「日本で上演されるのはとても特別」
~海宝直人、廣瀬友祐、ウエンツ瑛士
、立石俊樹らが登壇したミュージカル
『太平洋序曲』開幕直前会見

2023年3月8日(水)~29日(水)に東京・日生劇場、4月8日(土)~16日(日)に大阪・梅田芸術劇場メインホールにてミュージカル『太平洋序曲』が上演される。ミュージカルの巨匠とよばれたスティーヴン・ソンドハイムが作詞・作曲し、江戸時代末期の黒船来航から開国、西洋化の向かう近代日本の夜明けを題材にした作品。1976年にブロードウェイで初演された本作を、梅田芸術劇場と英国メニエール・チョコレート・ファクトリー劇場が初の共同制作。日本と英国の感性を融合させたアプローチで新たに創り上げた。
初日公演を控えた3月7日(火)には開幕直前会見が行われ、海宝直人、廣瀬友祐、ウエンツ瑛士、立石俊樹らメインキャストと脚本を手掛けたジョン・ワイドマンが登壇し、作品の魅力などを語った。
ーー役作りで重視した点は?
海宝:香山弥左衛門は、日本が歩んできた動乱の時代を象徴している人物。個性豊かな登場人物のなかでも、普通の人間として描かれているということを演出のマシュー(・ホワイト)さんもお話しされていました。お客様が感情移入できるように作ってきました。
ウエンツ:ジョン万次郎の史実に基づいている部分と、狂言回しがこの話を作っている部分とのバランスが非常に難しかったです。稽古場で最後に通した時に演じたジョン万次郎は「今までと180度違う」と言われたくらい、迷っている状況でやっていました。
廣瀬:この物語において、お客様が感情移入しやすいポジションを任されています。Wキャストで演じることで、変化していく醍醐味もある。舞台上で対峙する役者との間に日々生まれるやりとりを、一番大切に演じていきたいです。
立石:作品においてのジョン万次郎の役割を掴むまで、ものすごく時間がかかりました。史実に基づきつつ謙虚なところ、エネルギッシュなところ、人懐っこさを前面に出せるよう心掛けています。
(左から)廣瀬友祐、海宝直人
ーー脚本のジョン・ワイドマンさんは本作を観劇するために来日されたとのこと。日本人キャストの印象を教えてください。
ワイドマン:すべてが一流で、とても素晴らしかった。稽古を見学した昨日は場当たりで、各キャストが調整しながらやっていた。それぞれのピースがひとつになった形を、この後のゲネプロで拝見するのがとても楽しみです。スティーヴンと私はこれまでに3本の作品を一緒に作っていて、それぞれの作品が世界中で上演されていますが、この作品が日本で上演されることはとても、本当にとても特別だと思っています。
ーーこの作品を書くために、日本についてどのように研究しましたか?
ワイドマン:ハーバード大学で東アジアの歴史について、特に日本についての歴史を勉強していたので、4年かけて学生としてこの題材に取り組みました。スティーヴンとハロルド・プリンスは日本に来てかなり時間を費やし、日本の舞台演劇をたくさん吸収してアメリカでの上演に生かしていった。そういった意味では、すごくいいチームで作ることができました。
ーー今回は2017年に上演されたバージョンを基に上演されるとのことですが、楽曲の変更は?
ワイドマン:2017年のバージョンは、スティーヴンと私、演出のジョン・ドイルとでじっくりと作品を見た上で、この作品にとって必要なものを抽出しエッセンシャルでないものを取り除きました。お客様がよりピュアにストーリーの核心へ触れられることを目指したからです。カットした「Chrysanthemum Tea」は、とても良い曲でたくさんの人に愛されている曲ですが、取り除かれたことにより、香山と万次郎との物語にフォーカスされるようになりました。
ーー開国を題材にした本作にちなんで、新しく始めたいことを教えてください。
立石:いつか調理師免許を取ってみたいです。料理がすごく好きで、稽古場にもお弁当を作って持って行っていました。
ウエンツ:僕は筋肉を開国させます。(狂言回し役の)コウジ・ヤマモト(山本耕史)に「細いな!」って耳にタコができるくらい言われていたんです。ずっと気にしていなかったんですが、いつのまにか憧れ始めている自分がいて(笑)。パーソナルトレーニングに申し込んだことを報告したら「それは違う。日々の積み重ねなんだよ、君は」と言われました。でも、やってみます(笑)。
立石:稽古場で干し芋を食べていましたが、それがいつか鶏むね肉とブロッコリーに代わるということですか?
ウエンツ:そうします(笑)。
海宝:ずっとやってみたいのは、スカイダイビング。そろそろ空を飛びたい(笑)。ジェットコースターはすごい苦手なんですけど、あれより高いほうがむしろ大丈夫かもしれないので挑戦してみたいです。
廣瀬:ずっと絵やデザインをやってきましたが、今回初めてオフィシャルグッズのデザインに携わりました。これからはデザイナーとしてのお仕事を開国していきたいのですが、(売れ行き次第では)すぐ鎖国するかもしれません。
ワイドマン:アメリカでは、俳優がセカンドジョブを持つことは良いこととされています。シェフもいいアイデアですね。スカイダイビングについては……アメリカでは作品に出演する際の契約では終演までできないと決まりがありますね(笑)。
海宝:わかりました。(この作品が)終わったら、やります(笑)。
ワイドマン:僕は今、新しい作品に2つ取り組んでいます。アメリカでは今、題材を決めてからミュージカルに仕上がるまで長くかかるようになってきているんです。(初演を手掛けた)ハロルド・プリンスがこの『太平洋序曲』を演出・プロデュースしたときは、企画から1年後には上演できていたのですが、今はそれよりも長く時間がかかるようになっています。
(左から)ウエンツ瑛士、立石俊樹
ーー本作の好きな楽曲を教えてください。
廣瀬:すべてが素晴らしく癖になる曲ばかりですが、冒頭の「The Advantages of Floating in the Middle of the Sea」。1853年の日本を説明する、この物語の世界に入り込む最初の曲なので特に好きです。
海宝:たくさんありますが「Four Black Dragons」。黒船来航を4匹の黒い竜に例え、市民たちの叫びが描かれているスペクタクルな楽曲です。
ウエンツ:「Poems」は、俳句が歌になっていることに衝撃を受けました。俳句を詠む音のつながりを楽曲にのせながら、どこか西洋らしさも感じる。もともと英語で書かれた歌詞を日本語に俳句として戻しているという面白い仕掛けもあります。
立石:香山と(妻の)たまてのデュエット「There Is No Other Way」。2人の気持ちを思い、稽古場では涙ぐんでしまいました。
ワイドマン:もしスティーヴンがこの場にいたら、彼の書いた曲を俳優の皆さんが理解し、こんなにも美しく歌う様子にとても感動していたと思います。彼がもしお気に入りをひとつ挙げるとしたら「Someone in a Tree」。彼の頭の中にあるパズルを解いていくような曲であり、頭脳的なことと心の問題を解き明かしていくような、歌い手たちのすべての役を描き切っている楽曲。僕も聞くのを楽しみにしています。僕自身は「Poems」ですね。2人の男たちが歌いながら旅をしていくことにより、ペアに行き着く様子を美しく描いている曲だと思います。

本公演は、狂言回し役を山本耕史・松下優也(Wキャスト)、香山弥左衛門役を海宝直人・廣瀬友祐(Wキャスト)、ジョン万次郎役をウエンツ瑛士・立石俊樹(Wキャスト)でおくる。
取材・文・撮影=潮田茗

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