今まで培ってきたもの全てを見せ、さ
らに次のステージへ 『ReoNa ONE-M
AN Concert 2023「ピルグリム」at日
本武道館~3.6 day 逃げて逢おうね~
』レポート

2023.03.06(Mon)『ReoNa ONE-MAN Concert 2023"ピルグリム" at 日本武道館 ~3.6day 逃げて逢おうね~』@日本武道館
絶望系アニソンシンガーReoNaが遂に初の日本武道館ワンマンライブを開催した。SPICEアニメ・ゲームジャンルとしては「ReoNa ピルグリム」と称して過去のインタビューやレポなどReoNaに関する記事をすべて特集としてまとめて来たが、今回の日本武道館ライブはアニメ・ゲームジャンル編集チーム三名がそれぞれの視点でレポートすることとなった。本記事の執筆は編集チームから一野が担当、一野なりの視点からレポートしていこうと思う。

ついにこの日が訪れた。2023年3月6日、ReoNaが日本武道館の舞台上からお歌を届ける日が。
2022年5月に開催することが公開された『ReoNa ONE-MAN Concert 2023"ピルグリム" at 日本武道館 ~3.6day 逃げて逢おうね~』。その告知から回り道と銘打ったツアーで全国をまわり、「シャル・ウィ・ダンス?」「Alive」と2枚のシングルをリリース、ライブ直後である3月8日リリースとなる2ndフルアルバム『HUMAN』に向けての制作も行ってきたReoNa。勢い止まることを知らない彼女の集大成を、日本武道館という大舞台から届けるその日がやってきたのだ。その晴れ舞台を生で見ようと、日本武道館はファンで溢れかえっていた。
長蛇の列を抜け、会場へと続く扉を開くとそこには強大なステージが鎮座、その向かって左横には小さなブースが設置されている。ブースに座るのはラジオ番組『802 Palette』のパーソナリティ・豊田穂乃花。ブースでは『802 Palette』の公開生放送が行われ、その番組が会場内で流れる。
これまで番組内コーナー「ReoNaのハチパレこえにっき」にてReoNaと歩みを共にしてきた本番組。ReoNaの愛する音楽にスポットをあてて一つ一つの曲を丁寧に紹介していく。これまでのReoNaと番組との信頼関係があってこそできる試み。その選曲にReoNaの登場前から会場内の気持ちは一つになった。
『802 Palette』がラストナンバーとしてDaniel Powter「Bad Day」をチョイスすると、曲終わりから一時の間を置いてステージ上が暗転。吐息が聞こえ、スクリーンには「Scar/let」の1フレーズ「さよならは はじまり」との文字が映し出される。それに続くように、次々に短いフレーズが映し出され、ラストには「逃げて逢おうね」の一言。そして、ステージ上にギターを持ったReoNaが照らし出される。待ちに待った開演の瞬間が訪れたのだ。
ギターを奏で、一曲目にスタートしたのは今回の公演のタイトルともなった「ピルグリム」。「Goodbye 旅に出ようか」と弾き語りをすると、そこにバンド隊のサウンドが合流、次第に力強さを増していくサウンドによって、ライブのスタートがはっきりと明示されたのだった。
「ピルグリム」を終え、間髪を入れずに次の曲が続く。スクリーンには「怪物の詩」の文字。南方研究所プロデュースのMVが映し出され、それに合わせてReoNaがお歌を発する。ステージ上では赤と白にライトが明滅、視覚効果がお歌の世界観をさらに盛り立てた。
「怪物の詩」が終わり、そこに訪れた一瞬の静寂、キーボードが鳴り、ドラムとともにバンド隊の演奏が静寂をかき消す。始まったのは「forget-me-not」だ。そのリズミカルなサウンドに客席は手拍子を送った。
3曲を終え、会場中が早くも盛大な拍手に包まれる。舞台上が明るく照らされると、ReoNaが改めて来場者に挨拶。「ようこそ日本武道館へ。逃げて逢えたね。」と。
MCも早々に、舞台上は水色とピンクの照明に照らされる。まだスタートダッシュは止まらない。「SWEET HURT」でキーボードの演奏に合わせ、ReoNaの優しくも力強い歌声が会場を包み込む。歌声に寄り添うようにバンド隊が合流し、一つの音楽を作り出す。4曲目にして会場は高いエモーショナルに包まれた。
「もう一度言ってもいいですか?ようこそ日本武道館へ。」
4曲を終えて改めてここでReoNaからの挨拶。それに来場者が大きな拍手を返す。たった4曲の間に、既にReoNaの世界に完全に心酔させられた観客たち。その拍手は彼女のこれまでのパフォーマンスに対する感謝の気持ちのようだった。
まだまだ止まらない本ライブ、続いてReoNaはこう語る。
「心や感情や魂、目に見えないこれらはどんな色をしているのでしょうか?」
もうお分かりだろう、その言葉に続いて繰り広げられたのは「ANIMA」。力強い演奏が、力強い歌声が、聴く人の血を熱くたぎらせる。それに呼応するかのように白く輝く照明、その眩しさは彼女自身の魂の光のようだった。
一転、今度は舞台上に夜が訪れる。暗くなった舞台上、スクリーンには月が浮かび、ReoNa頭上から月光が注ぐ。「生命線」。儚い歌声が月明かりの下で発されたかと思うと、サビ入りから一気に力強さを増し、舞台上は暗闇から一転して眩しい光に包まれる。その高低差が聴くものの心拍数をあげていく。
ここに最新シングル「Alive」が投下される。「生命線」で見せた、儚さとも、力強さとも違う、優しさが歌声の中に現れる。この短い時間に、実に多様な歌声を見せたReoNa、感服せざるをえなかった。
扉が開く音がする。現れる4人の男女。ゴシックな服装に身を包み、チェンバロ伴奏に合わせて、まるでマリオネットのようにダンスを披露。背後が赤く光ると、続いてのナンバー「ないない」の演奏が開始された。聴くものをゾワゾワとさせる不思議な旋律が流れ、ReoNaの歌声が乗る。その歌声はダークでありながらも、芯にしっかりと力強さを感じさせるものがあった。
ここでゲストが呼び込まれる。登場したのはヲタクダンサーチーム・REAL AKIBA BOYZ。そしてReoNaがこう告げる。「今だけは全てを忘れて踊りましょう、楽しみましょう。」と。
「シャル・ウィ・ダンス?」、そのタイトルの問いかけに応えるように、観客も曲に合わせて身を揺らす。REAL AKIBA BOYZに加えて、舞台上には次々にダンサーが登場、各々に舞を披露する。そこには中世の舞踏会と、現代ダンスが融合したような、この瞬間にしか見れない華やかさがあった。そして、最後にはReoNaを取り囲む形で決めポーズを見せ、このダンスパーティは締め括られた。
舞台を後にするダンサーたち、その一人がそっと、舞台の端に一足の靴をおいていく。スポットライトに照らされる靴、そしてその隣で同じくスポットライトに照らされるReoNa。次の曲がこう紹介される。
「絶望系の始まりをくれた曲」
続いたのは「トウシンダイ」だった。絶望を歌った曲、しかし、その歌声にはただ絶望だけが歌い込まれていた訳ではなかった。その歌声にあったもの、それは優しさだったと思う。誰かの絶望に寄り添う、そんな優しさが歌声から感じられたのだ。
そこに、雨が降っているかのようなキーボードの音色が鳴り響く。それはいつしか一つの楽曲「虹の彼方に」になっていく。
荒幡亮平と、ReoNa。二人だけが舞台上でスポットライトを浴びる。荒幡のキーボードに応えるようにReoNaが歌い、ReoNaの歌声に応えるように荒幡がキーボードを奏でる。長く活動を共にしてきた二人だから誕生し得たこのセッション。その音色は、物音ひとつで壊れてしまいそうなほどに繊細で、それゆえに尊いものだった。
音が止まる、荒幡がキーボードでリフを奏で、そこにReoNaの歌声が乗る。そして、また月が登る。
続いたのは「Lost」、繊細な二人のセッションに、力強さを与えるように、バンド隊のサウンドが合流していく。サウンドに呼応するように、ReoNaの歌声は儚いものから力強いものに切り替わっていく。
ここで一度バンドメンバーの紹介を経て、ReoNaはこう告げる。
「「Someday」、逃げて逢おうね」
一つ一つの言葉を噛み締めるように、はっきりと、じっくりと、言葉を発されていく彼女。そこに現れる吐息すらも音楽の一部となり、お歌を感慨深いものにしていく。そこにある全てが一つの音楽になっていることが強く感じられた。
暗転、そして再び照らされた舞台上にはギターを持ったReoNaの姿があった。
「人と出会い
人と別れ
それでも生きていく
どうしようもなく生きていく
「HUMAN」」
鳴り響くギターの音、スクリーンにはこれまでのReoNaの歩んできた足跡が映し出される。
「人は一人きりじゃ生まれてこれないのに 人は一人きりじゃ生きてはいけないのに」
映し出されたのはReoNaだけじゃない、共に歩んできた仲間の姿もそこにあった。強大なエモーショナルに、感涙で鼻をすする音も聞こえていた。
ここから本ライブもラストスパートに入る。
「今日という日を一緒に刻んでくれますか?」
そう問いかけるとReoNaは歌い始める、「命はあなたを忘れない」と。続いたのは「VITA」。スクリーンに映し出されたのは『ソードアート・オンライン』シリーズの名場面の数々。映像と音楽、そのマリアージュが観客の興奮を掻き立てる。その有り余る興奮に、思わず立ち上がり拍手を送る人々の姿も見られた。
ラストスパートはさらに加速する。続いて披露したのは「Till the End」。本楽曲の開始に合わせて、ステージ背後の壁が迫り上がり、そこにコーラス隊が姿を表す。その朦朦たる歌声をバックに、ReoNaが歌う。疾走感という言葉がこんなにもしっくりとくる音楽体験は初めてだった。奏でられる音の一つ一つが聴く者の身体を高速で通り抜けていくのが感じられた。
「今日ここに来てくれることを選んでくれて本当にありがとうございます」
残念ながら、ここで本公演の最後の一曲が訪れる。
「出会ってくれてありがとう」
そう言って彼女がラストナンバーに歌ったのは「Rea(s)oN」だった。
ステージ上にただ一人照らし出されるReoNa。手に持ったギターのサウンドと、歌声だけが響く。そこに一つ、また一つとサウンドが重なり、気づけばそこには荘厳なサウンドが生まれていた。
「ここに生きるReason それはあなたでした」
ReoNaの口から発せられたこの言葉が、その場にいる全ての人に届けたい言葉なのかもしれない。そう感じさせられた。こうして、一瞬のように感じられたReoNaによる日本武道館での公演は幕を閉じたのだった。
ReoNaにとって、過去最大の舞台で行われた今回のワンマンライブ。しかし、そこが彼女にとってのゴールでない、その場にいる人全てがそれを肌に感じただろう。今回の約2時間の中、ReoNaは歌の中で多彩な表情を見せた。さらなる表情を増やし、改めてこの舞台に帰ってくる、その日はきっとそんなに遠くない未来だろう。
取材・文:一野大悟

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