ネクストブレイク9組が熱演『MORNIN
G RIVER SUMMIT 2023』ーー言葉で、
歌で、全力で思いを伝えたステージを
レポート

『MORNING RIVER SUMMIT 2023』2023.3.19(SUN)大阪・大阪城音楽堂
『MORNING RIVER SUMMIT 2023』 撮影=ハヤシマコ
3月19日(日)、大阪・大阪城音楽堂にて毎年恒例の音楽イベント『MORNING RIVER SUMMIT 2023(以下、リバサミ)」が開催された。2008年の開始から会場やイベント形式を進化させつつ、15回目を迎える今年もチケット代1000円と破格の安さで開催! 
『MORNING RIVER SUMMIT 2023』 撮影=ハヤシマコ
今年はSPRINGMAN、なきごとBye-Bye-Handの方程式、Billyrrom、moon dropyutoriリアクション ザ ブッタリュックと添い寝ごはん、Lay(オープニングアクト)の計9組が出演。桜が満開を迎えようとする快晴のなか、会場に多くのオーディエンスが集まり、これからの音楽シーンを盛り上げるであろう注目の若手アーティストらの熱演を大いに楽しんでいた。
■Lay
Lay 撮影=日吉“JP”純平
まずオープニングアクトに登場したのは『リバサミ』史上、最年少出演者となる14歳のシンガーソングライター・Lay。「今日は楽しんでいきましょう!」と、2月にリリースされたばかりの3rdデジタルシングル「サンデリア」を披露。ラフな衣装でアコギをかき鳴らし、ファンキーなナンバーに英詞を混ぜつつ軽快に歌い上げていく。
Lay
広い会場でのパフォーマンスはこの日が初めてと語るが、緊張感を感じるどころか、はつらつとしたプレイは観ているこちらもスッと胸がすく思いで魅入ってしまう。まだ会場は開場したばかりで、続々と観客が集まってくるが、彼女のクリアでエネルギッシュな歌声に誰もがステージに目を奪われている。
Lay
2曲目「Wanna be Breakin'」でより勢いを増したパフォーマンスで会場の熱を高めると、ラストは4月12日(水)に発表予定の1stEP「I’ m Believin‘」から表題曲を披露。前曲とは一転、観客の心の内側に訴えかけるような深みのある歌声で高い表現力を見せつけステージが終了。たった数曲で魅せた彼女の堂々としたパフォーマンスに大きな拍手が届けられた。
■Billyrrom
Billyrrom 撮影=ハヤシマコ
トップバッターは、Billyrrom。ステージインするとMol(Vo)はじっと会場を見渡し、言葉もなくジェスチャーひとつで観客を立ち上がらせる。その様子はなんともいえない緊張感があって、これから始まるパフォーマンスに余裕と自信さえ感じ取れる。Leno(Key.Syn)が不可思議な音色で誘い込むと、1曲目「タイトル未発表曲」へ。Taiseiwatabiki(Ba)の足元から揺らす心地よい低音を効かせたリズム、Molの高低をミックスさせた歌唱、Yuta Hara(DJ/VJ)が繋ぐアーバンなサウンドでさっそくオーディエンスを躍らせていく。
Billyrrom
「初野外なんでテンションぶち上がってます!」と声を懸けると「Danceless Island」でも、色香のあるファルセット、彩り豊かな音で観客を夢中にさせ、太陽の熱がジリジリと刺す会場にゆるりとしたリラクシンな空気が満ちていく。「Babel」ではRin(Gt)のシティポップ感満載のカッティング、Shunsuke(Dr)の浮遊感が心地よいリズムが真昼の会場に夜の匂いを運んでくる。
Billyrrom
続く「Solotrip」では、後半に進むほどメンバー同士で高め合ったテンションが観客に同調していくのが伝わってくる。心地よい波の中にずっと漂っているような、堕ちそうで堕ちない、そんなギリギリ感がたまらなく気持ち良い。ライブ後半は「Magnet」「Defunk」とハイセンスな楽曲を連投。真っ昼間から会場全体をハイなテンションに持ち込み、全6曲を駆け抜けていった。
Billyrrom
Billyrrom
Billyrrom
Billyrrom
■SPRINGMAN
SPRINGMAN 撮影=日吉“JP”純平
2番手は、東京を拠点に活動する、荒川大輔(Vo.Gt)によるソロプロジェクト・SPRINGMAN。アーティスト名の由来はユニコーンのアルバム『SPRINGMAN』なんだけど、荒川は名前にぴったりな春の野外ステージに気合たっぷりのようで、サウンドチェックから豪快なギターが鳴り響く。SEは斉藤和義「やわらかな日」、観客は曲に釣られて手拍子を送るも、1曲目「心境」からストレートかつシンプルなロックサウンドをかき鳴らし、会場の空気をがつんと変えてしまう。
SPRINGMAN
「晴れて良かったー!」、満面の笑みで叫ぶ荒川。この日のステージはサポートメンバーを迎えてのバンド編成だが、「さよなら北千住」ではメンバーと向かい合い、<さよなら北千住>と歌うコーラスも、心底バンド演奏が楽しいんだという気持ちが伝わってくる。飾りっ気のないロックには胸いっぱいに甘酸っぱい気持ちが充満していて、ストレートなバンドサウンドに観客はみんな、あっという間に心をつかまれてしまった。
SPRINGMAN
ステージ後半には、3か月連続で音源をリリースすることを発表し、第1弾として、3月29日(水)に配信リリースされる「カポック」をいち早く披露。真っ直ぐに思いを綴ったラブソングで熱量を高めると、ラスト「still writing…」ではさらに表情を変え、じわりと染みる歌声を聴かせるなど、全6曲を多彩な表情で魅せてくれた。
SPRINGMAN
SPRINGMAN
SPRINGMAN
■Bye-Bye-Handの方程式
Bye-Bye-Handの方程式 撮影=ハヤシマコ
Bye-Bye-Handの方程式は、汐田泰輝(Vo.Gt)が「愛するアンタに歌いに来た!」と熱い言葉を投げかけ、「romance tower」で本編スタート。ダカダカと叩きこむ清弘陽哉(Dr)、中村龍人(Ba)のリズムに気持ちが急かされた観客はみんな前のめり気味にステージに見入っている。ジェットコースターみたく駆け抜けていく岩橋茅津(Gt)のメロは逸る気持ちを抑えきれない恋心みたいで、思わず胸がキュンとしてしまう。「あの子と宇宙に夢中な僕ら」ではポップなメロ、メンバー4人の爽快で熱い大合唱に、観客はフルスイングの拳で呼応。
Bye-Bye-Handの方程式
Bye-Bye-Handの方程式

続く「ソフビ人間」「目を閉じるだけ」も、疾走感がたまらなく気持ち良い。ほとんどの楽曲が3分もなくって、次から次に楽曲が展開していくけれど、がむしゃらなだけじゃなく、ちゃんと感情も真正面からぶつけてくるもんだから一瞬たりとも目が離せない。「名前を覚えてとか言わない。好きか嫌いか決めてほしい!」と、ライブハウスも野外の会場も何も変わらない、いつも通りのパフォーマンスをと、直球勝負を続ける4人。ステージ後半には「ひかりあうものたち」「春散る日々さ」と、じわりと優しく染み込む楽曲も披露。
Bye-Bye-Handの方程式
3年前の『リバサミ』に観客として足を運んでいたという汐田。数年後にまさか自分が同じステージに立つなんて想像もしてなかったと語りつつ、「ロックンロール・スーパーノヴァ」「風街突風倶楽部」と、武骨なまでにまっすぐなロックンロールを打ち鳴らし、バンドが持つ喜怒哀楽の全てを見せつけた。
Bye-Bye-Handの方程式
Bye-Bye-Handの方程式
■なきごと
なきごと 撮影=日吉“JP”純平
イベント前半を締めるのは、なきごと。「念願の『リバサミ』! 短い時間だけど楽しんで。ちゃんと受け取って帰ってね」と、「私は私なりの言葉でしか愛してると伝えることができない」へ。軽快なリズムに絡む岡田安未(Gt.Cho)のメロは感情の起伏は激しくはないのだけれど、癖になるポップさに満ちている。気付いたときには虜、そんなサウンドメイクに胸が躍る。

なきごと

硬派なギターサウンドに攻め込んだリズムワーク、そこにクスっとなる歌詞が乗っかる「知らない惑星」。水上えみり(Vo.Gt)のクリアでキュートな歌声は良い意味でギャップがあって、知らないうちにハマりこんでしまう中毒性がたまらなくいい。次曲「ユーモラル討論会」では岡田のギターは歪みまくっているのに爽快感があって、ストイックなバンドサウンドも相まって、胸がスカっと晴れていく。そして、大阪が大好きだという水上からのラブソングをと「憧れとレモンサワー」へ。高まったテンションから当日に急遽セットリストを変更したらしいが、この楽曲がオーディエンスにガチっとハマり、互いに呼応しあうように会場の熱量が高まっていく。
なきごと
そのまま「メトロポリタン」では、ふわりとした水上の声、岡田の跳ね上がるメロは日差しが落ち着いた春の午後にしっくりとくる。「最後に伝えたい曲を」と、最終曲は「深夜2時とハイボール」。流麗なギターサウンドの中に抒情的な言葉が描かれ、気付けばスルスルと心のなかに染みていく。全6曲、なきごとが描いた鮮明な音の記憶はしばらく余韻が続きそうだ。
なきごと
なきごと
なきごと
■リアクションザブッタ
リアクション ザ ブッタ 撮影=ハヤシマコ
『リバサミ』もいよいよ折り返し地点に。リハの段階から声出し解禁の喜びをかみ締め、オーディエンスとあうんの呼吸でライブを作り上げていたリアクション ザ ブッタは、1曲目の「ドラマのあとで」から切ないポップソングを会場の隅々にまでじっくり染み渡らせていく。それに呼応するかのように自然発生したクラップに支えられながら、「オンステージ」でも躍動感たっぷりに魅せ、佐々木直人(Vo.Ba)がコール&レスポンスを巧みにナビゲート。そのまま「大阪、あなたの声を聴かせてください!」(佐々木、以下同)とシンガロングにいざなった「ヤミクモ」で、序盤から一気に駆け抜ける!
リアクション ザ ブッタ
「その声が聞きたくて今日、俺たちはステージに立たせていただいています。3回目、5年ぶりにリバサミに帰ってきました! 最高の青空なんで新曲をかっ飛ばしていこうと思います。苦しいときも、悔しいときも、俺たちとあなたで手を取って進んでいこう。そういう曲です!」
リアクション ザ ブッタ
流麗なギターが導いた新曲「Voyager」では、変幻自在のドラミングと共にドラマチックな旋律をかき鳴らし、「さぁ野音、踊る準備はいいですか?」と強烈なダンスナンバー「Loopy」をドロップ! 性急なギターリフと高速スラップで高揚感マシマシの中、トドメの「リード」まで全6曲。久々のリバサミをとことん楽しみ、楽しませたリアクション ザ ブッタだった。
リアクション ザ ブッタ
リアクション ザ ブッタ
リアクション ザ ブッタ
■yutori
yutori 撮影=日吉“JP”純平
舞台中央にメンバーが集まり気合い一発、初っぱなの「君と癖」から「もっと手上がるでしょ、足んないよ!」(Vo.Gt・佐藤古都子、以下同)と宣戦布告。広大な野音をブチ抜く歌声を響かせ、いきなり見る者を圧倒したのはyutoriだ。豊田太一(Ba)がライブでの声出し解禁を告げ、それに応える大歓声に「100点!」と、さっきとはツンデレの佐藤(笑)。「センチメンタル」でも切なる思いをエモーショナルなパフォーマンスに昇華し、「音信不通」のメランコリーと疾走感が、突き上がる拳の花を目の前に次々と咲かせていく。
yutori
「みんな寒くないですか、大丈夫ですか? 自分の体を第一に考えて楽しんでいってください。それだけは私たちとの約束です」と時折、客席を気遣いながら、中盤戦も泣きのギターが炸裂する「モラトリアム」、繰り出す四つ打ちビートに揺れずにはいられない「煩イ」、心の叫びを音にしたような「ワンルーム」と、アッパーチューン連発で畳み掛ける怒濤の展開!
yutori
yutori
「野外はめっちゃ楽しいです。今日は最高の時間をありがとうございました!」と放ったラストの「煙より」まで、まだまだ未完成ながら問答無用のポテンシャルとすごみすら感じさせたyutori。リバサミの歴史にまた一組、未来が楽しみな超新星が名を刻んだ。
yutori
yutori
■リュックと添い寝ごはん
リュックと添い寝ごはん 撮影=ハヤシマコ
オープニングの「青春日記」から、エネルギッシュなバンドサウンドを聴かせたリュックと添い寝ごはんは、続く「ノーマル」でもギター、ベース、ドラムがあればそれでOKなグッドメロディを、心底気持ちよさそうに奏でていく。見渡す限り総立ちの絶景を早々に生み出したのもうなずける、言葉にできないブレイクの予感を秘めたバンドのたたずまいには期待しかない。
リュックと添い寝ごはん
「いや~最高だね! 見てよ空、ちょっと晴れ過ぎでしょ!」(Vo.Gt・松本ユウ、以下同)と松本が人懐っこく切り出せば、メンバーが思い思いにわちゃわちゃトークに参加する光景も何ともほほ笑ましい。「ここから熱く盛り上げていこうじゃないの! この時間帯に僕らが演奏できて本当に幸せです。このロケーションにピッタリの曲を持ってきたので聴いてください」と披露した「home」は、夕暮れどきにうってつけのアットホームな一曲。リラクシンなムードの中、どっぷり聴き入らせたかと思えば一転、「もうね、自由に踊っちゃって!」と「グッバイトレイン」へ。軽快なリズムがトキメキを引き連れて、ハッピー極まりない空気に包まれていく。そしてダメ押しの「疾走」では、あっという間に場の熱量もピークに!
リュックと添い寝ごはん
リュックと添い寝ごはん
最後は、イントロから多幸感溢れる「Thank you for the Music」。音楽で人を幸福にする。そんな根源的なエナジーを目いっぱい味わわせてくれた、リュックと添い寝ごはんのライブ最高!
リュックと添い寝ごはん
リュックと添い寝ごはん
■moon drop
moon drop 撮影=日吉“JP”純平
6時間以上にわたり行われてきたリバサミも、いよいよ大トリを残すのみ。日の落ちた大阪城音楽堂に、満を持して登場したのはmoon dropだ。リハの音出しから本番さながらの盛り上がりで準備万端。「今日は頭から今まで全部見ました。最高な1日の最後の音楽は、最高じゃないといけないんで、全員でライブをやって帰ろう。やれるかい大阪!」と(Vo.Gt・浜口飛雄也、以下同)と始まった「至福の時を」から、このバンドこそフィナーレにふさわしいと確信させるライブアクトぶり。「センチメンタルガール」ではドライヴするベースラインが胸を高ぶらせ、「ラストラブレター」ではきらびやかなラブソングで魅了する。そんな楽曲の振り幅には、バンドシーンを軽々超えていく可能性を感じる。
moon drop
「自分たちの音楽を、真正面から歌いに来ました。大阪城音楽堂のこの時間、むちゃくちゃきれいですね……。今、思っている人、そばにいる人、いた人。大事な人のことを思い浮かべて」と捧げたのは、壮大なバラード「リタ」。優しく心をなでるギターと歌声に、誰もがグッと引き込まれていく。
moon drop
「大阪城音楽堂、初めて立たせてもらいました。トリを任せてくれて、期待してくれてありがとうございます! 朝からずっと見ていたら、友達と走って会場に来た人、一人で好きな音楽を求めてここまで来た人、お子さんと一緒に楽しそうな笑顔いっぱいで見てた人、いろんな人がいました。チケット代が1000円だから、どんなもんかなと思って来てくれた人も絶対にいると思う。でも、今日もらった30分で、好きにさせる自信があるから、最後までその目で見といて! どうしようもない孤独な夜も、どこにもいけない感情も、全部バンドに、ライブに救ってもらってきたから、今日は俺らがあなたのことを救う番なので」
moon drop
moon drop
言葉で、歌で、全力で思いを伝えた「ex.ガールフレンド」。つかんだチャンスに自らの音楽を120%鳴らし切るmoon dropの決死の姿には、大きな感動が去来する。「また会えると信じてます!」と届けた「シンデレラ」でも、みずみずしいポップセンスと叩き上げのライブバンドとしての歩みを証明してみせる。

moon drop

鳴りやまない拍手に呼び戻されたアンコールでは、「いつでもライブハウスにいるので、また遊びに来てください!」と全バンドの心境を代弁。渾身の「ボーイズアンドガールズ」で、ネクストブレイク揃いの2023年の『リバサミ』を見事に締めくくるmoon dropのステージだった。
moon drop
取材・文=黒田奈保子(Lay、Billyrrom、SPRINGMAN、Bye-Bye-Handの方程式、なきごと)/奥“ボウイ”昌史(リアクション ザ ブッタ、yutori、リュックと添い寝ごはん、moon drop)
撮影=日吉“JP”純平(Lay、SPRINGMAN、なきごと、yutori、moon drop)/ハヤシマコ(Billyrrom、Bye-Bye-Handの方程式、リアクション ザ ブッタ、リュックと添い寝ごはん)

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