bonobos、野音ラスト・ライブのアー
カイブ同時視聴会を実施

bonobosが22年の活動期間を経て、3月5日(日)東京・日比谷野外大音楽堂でのワンマン公演『bonobos.jp』をもって解散した。

ラスト・ライブの映像は当日YouTubeでも生配信されていたが、今週末の3月11日(土)19:00より、YouTubeにてライブ映像のプレミア公開兼アーカイブ同時視聴会を行うことが決定した。視聴者同士でチャットしながらライブを振り返ることができる貴重な機会をぜひお見逃しなく。
なお、bonobosはクラウドファンディングを3月12日(日)まで受付中。ラスト・ライブの当日の生配信と、さらに後日音声と映像を編集したライブ全編のYouTube上での無料公開、かつライブ映像はメイキング映像も付属したパッケージ作品(Blu-ray)として制作することを目指したものであり、達成率はすでに350%を突破している。Blu-rayは今回のクラウドファンディングでのみ手に入るリターン限定品のため、お見逃しなく。

■ bonobos LAST LIVE 日比谷野音公演を無料配信、未来にアーカイブするプロジェクト(うぶごえ)(https://ubgoe.com/projects/297)

さらに、上記のクラウドファンディングの参加者全員に3月3日(金)に開催された大阪BIGCAT公演のライブ音源CDがリターン品として付属すること、そしてBlu-ray映像作品のクレジットには蔡忠浩が書き下ろし作曲を行った音源が採用されることなどが新たに発表された。

先述の大阪BIGCAT公演のライブ映像全編は後日YouTubeにて公開予定。日比谷野音でのライブ音源も単体でデジタル・リリースされるほか、これまでのライブ・スチールや舞台裏のオフショットなどを収めたフォト・ブックを完全受注製造で製作することも決定した。いずれも詳細は後日アナウンスされるとのこと。続報を楽しみに待とう。
また、日比谷野音でのラスト・ライブのオフィシャル・レポートも到着した。

最後にして最高到達点 bonobosが5人で鳴らした未知の音風景

3月5日、bonobosがラストライブ『bonobos.jp』を日比谷公園大音楽堂で開催した。22年におよぶ歴史の幕を閉じる日とあって、会場のチケットはソールドアウト(YouTubeで無料生配信も行われた)。この日の天気予報では夕方から高い降水確率が予想され、場内にはあらかじめレインコートやポンチョを着たオーディエンスも多く見られたが、結局最後まで雨が降らずに公演を終えることができたのは、ちょっとしたギフトだったように思う。

この日の本編では全16曲を演奏。そのうち13曲が、オリジナルメンバーである蔡忠浩と森本夏子に、小池龍平、田中佑司、梅本浩亘が加わって、5人編成の現体制となった2015年以降に発表された『23区』、『FOLK CITY FOLK .ep』、『.jp』からの楽曲だった。森本は『.jp』リリース時のインタビューで、「最後のライブが最高到達点であるように活動していきたい」と語っていたが、「22年の集大成」であると同時に、「この5人での集大成」という意味合いを強く感じた。
『.jp』収録の「Super Adieu」をSEにメンバーが登場すると、ライブは「KEDAMONO」からスタート。サポートメンバーであるサックスの小西遼とトランペットの三上貴大によるイントロから始まり、各楽器が複雑にリズムを刻みながらグルーヴを生み出していく様はまさに現在のbonobosならでは。また、『.jp』ではポストプロダクションが重用されたこともあり、オートチューンやサンプリングパッドも用いられ、生の楽器演奏との混ざり具合も秀逸だ。日本語・英語・韓国語を使い分けてフロウを生み出す「Not LOVE」、ファンキーな生演奏とトラップビートを行き来し、こちらも蔡がラップに近い独自のフロウを披露して、さらには小西が素晴らしいソロを奏でる「永久彗星短歌水」と、最新にして最高のbonobosを見せつけるかのような堂々たる序盤だった。

ラストライブということもあり、場内にはわずかな緊張も感じられたが、「ちょっぴり寒いですけど、風邪引かないように気をつけてください」という蔡のいつもの調子のMCに空気が和むと、「Gospel In Terminal」では〈come on, gospel〉に合わせて手拍子が起こり、森本のベースが引っ張るレゲエ調の「永遠式」では自然と体が揺れる。田中のシンセと小池の軽快なギターワークも印象的な「LEMONADE」に続いては、『.jp』の中でも最も長い、9分を越える大曲の「YES」。各楽器のフレーズがポリリズミックに絡み合いながらジワジワと反復することで熱を生み出すと、中盤ではシーケンスのフレーズと二管が並走し、〈YES YES YES〉と肯定のアジテーションを繰り返す曲構成はやはり見事という他ない。

すっかり日が沈み、ここで披露されたのは2004年にシングルでリリースされ、アルバム『Electlyric』に収録されている初期の名曲で、朝本浩文のプロデュースによる「あの言葉、あの光」。歌とピアノのみで始まり、途中からレゲエのリズムに変化すると、ボーカルやスネアにリアルタイムでダブ処理が加えられ、バンドの出自が感じられる。bonobosのデビュー当時はフィッシュマンズのフォロワーが多数登場した時期で、『GOLDEN DAYS』にはこだま和文やHAKASE-SUNが参加したりもしていたが、bonobosはその範疇にとどまることなく、そこから20年近い年月で独自の進化を遂げてきたことも、改めて感じさせた。

Talking Headsばりのポストパンク × アフロフューチャリズムによって宇宙的なグルーヴを生み、トランスにも近い熱狂を作り上げた「Hello Innocence」、蔡の紡ぐ美しいメロディーと、途中のリズムチェンジ以降の展開が圧倒的な高揚感を生む「三月のプリズム」はともに名演。「三月のプリズム」は『HYPER FOLK』の収録曲だが、欧米のチェンバーポップとも呼応しながら壮大なサイケデリアを作り上げた『ULTRA』~『HYPER FOLK』での達成があったからこそ、そのネクストステージとしての現編成があるということも、バンドの歴史においては非常に重要だ。

さらに『.jp』の収録曲の中でも特にポストプロダクションの割合いが強い「おかえり矮星ちゃん」では梅本が生でブレイクビーツを叩き出し、中盤のダブ処理は長年の経験が生かされ、後半ではサックスとトランペットによるフリーキーなソロに蔡のノイズギターも加わって、混沌とした音の洪水を作り出した。そして、他の楽曲も含めて常に強い存在感を放ち、こういった楽曲でもシンセベースを使ったりはせず、5弦のスタインバーガーで低音を支える森本の存在こそがbonobosらしさであることも再確認させられた。
蔡はMCで「おしっこしたいから早く次の曲やりたい」「泣いたらしばきます」と感傷的なムードを作らせないが、ステージ上にメンバー5人だけになって次に演奏したのが「GOLD」とあれば、さすがにグッとくるのは抑えられない。これまで何度も口ずさんできた〈ありがとう さよなら 更に言うと愛してる〉というフレーズが、この日ほど胸に沁みる日はないだろう。その次に披露されたのが、5人編成の原点にして新たな代表曲となった「Cruisin’ Cruisin’」。ネオソウルへの接近が結果的に時代とも呼応し、下の世代にもbonobosの存在を知らしめたことはバンドにとって非常に大きな出来事だった。現編成で何度となく演奏されてきたであろうこの曲のグルーヴは盤石で、ギターを置いて揺れながら歌う蔡の伸びやかな歌声も合わせた、まさに最高純度のbonobosがこの一曲に凝縮されている。

大量のスモークがレインボーカラーに照らされた「In rainbow, I’m a rainbow,too」に続いては、この後のMCで蔡が「それまで思う通りにならないことが多かったけど、この曲を今のメンバーで合わせて、やっと欲しかったものが目の前にある気がした」と語った「THANK YOU FOR THE MUSIC(Nui!)」。オリジナルのアレンジを基にした「ドンドンパン!」のリズムで手を広げる昔からのファンがいれば、自由に体を揺らす人もいるし、ジッと聴き入る人もいる。そんないろんな人たちが混ざり合いながら、それでも同じバンドの音楽を共有しているこの光景は、「ただそこにあること」を肯定するbonobosらしいものであったように思う。ラストは華やかなコーラスが彩る「うつくしいひとたち」が演奏され、アッパーなテンションで本編が締め括られた。

アンコールはカントリー調の「春のもえがら」から始まり、「自分で言いますけど、最高の名曲を最後に聴いてください」という紹介から、「23区」を演奏。ともに歌詞に〈ど(う)もありがとう〉という言葉が含まれる2曲が並べられたのは、決して偶然ではない気がする。「23区」の最後では「一緒にどうぞ!」とラララで合唱をし、一人ずつメンバー紹介をして、「22年間ありがとうございました!」と告げると、5人は晴れやかな表情でステージを後にした。
鳴り止まない拍手に応えてまずは蔡を除くメンバー4人が登場。すると森本が「bonobosと出会ってくれてありがとうございました。好きでいてくれて、ずっとよき理解者でいてくれてありがとう。みんなのおかげで本当に幸せな22年間だったし、本当に幸せな終わり方ができて、感謝しています」と涙ながらに口にしたのに続いて、「今日で私はベースをやめて、音楽業界から離れるんですけど」との発表に悲鳴にも近い歓声が起きる中、「他のみんなはこれからも演奏をしていく人たちなので、応援よろしくお願いします」と伝え切り、温かな拍手が会場中から贈られた。

その後にステージに戻ってきた蔡は最初話をすることに躊躇しながらも、徐々に口を開き始めると、今のメンバーになったときにこれが最後の固定メンバーであることを決めて、『23区』、『FOLK CITY FOLK .ep』、『.jp』を作り、みんなで一緒に見たことのない音風景に行けたこと、やりたかったことは全部できて、悲しくはないことを丁寧に伝えていった。そして、「プロデュースをしてくれて、めちゃくちゃ勉強になった」という朝本浩文をはじめ、22年間の活動の中で出会った人たちに感謝を告げ、「僕はこういう人間で、面と向かって言う感じでもないので、こんな感じで許してください。ありがとうございました」と伝えると、再度会場は大きな拍手に包まれた。

メンバー一人ひとりにサムズアップをした蔡が「もう一曲聴いてください」と話して、最後に披露されたのは「あなたは太陽」。オレンジ色の照明に照らされた蔡の弾き語りから始まり、途中で4人の演奏とコーラスが加わって、レゲエへと変化する展開はまさにbonobosの真骨頂であり、物語の終わりと新たな始まりを告げる勇壮なファンファーレのように響く。〈あなたの未来に祝福を 圧倒的な祝福を〉という最後のメッセージを届け、眩い光に照らされた5人は最後にもう一度未知の音風景を作り上げて、22年の歴史に幕を閉じた。

Text by 金子厚武


■ bonobos オフィシャル・サイト(https://bonobos.jp/)
bonobosが22年の活動期間を経て、3月5日(日)東京・日比谷野外大音楽堂でのワンマン公演『bonobos.jp』をもって解散した。

ラスト・ライブの映像は当日YouTubeでも生配信されていたが、今週末の3月11日(土)19:00より、YouTubeにてライブ映像のプレミア公開兼アーカイブ同時視聴会を行うことが決定した。視聴者同士でチャットしながらライブを振り返ることができる貴重な機会をぜひお見逃しなく。
なお、bonobosはクラウドファンディングを3月12日(日)まで受付中。ラスト・ライブの当日の生配信と、さらに後日音声と映像を編集したライブ全編のYouTube上での無料公開、かつライブ映像はメイキング映像も付属したパッケージ作品(Blu-ray)として制作することを目指したものであり、達成率はすでに350%を突破している。Blu-rayは今回のクラウドファンディングでのみ手に入るリターン限定品のため、お見逃しなく。

■ bonobos LAST LIVE 日比谷野音公演を無料配信、未来にアーカイブするプロジェクト(うぶごえ)(https://ubgoe.com/projects/297)

さらに、上記のクラウドファンディングの参加者全員に3月3日(金)に開催された大阪BIGCAT公演のライブ音源CDがリターン品として付属すること、そしてBlu-ray映像作品のクレジットには蔡忠浩が書き下ろし作曲を行った音源が採用されることなどが新たに発表された。

先述の大阪BIGCAT公演のライブ映像全編は後日YouTubeにて公開予定。日比谷野音でのライブ音源も単体でデジタル・リリースされるほか、これまでのライブ・スチールや舞台裏のオフショットなどを収めたフォト・ブックを完全受注製造で製作することも決定した。いずれも詳細は後日アナウンスされるとのこと。続報を楽しみに待とう。
また、日比谷野音でのラスト・ライブのオフィシャル・レポートも到着した。

最後にして最高到達点 bonobosが5人で鳴らした未知の音風景

3月5日、bonobosがラストライブ『bonobos.jp』を日比谷公園大音楽堂で開催した。22年におよぶ歴史の幕を閉じる日とあって、会場のチケットはソールドアウト(YouTubeで無料生配信も行われた)。この日の天気予報では夕方から高い降水確率が予想され、場内にはあらかじめレインコートやポンチョを着たオーディエンスも多く見られたが、結局最後まで雨が降らずに公演を終えることができたのは、ちょっとしたギフトだったように思う。

この日の本編では全16曲を演奏。そのうち13曲が、オリジナルメンバーである蔡忠浩と森本夏子に、小池龍平、田中佑司、梅本浩亘が加わって、5人編成の現体制となった2015年以降に発表された『23区』、『FOLK CITY FOLK .ep』、『.jp』からの楽曲だった。森本は『.jp』リリース時のインタビューで、「最後のライブが最高到達点であるように活動していきたい」と語っていたが、「22年の集大成」であると同時に、「この5人での集大成」という意味合いを強く感じた。
『.jp』収録の「Super Adieu」をSEにメンバーが登場すると、ライブは「KEDAMONO」からスタート。サポートメンバーであるサックスの小西遼とトランペットの三上貴大によるイントロから始まり、各楽器が複雑にリズムを刻みながらグルーヴを生み出していく様はまさに現在のbonobosならでは。また、『.jp』ではポストプロダクションが重用されたこともあり、オートチューンやサンプリングパッドも用いられ、生の楽器演奏との混ざり具合も秀逸だ。日本語・英語・韓国語を使い分けてフロウを生み出す「Not LOVE」、ファンキーな生演奏とトラップビートを行き来し、こちらも蔡がラップに近い独自のフロウを披露して、さらには小西が素晴らしいソロを奏でる「永久彗星短歌水」と、最新にして最高のbonobosを見せつけるかのような堂々たる序盤だった。

ラストライブということもあり、場内にはわずかな緊張も感じられたが、「ちょっぴり寒いですけど、風邪引かないように気をつけてください」という蔡のいつもの調子のMCに空気が和むと、「Gospel In Terminal」では〈come on, gospel〉に合わせて手拍子が起こり、森本のベースが引っ張るレゲエ調の「永遠式」では自然と体が揺れる。田中のシンセと小池の軽快なギターワークも印象的な「LEMONADE」に続いては、『.jp』の中でも最も長い、9分を越える大曲の「YES」。各楽器のフレーズがポリリズミックに絡み合いながらジワジワと反復することで熱を生み出すと、中盤ではシーケンスのフレーズと二管が並走し、〈YES YES YES〉と肯定のアジテーションを繰り返す曲構成はやはり見事という他ない。

すっかり日が沈み、ここで披露されたのは2004年にシングルでリリースされ、アルバム『Electlyric』に収録されている初期の名曲で、朝本浩文のプロデュースによる「あの言葉、あの光」。歌とピアノのみで始まり、途中からレゲエのリズムに変化すると、ボーカルやスネアにリアルタイムでダブ処理が加えられ、バンドの出自が感じられる。bonobosのデビュー当時はフィッシュマンズのフォロワーが多数登場した時期で、『GOLDEN DAYS』にはこだま和文やHAKASE-SUNが参加したりもしていたが、bonobosはその範疇にとどまることなく、そこから20年近い年月で独自の進化を遂げてきたことも、改めて感じさせた。

Talking Headsばりのポストパンク × アフロフューチャリズムによって宇宙的なグルーヴを生み、トランスにも近い熱狂を作り上げた「Hello Innocence」、蔡の紡ぐ美しいメロディーと、途中のリズムチェンジ以降の展開が圧倒的な高揚感を生む「三月のプリズム」はともに名演。「三月のプリズム」は『HYPER FOLK』の収録曲だが、欧米のチェンバーポップとも呼応しながら壮大なサイケデリアを作り上げた『ULTRA』~『HYPER FOLK』での達成があったからこそ、そのネクストステージとしての現編成があるということも、バンドの歴史においては非常に重要だ。

さらに『.jp』の収録曲の中でも特にポストプロダクションの割合いが強い「おかえり矮星ちゃん」では梅本が生でブレイクビーツを叩き出し、中盤のダブ処理は長年の経験が生かされ、後半ではサックスとトランペットによるフリーキーなソロに蔡のノイズギターも加わって、混沌とした音の洪水を作り出した。そして、他の楽曲も含めて常に強い存在感を放ち、こういった楽曲でもシンセベースを使ったりはせず、5弦のスタインバーガーで低音を支える森本の存在こそがbonobosらしさであることも再確認させられた。
蔡はMCで「おしっこしたいから早く次の曲やりたい」「泣いたらしばきます」と感傷的なムードを作らせないが、ステージ上にメンバー5人だけになって次に演奏したのが「GOLD」とあれば、さすがにグッとくるのは抑えられない。これまで何度も口ずさんできた〈ありがとう さよなら 更に言うと愛してる〉というフレーズが、この日ほど胸に沁みる日はないだろう。その次に披露されたのが、5人編成の原点にして新たな代表曲となった「Cruisin’ Cruisin’」。ネオソウルへの接近が結果的に時代とも呼応し、下の世代にもbonobosの存在を知らしめたことはバンドにとって非常に大きな出来事だった。現編成で何度となく演奏されてきたであろうこの曲のグルーヴは盤石で、ギターを置いて揺れながら歌う蔡の伸びやかな歌声も合わせた、まさに最高純度のbonobosがこの一曲に凝縮されている。

大量のスモークがレインボーカラーに照らされた「In rainbow, I’m a rainbow,too」に続いては、この後のMCで蔡が「それまで思う通りにならないことが多かったけど、この曲を今のメンバーで合わせて、やっと欲しかったものが目の前にある気がした」と語った「THANK YOU FOR THE MUSIC(Nui!)」。オリジナルのアレンジを基にした「ドンドンパン!」のリズムで手を広げる昔からのファンがいれば、自由に体を揺らす人もいるし、ジッと聴き入る人もいる。そんないろんな人たちが混ざり合いながら、それでも同じバンドの音楽を共有しているこの光景は、「ただそこにあること」を肯定するbonobosらしいものであったように思う。ラストは華やかなコーラスが彩る「うつくしいひとたち」が演奏され、アッパーなテンションで本編が締め括られた。

アンコールはカントリー調の「春のもえがら」から始まり、「自分で言いますけど、最高の名曲を最後に聴いてください」という紹介から、「23区」を演奏。ともに歌詞に〈ど(う)もありがとう〉という言葉が含まれる2曲が並べられたのは、決して偶然ではない気がする。「23区」の最後では「一緒にどうぞ!」とラララで合唱をし、一人ずつメンバー紹介をして、「22年間ありがとうございました!」と告げると、5人は晴れやかな表情でステージを後にした。
鳴り止まない拍手に応えてまずは蔡を除くメンバー4人が登場。すると森本が「bonobosと出会ってくれてありがとうございました。好きでいてくれて、ずっとよき理解者でいてくれてありがとう。みんなのおかげで本当に幸せな22年間だったし、本当に幸せな終わり方ができて、感謝しています」と涙ながらに口にしたのに続いて、「今日で私はベースをやめて、音楽業界から離れるんですけど」との発表に悲鳴にも近い歓声が起きる中、「他のみんなはこれからも演奏をしていく人たちなので、応援よろしくお願いします」と伝え切り、温かな拍手が会場中から贈られた。

その後にステージに戻ってきた蔡は最初話をすることに躊躇しながらも、徐々に口を開き始めると、今のメンバーになったときにこれが最後の固定メンバーであることを決めて、『23区』、『FOLK CITY FOLK .ep』、『.jp』を作り、みんなで一緒に見たことのない音風景に行けたこと、やりたかったことは全部できて、悲しくはないことを丁寧に伝えていった。そして、「プロデュースをしてくれて、めちゃくちゃ勉強になった」という朝本浩文をはじめ、22年間の活動の中で出会った人たちに感謝を告げ、「僕はこういう人間で、面と向かって言う感じでもないので、こんな感じで許してください。ありがとうございました」と伝えると、再度会場は大きな拍手に包まれた。

メンバー一人ひとりにサムズアップをした蔡が「もう一曲聴いてください」と話して、最後に披露されたのは「あなたは太陽」。オレンジ色の照明に照らされた蔡の弾き語りから始まり、途中で4人の演奏とコーラスが加わって、レゲエへと変化する展開はまさにbonobosの真骨頂であり、物語の終わりと新たな始まりを告げる勇壮なファンファーレのように響く。〈あなたの未来に祝福を 圧倒的な祝福を〉という最後のメッセージを届け、眩い光に照らされた5人は最後にもう一度未知の音風景を作り上げて、22年の歴史に幕を閉じた。

Text by 金子厚武


■ bonobos オフィシャル・サイト(https://bonobos.jp/)

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