じています。
ーー『ドリームガールズ』では元宝塚雪組トップスターの望海風斗さんと共演、そして今回は元宝塚雪組トップ娘役の真彩希帆さんとダブルキャストということで、雪組のトップを網羅されていますね。
sara:実は私、兵庫出身なんですけれど、初めて観た宝塚が雪組の公演なんです。
真彩:そうなの!?
sara:望海さんと真彩さんの“だいきほコンビ”の公演をずっと観てきまして、退団公演ももちろん観させていただいて。
真彩:ありがとうございます!
sara:もう大好きで、録画して繰り返し観て、ココが好きとかもあって……。
城田:この場で告白するんだね?(笑)
sara:すみません(笑)。直接言うとお稽古のときとかに自分が「あっ!」てなってしまうかなと思ってずっと隠していたんですけど(笑)。
真彩:やったあ! 仲良くなりたいです(笑)。
(左から)sara、加藤和樹、真彩希帆
ーー加藤さん、『ファントム』の一番の魅力を教えてください。
加藤:僕と城田さんが演じるですねえ……“城田さん”だって(笑)。 
城田:初めて言われました(笑)。
加藤:(笑)。僕と(城田)優が演じるエリックは、本当に孤独を抱えながら生きてきたんです。けれどもそこにクリスティーヌという光・希望を見い出して、その中で見つけていく愛という、愛がすごく詰まった作品だと思います。特に父親からの愛、母親からの愛、そしていろんなところに散りばめられた愛というものを観ている人に届けたいという、愛の詰まった作品です。
ーー大野さんは、ダブルキャストの城田さんに何か負けないことってありますか?
城田:(大野)拓朗への質問だけちょっと意地悪ですね(笑)。いっぱいあるでしょう?
大野:ちょっと見当たらない(笑)。
城田:大丈夫、いっぱいあります! 比べるものじゃございませんしね。
大野:……動物への愛、ですかね。
城田:その心は?
大野:もうそれだけです。動物が好きってだけですね。
城田:僕も好きです。
大野:でも負けないと思います。
城田:僕、割と朝方までインスタとかの動物の動画をずっと見てます。昨日も今日も一昨日もずっと。
大野:iPhoneに保存とかしてます?
城田:してます。で、家族のLINEに送ったりとか毎日してます。
大野:(負けないこと)ありませんでしたー!(笑)
(左から)加藤和樹、真彩希帆、大野拓朗
ーー城田さんはこの多彩な顔ぶれをどのように演出していきたいですか?
城田:今回のプロダクションとしての構想はありますし、もう打ち合わせは始めています。そういった意味では、具体的なことも変更することもそのまま行きたいと思っていることも多々あるんです。けど、お芝居という点においてはみなさんと立ってみないとわからないので。僕が最初から決めるわけではなく、前回もそうでしたけれどもしっかり一人ひとりとディスカッションをして、どういうクリスティーヌを目指していきたいのか、どういうエリックを目指していきたいのか、そこをまず共有してからですね。僕がこうしたいというよりは、みささんがどうしたいかを僕がディレクションするという形を取らせていただければなと思っております。そしてもちろん、道に迷ったという人たちに対しては僕なりにできる限りのサポートはしたいと思います。基本的には一緒に作っていけたらすごく幸せだなと思っています。
ーー代表して、城田さんからお客様へメッセージをお願いします。
城田:この作品が持つ愛の深さや悲しみの深さ、表裏一体とも言える憎しみと愛というものがエリック(ファントム)という役を通してきっと客席に伝わって、とてもネガティブなエネルギーも含めてなんですけど、大きなエネルギーになっていまして。自分で演出・出演しているのでおこがましいんですけど、これを体験してくださったお客様は、この作品の持つメッセージやエネルギーを感じていただけたと思うんです。
大沢たかおさんの代からずっと続いてきた『ファントム』という作品をやればやる程、次が集大成としてしっかりと自分の中でもベストの演出、ベストのお芝居、ベストのプロダクションになるようにとにかく精一杯努力をしたいと思います。初めて観てくださるお客様には、この作品を通してミュージカルというものの素晴らしさ、音楽を通して感情を表現することの素晴らしさも、ぜひこの素晴らしいモーリー・イェストンの音楽に乗せてお届けできたらいいなと思っております。
とにかく2023年間違いなく、比べるものではないけれど、東京国際フォーラムと梅田芸術劇場を一番熱い劇場にしたいと思っております。「どんなもんなんだ?」とぜひ観に来ていただければ、その「どんなもんなんだ?」の「?」を「!」に変えて、素敵な感情を持ち帰っていただけるような演出とお芝居をここにいるみんなと作っていきます。ぜひぜひ、足をお運びいただければと思います。
城田優
最後に報道陣からの質疑応答の時間が設けられた。そこで手が挙がったのが、TBSのテレビ番組「アカデミーナイトG」の収録で参加していたトレンディエンジェルの斎藤司だった。
斎藤司(トレンディエンジェル)
斎藤:私、実はミュージカル俳優をちょっと嗜んでおりまして、みなさまに先輩としてうかがいたいんです。ちょっと(作品とは)関係ないかもしれないですけども……。
城田:あ、すみません。作品に関係ない話はやめていただけますか(笑)。
斎藤:みなさまの心を掴む差し入れを聞きたいんですけれども。
城田:全く関係ないですね?(笑)
加藤:僕はいろいろ差し入れしていて、コロナ禍の前は自分で作ったチャーシューとか。
城田:和樹はいつも現場に食事を。僕にお弁当も作ってくれて。
加藤:放っておくと彼はご飯を食べないので。
加藤さんの発言に周囲から「奥さん⁉︎」とツッコミが入る場面も。
城田:(前回の『ファントム』公演時の稽古場で)クリスティーヌが隣の席だったんですね。で、席に着いたらお弁当箱が置いてあって。ちょうど前日にクリスティーヌたちとお弁当の話をしていたので「え、どっちが作って来てくれたんだろう!?」と思ったら、和樹が「よかったら(加藤さんのモノマネをしながら)」って。
加藤:すみませんね僕で(笑)。
城田:びっくりしました。キュンってしました。それくらい彼は自分で差し入れを作ってくるんです。これが一番じゃないですか? これに勝るものはないと思います。想いをしっかり込めて家でグツグツ煮込んで。今日はハンバーグ、今日は○○みたいに日々変わっていくんですよ。それを食べて僕は生きながらえていました。
斎藤:なるほど! 明後日、私は公演がございますのでチャーシューをお待ちさせていただいております(?)。
城田:なんだって?(笑)テンパっていますけど、大丈夫ですか斎藤さん!
(左から)城田優、sara、加藤和樹、真彩希帆、大野拓朗
予想外のハプニング(?)がありつつも、会見は賑やかに締めくくられた。
大阪公演は梅田芸術劇場メインホールにて7月22日(土)〜8月6日(日)、東京公演は東京国際フォーラム ホールCにて8月14日(月)〜9月10日(日)に上演予定だ。
(左から)城田優、sara、加藤和樹、真彩希帆、大野拓朗
取材・文・写真=松村 蘭(らんねえ)

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着